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別冊「ブックレコメンド」地主恵亮・桑島智輝編(2020.6.25&7.3)

まだまだ続くよブックレコメンド数珠つなぎ。今回は過去の放送の中でファビュラスな爪痕を残したこの男、ライター・地主恵亮さん!

いま議事録読み直してみたら、改めて面白いわオレの原稿……いや地主さんの人間性。地主さん、リモートでつながってます?

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今回もトレードマークのオレンジづくめで登場。さて地主恵亮のブックレコメンド、はりきって行ってみましょう! 1冊目は?

いまニホンオオカミは絶滅していないんですけど、この本には昔の様子と現状が書いてあって。ただ、昔の文献を見ても「熊を獲った」という記述は出てくるけど「ニホンオオカミを獲った」という話はあまり出てこないんです。だからニホンオオカミが当時どんな扱いだったかナゾが多くて。少し前までニホンオオカミの剥製自体3体しか現存しないことになってましたからね。狼の肉片を入れた「狼酒」ってお酒があったり、秩父の三峯神社の狛犬は狼で狼信仰も盛んだったり、興味深いですよ

地主恵亮とニホンオオカミ……なぜにニホンオオカミ?

最後に捕獲されたニホンオオカミは奈良で獲られたんですけど、その剥製はイギリスのロンドン自然史博物館にあるんです。僕、ロンドンまで見に行ったけど展示してなくて。後でこの本読んだら「展示はしてない」って書いてあるんです。先に言ってよ! イギリスまで行って立ち尽くしましたよ!

地主さんらしいオチも付いたようで(笑)。そして2冊目がコチラ。なぜにアイヌ??

僕、東京農業大学で非常勤講師をしてるんですけど、網走にあるオホーツク分校に年に数回授業に行くんです。そしたらだんだんアイヌ語に興味が出てきて。たとえば「網走」は「アパシリ」で、「アパ=入口」「シリ=大地」だから「網走=大地の入口」が語源なんです。それで網走の位置を見ると網走川の河口にあって、目の前がオホーツク海。海から見てそこが大地の入口だったんでしょうね。あと村上春樹の『羊をめぐる冒険』に出てくる十二滝町っていう架空の町のモデルと言われるのが美深(ビフカ)町の仁宇布(ニウプ)。美深は「ピウカ=小石がたくさんある川」で「ニウプ=トドマツの森」。こうして地名の由来を調べるのが楽しくて調べてたんですけど、最近もっとラクな方法を発見して。グーグルで「網走 由来」で検索すると、すぐ出るんです! こんな辞書いらないんです!

またしてもキレイなオチが付いたようで(笑)。えー、地主さん、他の本についてもまだまだ語りたそうですが、時間なんでまた今度にしてもらっていいですか? 年イチくらいで会いたい地主さん、そのうちいつか!

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(2020.5.22 on-line)

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あー、地主さんのテンション、すごかったな~。打って変わってお次は写真家の桑島智輝さん。

桑島さん、奥さんが安達祐実で、長身イケメンで、水着美女に囲まれた売れっ子グラビアカメラマンというウハウハすぎるスペックとは裏腹のディープな内面が実にオンリーワンなお方。背景もオーロラ出てますね~~~~。

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桑島さんとはまずはコロナ禍の近況について語りはじめました。

人間って何だろうって、立ち止まって考える時間が増えましたね。これまでこんなに長く立ち止まったことはなくて。写真も変わったし、枚数も増えましたよ。前は妻の写真が多かったけど、今は部屋の風景や今朝食べたごはん、植物の写真が多いですね

仕事がストップして、自分の内面に向き合った中でまず手にした本がコチラ。そういうところに行きますか!

なんで荘子を買ったかというと、荘子の「胡蝶の夢」って話があって。これは荘子が自分が蝶になってる夢を見て、夢から覚めて、「自分が蝶になった夢を見ていたけど、ひょっとしたら蝶が自分になってる夢を見ているのかもしれない」と思う話で。つまり夢かウツツかわからないという内容。あと「朝三暮四」ってあるじゃないですか。猿に木の実をあげるとき、これまでは朝4個・夕方3個だったのを「朝3個・夕方4個にしよう」って言ったら怒りはじめて。朝4個・夕方3個に戻したら落ち着いたっていう。この2つの話が何を意味するかというと「すべては同じこと」ってことで。これがコロナ禍の僕のメンタリティにすごくはまったんです。「世の人はもともとひとつであるはずのものを可と不可に分け、可であるものを可とし、不可であるものを不可としている。だがそれはちょうど道路が人の通行によってできあがるように、世間の人々がそう言ってるからと言う理由で習慣的にそのやり方を認めているにすぎない」……こういうのを読むと、コロナによって仕事がないとか、こんなんじゃマズイっていうのはひとつの見方に囚われてるというか、現象だけ見てるような気がしたんです

わ、わかったような、わからないような……。さらに桑島さんが畳みかける2冊目。

で、その後に僕が行き着いたのが般若心経なんです(笑)。般若心経でもいろいろ本があって、その中でコレだ!と思ったのがみうらじゅんさんの『アウトドア般若心経』。これはみうらさんが般若心経の文字、270数文字を写真に収めるという内容で。看板等の文字を撮影して般若心経を作るんです。これが荘子とどうつながるかというと、般若心経の中に「色即是空」って言葉が出てくるんです。色はすなわち空である、つまり存在とか見た目は関係ない、と。やっぱり「あるはないし、ないはある」ってことを言ってるんです。荘子も般若心境も「ものに囚われてはいけない」「いろんなことは思い過ごしでしかない」って言ってて、「じゃあ、どうしたらいいの?」ってなるじゃないですか? 

まあ、そうですね……と言っていたら、突然桑島さんが着ていたシャツの袖をシャキーンと伸ばした。ん? なんか文字が書いてある?

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その最終的な結論が「その日の花を摘め」って言葉で! これは古代ギリシャの詩人・ホラティウスさんの言葉で、ラテン語でいうと「カルペ・ディエム」。『いまを生きる』って映画にも出てきた言葉なんです。つまり、今を一生懸命生きるしかない。先のことなど考えても仕方ないし、第二波第三波も来るって言ってるし、今できることをやるしかない……っていう当たり前のことを改めて思い知ったんです!!

『いまを生きる』、SEIZE THE DAYってやつですよ!

ちなみに桑島さんのこういう形而上トーク、奥さんは「へ~~~~」と聞いてくれるのだとか。仲良きことは美しき哉。今度はご夫婦で遊びに来てくださいね!

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(2020.5.29 on-line)


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