百衣観音とりんご(日常の不思議ファイル 30)
ヒロさんと長老の二瓶さんのご自宅に初めてお邪魔した時
奥さんがりんごを剥いて持ってきてくれました。
ニコニコした丸顔のそのお婆さんがそばに立った時、
白い布を被った観音様が同時に見えました。
慌てて目を凝らすと、どこにでもいる、小さなお婆さんです。
そこを出てからヒロさんに言うと、
「やっぱり!!!!」
「僕も初めてあった時、そう見えたんだよ!」
(ヒロさんは地元の人ではないので自分のことを僕と言います。)
「僕の畑は二瓶さんの家から真直ぐ南にあるんだが、
暑い夏の日に畑仕事をしていたら、
二瓶さんの奥さんが
『暑いからうちの縁側で少し休んだら?』
と言いに来てくれたんだけど、
初めてみた時、白衣観音に見えて、僕は腰を抜かしそうになったんだよ!」
特別なところは何もなさそうな、普通のお婆さん。
きっととても若い頃、お嫁に来たのでしょう、
孫嫁さんの子供が庭で遊んでいるくらいの年齢です。
ずっと夫に仕え、舅姑に仕え、野良仕事をして
自分のするべきことをずっとやり続けてきたのに違いありません。
にこにこした皺の向こうには様々な苦労もあったことでしょう。
大げさですが、
世界中にいるだろう、平凡でも自分の分を守り果たしている人達こそ
尊い人たちなんだなーと心の底から感心したのでした。
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