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包帯だらけの見知らぬ人(日常の中の不思議ファイル 9)

これは、包帯だらけで亡くなった人が誰だったのか、今も分からないという話です。

私の知り合いが高校生の時、理科の授業中に、先生から聞かされた話だそうです。

———

先生は学生時代、アパートに住んでいました。

ある日アパートに友人達が集まって呑んでいた夜、雨の中、電報が配達されました。

そこには「キトク、スグコイ」

とだけあって、病院の名前が書いてありました。

誰だか分からないものの、親類の誰かだろうと、先生は友人達に後を託して、とりあえず出かけることにしました。

東北本線で宇都宮駅に着くと、

乗り換えでプラットホームにいたのは蒸気機関車でした。

「今も走っているんだ?」と意外に思いながら乗り込むと、内部はほとんど木製で、達磨ストーブのようなものがあり、非常に珍しい体験ができたと思いました。

黒磯駅で降りると、黒塗りの古めかしいタクシーに揺られて病院に着きました。

たくさんの怪我人がベッドに並んでいて、

慌ただしく往き来する看護師たちの白い制服は昔風で、先生はすぐにベッドに案内されました。

そこには包帯でぐるぐる巻きになって、誰だか分からない人が横たわっていました。

先生は仕方なく、

「俺だよ、俺だよ。」

と声をかけましたが返事はありません。

しばらく付いていましたが、その人は亡くなってしまいました。

先生は後のことを病院にお願いして、また来たルートを辿って東京に戻って来ました。

そして親戚中に尋ねましたが、そんな人に心当たりがある人はいません。

不思議に思った先生は、病院のパンフレットを取り寄せてみました。

そしてそれを見て「あっ!」と驚きました。

先生が行った病院は古い木造の建物で、看護師達は床まである白いスカートの看護服を着ていたのですが、


そのパンフレットに写っている病院は、鉄筋コンクリートで、看護師達の制服もごく普通の制服だったそうです。

その後、調べてみれば東北本線に蒸気機関車なと走っていず、黒磯駅から乗ったタクシーも、黒塗りの古めかしい大型タクシーではなく、東京と同じような車種のタクシーしかないことが分かりました。

先生はいったいどこに行ってきたのでしょうか。


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