関門海峡のかっぱ アマゴゼ様|へうへうとして水を味ふ日記
「ねえ、おじいちゃん、あれが巌流島?」
祖父の背後から左腕に手をかけると、驚いて振り向いた顔は、見ず知らずの男性だった。
「あ、すみません!」
飛び上がって謝罪の言葉を伝え、そそくさとその場を離れ本物の祖父を探してかけよった。恥ずかしさで顔から火が出そう。白い波を立てながら走る、遊覧船のうえでの出来事だ。その前日だったか、何かしらの理由で祖父に叱られて少しの気まずさを紛らわすように、少し甘えてみようと思ったら失敗した。小学校高学年の女子らしい、厭らしい計算と浅はかさであ