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オトナのための学び旅

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人気のカリスマ講師として知られる馬屋原吉博さんが日本各地の名所・旧跡を訪ねる旅のコラムです。歴史を巡る“知的な旅”を一緒にお楽しみください。
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横浜の歴史を体感!「氷川丸」と「帆船日本丸」の船内に潜入しよう|オトナのための学び旅(6)

今回訪れたのは、それぞれの「戦争」を生き延びた2隻の船「氷川丸」と「帆船日本丸」なのですが、その前に、横浜の歴史を簡単にまとめておきたいと思います。 ペリー2度目の来航、交渉の舞台は横浜 「いやでござんすペリーさん」の語呂でおなじみの1853年6月、アメリカ東インド艦隊司令長官ペリーが4隻の軍艦を率いて浦賀沖に現れます。日本に開国と通商を迫る大統領フィルモアの親書を、幕府に受け取らせるための来航でした。 当時、幕府で老中首座を務めていたのは30代半ばの阿部正弘。親書の受

諏訪大社をめぐる神話と歴史の物語|オトナのための学び旅(5)

今回取り上げるのは信濃国一之宮「諏訪大社」です。 「一之宮」とは、有力な説によると、律令体制下の日本において「国司が着任したとき、最初に訪れる神社」であり、一般的には、その国においてもっとも格式が高いとされる神社であることが多いようです。 有名どころでは、常陸国一之宮といえば鹿島神宮、安芸国一之宮といえば厳島神社があげられます。 諸説ありますが、「諏訪大明神」「お諏訪様」を祀る諏訪神社は、全国に1万を越えるといわれており、その総本社が今回訪れた「諏訪大社」です。 4つ

世界経済に影響を与えた石見銀山|オトナのための学び旅(4)

今回取り上げるのは島根県の『石見銀山』です。 ここは2007年に「石見銀山遺跡とその文化的景観」として、ユネスコの世界文化遺産に登録されています。 鉄や銀といった金属を精錬するには、高温状態を長時間にわたって維持することが求められます。古代から中世にかけての主な燃料は木材であったため、金属の精錬は大規模な森林破壊を伴う活動でした。 ちなみに、宮崎駿監督の『もののけ姫』は、中世の日本を模した世界を舞台に、鉄を作るために山を切り拓く人間と山を護ろうとする神々の戦いを描いた作

末法の世に“極楽浄土”を再現した平等院鳳凰堂|オトナのための学び旅(3)

今回取り上げる『平等院鳳凰堂』もまた、「ほんのひととき」の読者の方にとってはなじみの場所かもしれません。 京都駅からJR奈良線に乗って宇治駅まで、みやこ路快速で17分。各駅停車に乗っても22分前後で着くため、時間によってはわざわざ快速を待つ必要もありません。 南口・左側の階段を降り、きれいに整備された駅前の道をまっすぐ歩けば、数分で宇治川が見えてきます。 中学校の修学旅行の班行動の日、なぜか移動の手間がかかる宇治に行きたいと言い出した私に班のみんなが付き合ってくれて、平

家康も帰依した僧・天海が“京の都”を模して造った上野寛永寺|オトナのための学び旅(2)

小学生を相手に社会の授業をしている中で、「寛永寺に行ったことがある人はいますか?」と聞いて「あります!」と答えるお子さんはほとんどいません。ただ、首都圏であれば実際には多くのお子さんが一度は足を踏み入れている、そんな少し不思議なお寺が東叡山寛永寺です。 西の比叡山延暦寺、東の東叡山寛永寺江戸時代、芝の増上寺とともに、徳川将軍家の菩提寺とされた寛永寺は、現在の上野公園のほぼ全域を境内とする大寺院でした。創建は1625年(寛永2年)。家康から家光までの3人の将軍が帰依し、政治に

家康が“終の棲家”として過ごした駿府城|オトナのための学び旅(1)

第1回目の場所をどこにするか悩みましたが、2023年のNHKの大河ドラマの主人公が徳川家康になったということで、家康ゆかりの地、静岡の「駿府城公園」を選んでみました。 静岡駅は東京駅から東海道新幹線ひかり号で1時間弱、新大阪駅からも2時間弱で到着する、比較的アクセスの良いところにあります。その静岡駅から15分くらいバスに乗ると、駿府城の復元された「東御門」や「巽櫓」が見えてきます。 保存されているのは中堀となる「二ノ丸堀」までで、かつて存在していたそれより外側の「三ノ丸」