見出し画像

【11分で解説】「LIFE SHIFT ― 100年時代の人生戦略」


0. いかに人生を組み立てるか


今回紹介する本は「LIFE SHIFT ― 100年時代の人生戦略」です。著者はリンダ・グラットンさん。ロンドン・ビジネススクールの教授で、世界でも有数の経営思想家です。

この本は、「長寿化による変化がある中、どのように人生を組み立てるか」を教えてくれます。平均寿命が世界的に伸びているため、健康でいられる期間も長くなっており、それと連動して「経済」「金融」「人間心理」「社会」「医学」「人口構成」等、多くのカテゴリで変化が起こっています。この変化により、従来の考え方のままでは対応できない社会になってくることが想定されます。長寿化による変化に対応したキャリアを考えたい方にとっては、非常に参考になりますので、少し長くなりますがぜひお付き合いください!


1. 変化するステージ


この本の最大のテーマは、「長寿化時代の人生戦略をどのように組み立てるか」です。それを考える上で、長寿化によるステージの変化について理解しておく必要があります。

まず大前提として、長寿化社会では働く時間が長くなることが予想されます。長寿化により長生きする人が多くなる中で、現在と同じ引退年齢を設定していると、その人たちを支えるために必要な資金も必然的に多くなります。そのため、どこからか財源を確保する必要が出てきます。ですが、引退する年齢を引き上げれば、60歳〜引き上げ対象年齢までの方々への年金支給が必要なくなりますので、財源の問題も解決するというわけです。高齢の方を働かせることにより健康を害するリスクが生じますが、平均寿命が長くなると健康で過ごせる時間が長くなるため、現状よりも少ないリスクで働くことができるようになります。このような理由から、将来的には引退年齢の引き上げが実施される、言い換えると働く時間が長くなるということが予想できるというわけです。

働く時間が長くなることで、今まで一般的であった「教育→仕事→引退」という3ステージから、「自分で多くの移行を選択し経験する」という多種多様なステージへと変化していきます。これはどういう意味かと言うと、例えば今までの時代は「大学を卒業して→企業へ就職し→引退するまで働く」といったような、同年代と同じような流れで過ごす3ステージの世界が社会に適合していました。一方、長寿化により長い時間健康で過ごせるようになった時代では、個人のアイデンティティを深く理解し、移行するステージを選択する、という変化が現れてきます。長い時間人生を過ごせるからこそ、自分自身を知った上で「移行するステージを選択していく」という形に変わるということですね。

では、移行するステージとは、具体的にはどのようなものがあるのでしょうか?ここでは新たなステージを3つご紹介します。

・エクスプローラー


直訳すると“探検者”ですが、まさにこれは新しい発見を通して学びを得るためのステージです。「自分を見つめ直すために海外に行ってみる」などという話を聞いたことがあると思いますが、ただ単に経験しただけではエクスプローラーには該当しません。このステージで重要なことは、新しい発見を得た上で、そこから何を学ぶかをよく考えることです。ただ経験をすることだけを目的にしてこのステージに足を踏み入れると、それは単なる旅行と何ら変わりません。旅行と変わらないばかりか、エクスプローラーが抱える危険や失敗のリスク、いわゆる選択を誤ってしまうリスクが高まるだけです。ただし、エクスプローラーとして様々な経験をし、そこからの学びを自分の人生に活かすことができれば、人生が大きく変わる経験ができるかもしれません。

・インディペンデント・プロデューサー


簡単に言うと、自分で職を生み出す人のことです。このステージは単なる起業とは性質が異なり、お金を稼ぐことを目的とせず、独立した立場で生産的な活動に携わるための時間を確保することを目的にしています。ここで生み出された時間は、スキルや人脈、モチベーションなどと言った無形の資産を増加させることができます。個人の価値という言い方もできるかもしれません。インディペンデント・プロデューサーは、活動を通じて多くを学べるため得られるものも多く、一般的な起業と比較して背負うものも少ないため、安心して失敗できるということも利点です。

・ポートフォリオワーカー


様々な活動を同時並行に取り組みたい時期もあると思います。それを行うのがポートフォリオワーカーです。様々な活動のバランスを主体的に取りながら、いくつもの動機を持って生きるようなステージです。基本的には3つの側面のバランスが取れたポートフォリオを築くようになります。3つの側面とは、支出を賄い貯蓄を増やすこと、過去の経歴と繋がっていて評判・スキル・知的な刺激を維持できること、新しいことを学びやりがいが感じられるような役割を担うことです。様々な活動に携われるため、刺激的な経験ができる一方で、1日1日違うことをしているため非効率になってしまうという弊害もありますので、よくポートフォリオを考える必要があります。

ご紹介した新しいステージの魅力的な点は、年齢がいくつであっても移行可能だというところです。年齢を重ねると、知識と洞察力は増していく一方で、柔軟性や好奇心を失っていくというトレードオフの関係があります。しかし、全年代が好きなように入り混じるステージに身を置くことで、両方の能力を持ち合わせていられるようになります。年齢を重ねても、遊びや未知の活動について取り組むこともできるようになるので、経験から学ぶ機会をいつでも生み出してくれるようになるのです。


2. 自分とは何かを考える


先ほどご紹介した新しいステージでは、「アイデンティティ」「選択肢」「選択によるリスク」を深く考えることが非常に重要になってきます。これまでのステージでは、人生の移行を主体的に選択したり、移行に必要なスキルを習得する機会はそれほど多くありませんでした。しかし、今後は新しいステージの移行を主体的に選択する必要が出てきます。主体的な選択のためには、「自分とは何なのか?」「何がしたいのか?」「何をすることが楽しいのか?」など、アイデンティティや価値観を理解する必要があります。理解した上で、「それを人生にどう反映させるか」「そこから見える選択肢はどのようなものか」「そこに潜むリスクはどのようなものがあるか」などを、一人ひとりが考えていかなくてはなりません。長寿化で得られた「時間」という恩恵を、自分を見つめ直す時間に当ててみると、より良い選択ができるようになると思います。意識してみてください。


3. まとめ


ここまでの話をまとめます。まず長寿化によって、従来の「教育→仕事→引退」という3ステージの世界から、新しいステージをいつでも選択できる時代になることをお伝えしました。新しいステージとは、新たな発見から学びを得る「エクスプローラー」、自分で職を生み出し、お金よりもスキルや人脈といった無形資産を増加させる「インディペンデント・プロデューサー」、いくつもの取り組みを同時並行で取り組んでいく「ポートフォリオワーカー」といったものです。移行するステージを主体的に選択する時代においては、自分のアイデンティティを理解すること、それによって出てきた選択肢から自分にあったステージを選択すること、選択したステージのリスクを十分に検討することが求められます。このような検討を行うことが、100年時代の人生戦略を立てる基礎になります。ここまでの話を噛み砕いた上で、自分なりの戦略を立ててみてください。きっと、今までとは異なる視点で、人生の戦略を組み立てられると思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?