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別冊「ブックレコメンド」田中達也・エディオン蔦屋家電編(2020.6.12&19)

コロナ禍の「文化系クリエイター会議」は現在の状況を逆手にとって、これまでの会議相手に影響を受けた本を尋ねつつ近況をうかがう、リモートでの「ブックレコメンド」企画に突入。ホントーBOYSの名前の由来は「本と~」だったことを思い出しましたよ!

第1回のブックレコメンドは、ブンクリ最初のゲストでもあったミニチュア写真家・田中達也さん。10ヶ月ぶりの再会です。

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3冊選ぼうと思ったときに、単純に面白い本より語れる本がいいなと思って。僕はアート関係の仕事をしてるので、アート関係の本を選びました

田中さんの1冊目は、まずコミック。

僕、マンガが好きで1日1冊ペースで読むんですけど、『ブルーピリオド』は去年の秋に読みました。これは美大に進学する話で、美術のマンガって幼少期が暗かったり生い立ちが不幸な人が主人公になりがちだけど、本作の主人公は親もいい人で本人も勉強できるし友達もいる、いわゆるリア充で飢えてないんです。ただ、生きていく中で窮屈さを感じてて、そういう中で美大を目指す。実は僕も似た経験をしてて、高校時代は山岳部で絵の勉強なんてまったくしてないのに急に美大に行きたくなって、親から「美大に行ってどうするの? 画家になっても食べられないでしょ?」って反対されて。このマンガにも同じシーンが出てくるんです。結局僕はそこであきらめたけど、主人公はそれでも東京藝大を目指した。自分が行きたい道を突き進んでいたらどうなっていたのか……これを読むと考えてしまうんです

田中さんの「あったかもしれない未来」を映しているのが1冊目なら、2冊目はまさに田中さんの作風の原点にあるもの。

この本、なんでトマソンかというと、昔、巨人の野球選手でゲイリー・トマソンって人がいて、前評判のわりに三振ばかりで「扇風機」ってアダ名が付けられたんです。そこから「無用の長物」的なものをトマソンと呼ぶようになって。この本はそんな無用の長物を純粋な芸術に「見立ててる」んです。たとえば昔階段があった場所を隠すためにコンクリートを敷き詰めた場所を「窒息した死体」と見たりとか(笑)。無機物なものを生きてるように表現する、その見立て方が面白いと思って。僕にとっての見立ての裏側には、常にこのトマソンというワードがよぎってます

そうかー、田中さんの「見立てアート」の背景にはトマソンというバックボーンがあったんですね。意味の転換。視点の回転。そして3冊目は、仕事術の源にある超ロングセラー。

これは多くの人に読まれてますけど、この本の何がすごいかって、本が薄いんです。内容的には62ページくらいで終わり。でも62ページまで読むと考え方が変わります。よくアイデアの出し方って「降ってくるんですか?」みたいに言うじゃないですか。僕はいつも「そうじゃないです」って言うけど、それを的確に書いてくれてるのがこの本。「アイデアとは既存のものと既存のものの組み合わせにすぎない」「自分がこれまで経験したものの何かが組み合わさって出てくる」とか。あと「考えても出てこないときは一回忘れた方がいい。思考を完全に止めてると、シャワーを浴びてるときや寝る前に急にひらめいたりする」とか、そういうことを論理的に教えてくれるんです。これ絶対一回は読んだ方がいいですよ! 

「こんなにぶっちゃけて大丈夫?」って心配になるくらい、自身の原点を見せてくれた田中さん。確かにこの3冊を読めば田中達也がよくわかります。

本当に心に残る本って、自分と重ねられる本じゃないですか。エンターテイメント的に面白い本はたくさんあるけど、それは消化されちゃうというか。今日挙げた3冊を語ることで、自分を語っているようなところありますね

まだ奥が深いぜ、田中さん。今度はまたリアル会議でお会いしましょう!

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(2020.5.15 on-line)

さて、続いてご登場いただいたのは、広島駅前のカルチャー拠点「エディオン蔦屋家電」から吉田泰則さんと岡野哲也さんのお2人。

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エディオン蔦屋家電はホントーBOYS結成きっかけの場というか。ここでのトークイベントが最初だったんですよね。もう2年前か~。

そんなエディオン蔦屋家電のレコメンド。まずは、コチラ。

著者が森絵都さんと荒井良二さん。児童書で「ねずみの ねがいは ねこのくび」とか4・4・5のリズムに合わせて言葉遊びをやってます。声に出して読むと楽しくなるし、状況もシュールで面白いんです(岡野)

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こういうことですね。もう1冊はタイトルが長いぞ、『シングルファーザーの年下彼氏の子ども2人と格闘しまくって考えた「家族とは何なのか問題」のこと』(河出書房新書)。

内容もタイトルのまんまです(笑)。しかもこれを書いたのは書店員さんで、年下彼氏も書店の方。自分の店で自分の書いた本を売るのも自給してる感じがするというか。この本を書いたきっかけも「自分の本屋で血のつながってない子供との関係について書かれた本を探したけどなくて、だったら自分で書こうと思った」という理由からなんです(吉田)

この本は帯も強力ですわ。これは読みたくなる帯だわ。

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amazonのリンク張っちゃってますけど、僕は本はリアル書店で買いますよ! 書店原理主義者ですよ! 広島のブックシーンを盛り上げるためにも、引き続き一緒に頑張っていきましょう~。

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(2020.5.18 on-line)

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