非日常祭り
注射針を当てながら、通勤電車に揺られる。
液体の名前なんて考えない。
「再検査」という音の冷たさばかりが、時間をうねるように泳いでくる。
私を私と思うカメラが世界のすべてだということは、どこまでも理論。
「今日の新型コロナウイルスの死亡者数は……」と告げられる数だけ、世界が終わってるって、気づけって、同調しろって。
宇宙がつぶれていく様を体験していないと思うかい?
日常だったものがちょっとずつ浮足立って、新次元へふらつかせてる。
祖母の葬式の朝のような。
311の夜のような。
重力はもう役に立たないんだよ、歴史の頁をめくってしまったからね。
当たり前の駅を降りて、どこまで歩いて行けるのだろう。
自分を自分という器の中に隔離して。
洋服を選ぶように、死に方も選べたらいいのに。
注射針は、誰からも離れたりしないんだ。
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