2021年 観劇まとめ

2021年は映像も含めると49本観劇した。私史上1番多い本数、そして色々なジャンルの観劇が出来たかもしれない!
本当に良いと思った10本のランキング+感想と、トップ10には入らなかった舞台のプチ感想で今年の観劇ライフを振り返っていきます!

1位 パンドラの鐘

4月18日観劇 
東京芸術劇場シアターイースト

正直、1~5位はほぼ同率で素晴らしかったんだけど野田秀樹さんの脚本を
別の演出家(熊林弘高さん)が作るのにこんなに面白いの!?と衝撃を受けたのでこれが1位!
野田さんの脚本は基本的に脚本を執筆するときに演出案も完成されてるような、“戯曲”というよりも“台本”であるタイプだと思っていて。あと野田さんの台詞は聞いているだけで野田さんの言葉だと分かる強さがあるから、他の演出家が演出しても野田秀樹の顔が浮かんでしまうという、なんとも演出家泣かせな脚本な印象がある中、ここまで熊林さんの色を出せたことは本当にすごいと思う。
鐘が落ちてくるシーンを舞台美術を使わず、ト書きをただ読み上げるだけ(野田秀樹ボイス)にすることで、観客の想像力を使った演出にしたり、
過去と未来に登場する二人の男女を同じ役者が演じることで、より過去と未来の出来事の境目が曖昧になりリンクしやすくなったりするのが本当にすごかった。(フェイクスピアよりもBEEよりもパンドラの鐘が刺さりました、、、。)

2位 スリルミー

4月8日観劇(成河私、福士彼ペア)
東京芸術劇場シアターウエスト

1位と2位の演目が同時期に隣の劇場で上演されていたの冷静に考えてやばいね?????スリルミーが1位じゃ無いのはシンプルに「新作じゃないから」。2021年に上演はされたけど、2021年に生み出された作品では無いと思うので2位です。
100分間、小さな空間に満たされるピアノと私と彼の歌声。上演中息を止めてた。終演した時、ほっとすると同時に、この最高な演目が終わってしまう悲しさで涙が出てきた。全ての演劇に携わる人に見てもらいたい作品。作品に空間全体が支配される感覚がすごかった。
(あとめちゃくちゃ刺さるストーリーでした、、。「私」役のクソデカ感情に悲鳴を上げそうになった。全てのオタクに見てもらいたい。オタク殺しな作品。オタクに見てもらって、自担が演じるなら私と彼、どっち役がいいか妄想して欲しい)

3位 滅多滅多 柿食う客

5月21日観劇
本多劇場

なんで私は今まで柿を観てこなかったんだろう、、、。
ってくらい大好きな演劇だった。演出がつかこうへいっぽい。
マシンガンのように浴びせられる台詞の応酬と、シンプルな舞台セットだからこそ映える鮮やかな照明はつか作品を思い出した。75分間があっという間に過ぎていったのに、体感した物語の大きさは3時間分というなんとも疲れる観劇だった。
(加藤ひろたかさん演じる猿柴先生が性癖だった。性癖をさらしていくスタンス)

4位 獣道一直線!!! ねずみの三銃士

2020年上演(映像鑑賞)
PARCO劇場

トップ3に入るくらい良かったけど、正確には2020年の演目なので泣く泣く4位、、。これを生で見なかった自分にむかつくくらい良かった。
クドカンとねずみのお三方の「芝居が好きだ!」という叫びが聞こえてきた。クドカンの別の時や場所で進んでいる出来事が同時進行してリンクする構成が好きだ!!!
ラスト、観客と本当の意味で“共犯関係”を結ぶのがとても良かった。この関係性を説明して理解出来るのはきっと最初から最後までこの演目を見届けた人だけ。だからこそ成立する共犯関係だった。
目の前で起きている出来事を喜劇として捉えて笑いながら観ていたら、気がついたら笑えない事になっていてそれを観て笑っていた自分に気がついたときゾッとするシステム好き。怖い演劇っていいなあ。

5位 ふくすけ 日本総合悲劇協会

1998年上演(映像)
世田谷パブリックシアター

こんな昔の作品をトップ10にしていいのか、、?という罪悪感が湧いたんだけど、映像で観たのに号泣しちゃう強さに負けました!
松尾スズキさんの言葉選びが好き。構成のクドカン。言葉選びの松尾スズキだな。
野田さんも松尾さんも言葉が強いけど、野田さんは言葉遊びが面白い。松尾スズキは言葉選びが面白い。この違い、両方観たことある人にしか伝わらないだろうなというもどかしさ、、。昔の作品を観ることによって、最近の松尾さんって丸くなったんだなと実感した。2000年周辺の松尾さんは人間が大嫌いで大好きで、人間の悪意を信じていたのかな。松尾さんの言葉は毎回具体的なのに抽象的で観ている側が松尾さんの意図を全部受け止め切れているのか不安になる。その不安定さが良い。

「死ななければならないことも無い。その代わり生きなければならないこともない。すべてフィフティー・フィフティーだって、だから私はがっかりしないよ」

6位 ザ空気ver3~そして彼は去った… 二兎社

1月27日観劇
東京芸術劇場シアターイースト

今年は芸劇が豊作だったな~。B作さんのお芝居がとても良かった。正義の声をあげることは簡単だけど、それを行動に移すのは難しい。そんな空しさを感じた。観劇後の感情はただひたすらに虚無。
一歩間違えれば説教になってしまいそうなこの内容を、コメディーを入れ込むことによりエンタメとして成立させていたところがすごいと思った。

7位 月影花之丞大逆転 劇団☆新感線

3月3日観劇
ブリリアホール

ブリリアへのお気持ち表明は先人がしつくしているのでしません()
いち劇団のファンとして、とても幸せになった作品だった。
1年前の本公演が中止・全公演延期になってしまった中で、劇団が観客の私たちに「ただいま!」と言ってくれているように感じた。まあ、この演目も緊急事態宣言で公演中止になったんだけどね!悲しい!
まさか髑髏城と五右衛門ロックのセルフパロディしてくれるとは思わないじゃん。大好きだった。
今年ひとつ気がついたことがあって、私は舞台上の絵面がぱっと変わる瞬間が好き。舞台上の絵というのは見た目という意味でも良いし人の気持ちという意味でも良い。そしてその切り替わるスイッチは照明でも、音楽でも、舞台美術でも人の台詞でも良い。新感線はその絵面の切り替えが上手。

8位 桜の森の満開の下 CHAiroiPLIN

3月19日観劇
あうるすぽっと

今まで観たプリンの作品の中で1番好きだった!坂口安吾の原作が好きなのもある。野田秀樹が翻案した「贋作・桜の森の満開の下」とついつい重ねて観てしまったのは反省。エリザベスマリーさんの女役は冷たい美しさがあってハマり役だった。
男が女を桜の森の満開の下で刺すシーンは、ただ男が立ち尽くすだけで悲しみが感じられて良かった。野田版では、耳男が号泣しながら夜長姫に桜をかけてあげるのが印象的だったからその落差に驚いた。野田版が動的な悲しみの表現なら、プリン版は静の悲しみの表現だった。
あと、文字の雨が好きだった。情報量に殴られるの大好き、、、。

9位 森フォレ

7月12日
世田谷パブリックシアター

ここまで、純粋な私の好き!という感情のランキングになっていたけど、
森フォレは完成度の高さだな。このシリーズ、観客側のモチベが高くないと演目を理解しにくい節があるけど逆に観客が戦意さえあれば4時間脳みそフル回転しながら壮大な物語が楽しめるのでまさに貴族の娯楽だと思う。開演前と休憩中に相関図を読みまくったけど一部理解出来なかった。戯曲を買ったのに読まずに観に行った大馬鹿野郎は私です。
成河にキュンキュンして帰ってきた。なんだよ!!なんで芸劇で狂気の男を演じた数ヶ月後にこんな純粋な男を演じられるんだよ!!!!!

10位 パ・ラパパンパン 大人計画

11月3日観劇
シアターコクーン

幸福値高めな作品だった。丸くなってきた松尾さんが、劇場が好きだと去年意思表明した松尾さんが、藤本さんの脚本を演出したらそうなるよね!!という感じ。
松尾さんの言葉選び好き人間としては物足りなさがあったけど、ウェルメイドなコメディミステリーとしては面白かったと思う。松たか子さんの生歌にしびれたし、皆川猿時タイムがめちゃくちゃ面白かった。アドリブしているように見せて、全くアドリブじゃないのすごすぎる。
カーテンコールで役者の生演奏と生歌が披露されるのが一足早いクリスマスプレゼントって感じで良かった。

総括

何本観劇しても答えの出ない問いってあると思う。
私にとってのその問いは「どんな演劇が好きなの?」
数年前の私なら迷い無く「つかこうへい!新感線!」って答えてた。でも、年を取っていろいろな演劇を観るにつれてその問いの答えに自身が持てなくなった。
もちろん、ケレン味も早口も大好きだけど、松尾さんのようなグロテスクさも野田さんのような言葉遊びも好きだし、情報量の多さも、観客に寄り添う作品も、逆に観客を突き放して遠くまで行ってしまう作品も好きだった。
そんな中で、ひとつ明確にこんな演出が好き!が見つかった。
新感線のところで書いたけど「目の前の絵がいきなり変わる瞬間」。
ドキッとして心がゾワゾワする。自分の目に見えているものがいきなり変わればビックリする。そのサプライズはワクワクする。逆に絵面が切り替わらない、すべてが観客の予想通りに進んでいく演劇は退屈だった。
作品にもっともっと裏切られたい。

おまけ

2021年に観たそのほか40本の作品を観た順にプチ感想でお送りするやつ!
少し批判的な感想もあるのでそれが苦手な人は非推奨です。

岡村俊一演出「熱海殺人事件」
つかさんの舞台が歌舞伎のような型になりかけていることにモヤモヤした。
木ノ下歌舞伎「義経千本桜」
歴史が人の死で成り立っていることを衣装で表現したのが面白かった。
ねずみの三銃士「万獣こわい」
タイトル通り怖かった。役者として絶対出演したくない。きっと病む。作品自体はめちゃくちゃ面白かった。
蓬莱竜太演出「渦が森団地の眠れない子たち」(映像)
小学生の時、藤原竜也と鈴木亮平の役みたいなやつにいじめられてた人間なのでnot for meでした!
劇団PUPU JUCE「フェイクニュース」
エンタメと社会風刺を中途半端に混ぜるな危険、事故起きる
9project「売春捜査官」
今年観たつか作品の中で1番良かった!
TEAM風雷坊「Re:act artifact」
人死ぬのが早すぎて全然感情移入出来なくて置いてけぼりになった。
劇団ウィステリウム「おい、なおよし聞いてるか」
アングラ演劇“風”に見えた。観客に理解したいと思わせて欲しい。狂い方がワンパターン。
株式会社TATE「里見八犬伝」
効果音と小ネタの使い方がnot foe me(魔法の言葉すぎ)だった!
イキウメ「外の道」
怖かった演劇ランキングなら間違いなくベスト3入る。言葉通り、闇が恐ろしくなった。
野田地図「フェイクスピア」
普通に面白いし発想が天才。少し中だるみ感が気になった。
Air studio「ガラスの靴のつくりかた」
脚本が児童書のようで見やすい作品だった。
板垣恭一演出「いつか one fine day」
ヒロインの皆本さんに恋した。本当に可愛かった。見た目も歌も演技も。
Muse of Soul「覗きたい女は覗かれたい男に覗かれる」
開演時間1時間間違えました!本当にごめんなさい!!!
ちょっとはいしゃく「売春捜査官」
つか作品で新しいことをやろうとする姿勢が素晴らしいと思った。
ただ、私の耳はつかさんの言葉はつか芝居でしか入ってこないようになってしまっていることに気がついた。
「あきる野~AKIRUNO~」
ワクチン副反応で死にそうになりながら山の中で観ました、、。
上演時間アナウンスから20分伸びたんだけどもし終電逃してたら主催はタクシー代を払ってくれましたか??(終電逃しかけた)
「ZOOーZ」
近年の、演劇オープニングアクト多様しがち問題が浮き彫りになった。オープニングアクトやればいいってもんじゃないよね。
多摩美インタークラス「夕鶴」
鶴の恩返しってあんなにメンヘラ女の素質あるんだね!
虹色くれよん「死刑島」
死刑になる基準厳しすぎてそこばかり気になった。情状酌量とか無い世界線なの、、?
劇団虚幻癖「滅びしイデアの墓標」
衣装と美術が良かった。登場人物の狂い方が全員一緒で単調なのが気になった。
劇団チョコレートケーキ「一九一一年」
イケオジ様方のギャップに手叩いて喜んでた。
演劇ユニットスターチス「表に出ろいっ!」
野田秀樹の言葉の強さの呪縛という壁を感じた。
=9「ヒューゴという男」
今年観た知り合いの舞台の中で圧倒的に面白かった!サスペンスからファンタジー劇へと移行していく流れが綺麗でオチも良かった。
劇団東少「眠りの森の美女」
観客ターゲットが幼児なのに合わせて、解像度が高いのが良い。
文学座「熱海殺人事件」
つかさんの本質は虚仮威しなんじゃないかと思った(褒めてる)
CAT-A-TAC「王様の耳はなぜロバの耳?」
ロバの耳と多様性を掛け合わせたのが面白かった。
劇団鹿殺し「キルミーアゲイン」
面白いんだけど、全てが予想通りで退屈だった。
not for me
こえのしずく「せかいのはじめ/時空採集箱」
配信演劇用に構築し直しているのが良いと思った。これを同世代が書いたと思うと恐ろしく感じるくらい脚本が良かった。
Kバレエ「シンデレラ」
衣装がすき!!布フェチ!!!
CHAiroiPLIN「FESTE」
あまり十二夜感は無かった。道化を表と裏で二人作る意味も分からなかった。
劇団☆新感線「狐晴明九尾狩」
吉岡里帆がお芝居上手すぎてびっくりした。ラストが生き地獄すぎてオタク大歓喜!
演人の夜「イイヒト、ワルイヒト」(映像)
観る人を選ぶ作品だと思う。とても小さい劇場なのにそれを感じさせない、空間使いが上手い。
演人の夜「僕達は出会った、霧烟る木々の中で」(映像)
森フォレと同じ、血の物語だった。金子さんの脚本は登場人物が多いのにそれが誰だかすぐ覚えられるのがすごいと思った。
あやめ十八番「百夜車」
面白かったんだけど、音楽劇とうたっていながら歌詞が聞き取れないのは致命傷では、、?
二兎社「鴎外の怪談」
どんな意味での怪談なのか私の咀嚼が足りず理解出来なかった。
REBORN「ナツヤスミ語辞典」
成井さん特有の闇の無い爽やかな雰囲気が出ていた。夏休みが始める前のあのワクワク感を疑似体験できた。
野田地図「THE BEE」
役者力が強かった。野田さんの作品全部これくらい短ければいいな、、。
北区AKTSTAGE「売春捜査官」
売春捜査官だけ今年三回観てて笑った。大山金太郎が喉潰してなければ完璧だった。

総括2

辛口感想多めでごめんなさい!!感想書く時は自分のことを棚に上げろって進研ゼミで習ったのでめちゃくちゃ自分のことは忘れてます!ブーメランとか言わないで!!

小劇場の役者はもっと色々インプットしたほうがいいと思う。
今年観た小劇場(主に知り合い経由で観劇した作品)の舞台はアニメみたいな作品が多かった。人は、インプットしたものの中からしかアウトプットできないから、アニメしか観てない人が作る作品はもうアニメなんだよ。
それなら家でテレビ観るか映画館行った方が良いって話になっちゃう。
2.5が流行っているのはアニメの良さと舞台の良さが融合しているからなんじゃないかな。それこそ刀ミュのすごいところは二部でレビュー制度を取り入れた事だと思う。
アニメのようなパキッとした演出は好きだけど、そこでアニメっぽいなと思われた時点で観客の心は離れていくと思う。
ちょこっと上の方で書いた狂い方のパターン云々に関しても、インプット量の問題な気がする。
だから!役者と演出家と脚本家は!知り合い出演以外の舞台(この際映画でも小説でも絵画でもなんでも良い)を観て!!!

あと、演劇は分からないことの方が尊いとされがち問題あるけど、そのさじ加減が大事。
分からないけど理解したいと思えれば観客は必死に理解しようとするし、理解できなくても心の中で咀嚼し続ける。咀嚼出来なくなっても心にモヤモヤが残る。きっとそのモヤモヤを忘れることは無い。
逆に分からないし理解したいと思わせてくれない、観客と向き合ってない自己満な作品はモヤモヤすることすらないし、モヤモヤしてもすぐ忘れちゃう。
観客が理解できない演劇自体は面白いけど、
観客が理解出来ない≠観客と向き合わない
ということを意識して作って欲しい。
私に、理解したいと思わせて。


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