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[本のおはなしvol.14 ] 「カエルのおでかけ」

例年よりも季節が2週間ほど前倒しになっているように感じる、今日この頃。
6月の梅雨時期に紹介しようと思っていた『カエルのおでかけ』ですが、この気候に合わせて、ちょっと前倒しにご紹介。
「本のおはなしvol.14」5月27日の当日も、しとしと雨模様。
カエルにとっての「よいお天気」にはじまりました。

この本も、都内の保育園で月に一度、ゲストティーチャーとして子ども達と一緒に過ごしている時間「心音(こころね)の時間」の中で、読み聞かせさせてもらっている本です。

6月はいつも「雨」をテーマにしています。その時間のはじまりに、「みんな雨ってどう思う?どんなことを思い浮かべる?」と聞いてみるのですが、そこで出てくるのは「外で遊べないから嫌いー」という言葉だったり、「濡れるのはちょっと、」という言葉だったり。否定的な意見が多い中で「雨が降るから植物が育つんだよね」という言葉も出てきたり。それぞれに雨に対するイメージを伝えてくれます。

雨を表すオノマトペを歌った曲とともに、雨足の強さを身体で表現したり、様々な雨の映像を見ながらその音を表現したりした後、クラスの最後に読むのがこの本。

私がこの本に惹かれるところは、その発想の面白さもさることながら、本全体に漂っているどこかおしゃれな感じ。主人公のカエルくんの住んでいるお部屋のインテリアや、お出かけする時に持っていくピクニックセットの中身(素敵なバスケットに、ワインやチーズ、そしてお花も入ってる!)
私が勝手にニューヨークだと思っている都会的な街並みや、街行く人もどこかおしゃれなのです。

カエルくんは、そこに違和感なく存在していて、雨の日を「良いお天気」としてとことん楽しむカエルくんが生き生きとリアルに感じられます。

「良いお天気」は必ずしも晴れではなくて、人それぞれの「良いお天気」がある。ということをカエルくんの瑞々しい様子と共に伝えてくれるこの本は、子ども達の雨に対するイメージをさらに自由に広げてくれるようです。

「本のおはなしvol.14」では、放送時のお天気の様子もあって、私、扇谷一穂と松尾由佳さんが「 雨の日だからこそ、していること」の話に。

私は、雨の日はどこか香りに対する感覚が鋭敏になるように感じていることもあって(湿気に香りが乗りやすいということなのかもしれません)コーヒーを豆から挽いてみたり、お香を焚いたりすることが多いなあとお話ししました。

梅雨時期生まれで雨は得意そうな松尾は…
「偏頭痛も出やすいし、5・6月は仕事の繁忙期だし、雨は苦手だなぁ〜」
だけども、
「濡れてもOKなゴアテックスのスニーカーに、お気に入りの傘も手に入れたら少しだけ雨でもまぁ仕方がないかと思えるようになったかなぁ」

雨の歌を作ったり、雨をテーマに制作することも多い私ですが、家から眺める雨は好きでも、実際に濡れるのは苦手。でも、「カエルのおでかけ」のカエルくんのように、雨の日だからこそ!という自分の楽しみを見つけたら、雨の日もうきうきと過ごせるかもしれない。そんなことを思った「本のおはなしvol.14」でした。

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今週の子守唄は、『カエルのおでかけ』の、どこか都会的な雰囲気にインスピレーションを得て選んだのはこちら。トゥットゥットゥール 🎶のスキャットが印象的なこの曲は、電車の時間を待つ間に入ったダイナーで、コーヒーを飲む、そのわずかな時間に起こった他愛もない出来事を内省的に綴ったSuzanne Vegaの「Tom's Dinner」です。

Tom's Dinner
Lyrics / Song Suzanne Vega

I am sitting in the morning at the diner on the corner
I am waiting at the counter for the man to pour the coffee
And he fills it only halfway and before I even argue
He is looking out the window at somebody coming in

ダイナーのカウンターの角に座って、コーヒーが注がれるのを
待っている。店の人が半分しか注いでいないのを指摘しようと
思ったら、彼は窓の外を見ていた。誰かが入ってこようとしている。

"It is always nice to see you," says the man behind the counter
To the woman who has come in, she is shaking her umbrella
And I look the other way as they are kissing their hellos
And I'm pretending not to see them, and instead I pour the milk

「いつも会えてうれしいよ」入ってきた女性にカウンターの
向こうから店の人が声をかける。女性は傘に付いた雨を振り落とし、
キスの挨拶をしているのを見ないふりをして、私はカップにミルク
を注ぐ。

I open up the paper, there's a story of an actor
Who had died while he was drinking, it was no one I had heard of
And I'm turning to the horoscope and looking for the funnies
When I'm feeling someone watching me and so I raise my head

新聞を開くと、飲酒中に亡くなった俳優の記事が載っていた。
私の知らない人だった。気晴らしにホロスコープに目を移すと、
誰かが私を見ているのに気が付いて、私は頭を持ち上げた。

There's a woman on the outside looking inside, does she see me?
No, she does not really see me 'cause she sees her own reflection
And I'm trying not to notice that she's hitching up her skirt
And while she's straightening her stockings, her hair has gotten wet

すると、女性が店の中を見ていた。私を見てる?
いいえ、私を見ているのではなくて、彼女はガラスに映った自分の姿を
見ているのだった。私は、彼女がスカートをたくし上げているのに気を取られないようにした。ストッキングを伸ばしている間にも彼女の髪はどんどん濡れていった。

Oh, this rain, it will continue through the morning as I'm listening
To the bells of the cathedral
I am thinking of your voice

朝、私が聞いたのでは、雨は続くだろうとのこと。
教会の鐘がなっている。
私は、あなたの声を思い浮かべる。

And of the midnight picnic once upon a time before the rain began
And I finish up my coffee
And it's time to catch the train

雨が降り始める前の、昔々の真夜中のピクニック。
私はコーヒを飲み終えた。もう電車がくる時間。

Doo-doo-doo-doo, doo-doo-doo-doo
Doo-doo-doo-doo, doo-doo-doo-doo


↑オリジナルバージョン

↑最近のライブバージョンが後半に。

このTom's Dinner、実際にニューヨークにあるTom's Restaurantというお店がモデルとのこと。

↑こちらの記事に外観が。
『カエルのおでかけ』で、カエルがおでかけする街にありそう。と妄想してしまいます。

次回も雨のおはなしです。お楽しみに。


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