日中人材獲得競争!グローバル人材を引き寄せる中国。
はじめに
外国人人材の活用が叫ばれている近年の日本。世界各国の人材に魅力的な環境を提供し、日本社会の活性化と、多様性の構築が目的となっています。 ところがその外国人人材の誘致には,近年強力な競合相手が現れてきそうです。
(住みやすい社会形成も、外国人材との共生には不可欠である)
そう、14億人の国【中国】も人材の誘致に積極的なのです。様々な方法で中国も人材を世界各地から招いていいます。今回は中国の外国人人材誘致政策の一環、【中国グリーンカード/緑卡】 についてお話しさせていただきます(今回の数字の中に香港特別区とマカオ特別区、台湾島は含まれておりません)。
(活力にあふれた社会は、変革を求めつつある)
まだまだ少ない中国の外国人
日本に今、外国人がどれくらい住んでいるか皆さんはごぞんじでしょうか?その人数は2019年の段階で、約280万人という数になっています。40人に一人ですと、小学校のクラスにつき2人は外国籍という計算になりますね!
一方の中国ですが現在の外国人の居住者数は現在は70万人‐80万人とされております。正式な調査は2010年の中国国勢調査の際の外国人人口59万人ですが、すでに10年前の情報で注意が必要です。
(2018年の国連調査資料。2005年には54万人であった在中外国人は、2019年には72万人まで増加している)。
14億人の国で80万人の人口は少ないと思われるかもしれません。実際に中国の外国人人口は全人口の内0.7%しかおらず、外国人割合が少ない国の首位となっております。
(2018年の国連調査資料の在留外国人割合が少ない国ランキング。中国‐ベトナム‐キューバと社会主義国が首位である)。
比較的外国人が少ない、東アジア平均で全人口の0.5%が外国人であるので、中国の0.07%はまだまだ人材の国際化が進んでいなかったという証拠でもあります。
(2010年の国勢調査資料より。沿岸部の早期発展地域に外国人は多く居住している)
国際人材の囲い込み
その少なかった外国人ですが、2018年から新局面を迎えます。中国の経済成長に伴い、世界第2の経済圏で挑戦を求める人材が急増し始めたのです。彼らの多くはまずは留学生とし来中し、中国語と中国の商習慣に習熟するのを目的としていました。
(筆者も中国へ来た直後は、広州中山大学へ行きながら会社の設立準備をしていました)
自身の体験としてお話しさせていただきますが、パキスタン、インドネシア、ブラジル、ロシア、ドイツと多種多様な20代の若者たちが、中国の中山大学へ学びに来ていました。 彼らの多くは中国でのビジネスの立ち上げや、中国企業とのビジネスを構築するためにやってきており、その目的意識には私も驚かれています。
(中国のグローバルプロジェクト、【One Belt,One Road-一带一路】 参加国)
また中国側も若手外国人人材に関して積極的な投資をしております。特に一带一路の参加国の学生や人材に関しては、中国国内での起業支援や学費の援助を行っております。 印象的だったのは、一带一路出身国の学生の学費全額免除と、卒業後の1年間の起業及び就職準備ビザでした。
(中国の留学生は2010年から2020年にかけて人数が2倍増加しており、海外華僑にも積極的な支援を行っている。手厚い奨学金も大いに活用されている)
この国際人材支援政策については、都市や地域ごとに全く施策が異なっております。中国内陸部でかつシルクロード沿線地域、これは中央アジア諸国との連携強化のためですね。もう一つは東南アジアとの玄関口である雲南省で支援政策が強化されています。
(中央アジアと東南アジアへの玄関口での、外国人材の活躍が望まれている)
今まで各所で外国人材優遇政策を打ち出してきましたが、本腰を挙げての対応が始まりつつあります。
中国グリーンカードとは
グリーンカードとは何でしょうか?簡単にお話しすると、【外国人への永住権】です。グリーンカードといえばアメリカが有名ですが、中国でも同様の政策があります。
(中国で発行されているグリーンカード‐緑卡。身分証として運用も可能であり、外国人のパスポート携帯義務もなくなりつつある)
中国でも1980年代からグリーンカードはありましたが、実際に発行されることは少ない、政治的な制度でした。その条件が緩和され、多くの外国人人材に永住権の門戸と、活躍の機会や各種ビジネスでの起業機会が開かれつつあるのです。
(筆者友人の、インド系アメリカ人が深圳で起業したハードウェアスタートアップ起業)
従来は【留学生などの外国人材を育成して中国のファンを作る】というのが、中国の外国人材政策でしたが、2015年以降海外からの優秀な人材を誘致するという政策に移り替わりつつあります。
(グリーンカードおよび関連政策の概略)
上記の優遇内容ですが、現行の高度人材への適用からより広い層への適用が今後進むでしょう。
引き寄せられる人材たち‐人材争奪戦の始まり
さて近年中国での活躍を目指して、中華の大地に飛び込んだ外国人人材はどのような方がいらっしゃるでしょうか?
まずはByteDance(字节跳动)、TIKTOKの運営会社が招聘したKevin Mayer氏です。同氏はウォルトディズニー社で経営幹部を務めており、マーベルブランドのプロモーションや、各種版権の世界戦略を担っていました。 TIKTOKをはじめとするByteDanceのコンテンツユーザーは20億人を超えています。同社ブランドの世界戦略化のために、Kevin 氏は中国での活躍を選びました。
(中国発のコンテンツの世界化を目指して!)
またビジネスの世界のみならず、学問‐研究の分野においても積極的な人材招聘が続いております。中国は2019年だけでも、9名のノーベル賞受賞者を中国の大学および研究機関へ招聘することに成功しました。
(脳科学分野で中国の研究機関と母国の研究機関で活躍するEdvard Moser氏。2019年に中国へ招聘された人員の1人である)
また広州で中国‐アフリカ貿易を営む人材、上海の研究機関で奮闘する技術者など、中国社会において彼らの活躍は日に日に注目を集めつつあります。
(私達日本人も含めて、中国では外国人の活躍機会は重要視され始めている)
ビジネスの世界、学問の世界で活躍を決めた人員たちは【中国の市場としての可能性】【魅力的な報酬条件】【言語面での手厚いサポート】が、中国を選んだ条件と話しております。
結びに
日本経済成長が終了し、低成長が続く中で外国人材獲得は本格化してきました。一方の中国は成長の余力がある中で、外国人材という新しい政策を進めつつあります。
(組織もビジネスも人が基礎であり、人材を制する者が世界を制するものである)
日本と中国で、外国人材が求めるキャリアプランや条件は大きく異なっているでしょう。しかし人材獲得競争において強力な競合が現れることは、【外国人材の選択肢の増加】【日中両国での条件面の向上】につながるはずです。中国にいる一外国人の私としても、好機ととらえていきます!
筆者連絡先
FB:https://www.facebook.com/profile.php?id=100004295732853
Wechat ID:YUKIKATOU888
・加藤 勇樹(余樹) 2015年より、広州・深セン・香港で人材紹介‐企業へのコンサルタントサービスを展開。17年より中国・大湾区の動向やイノベーションアクセラレーターとの協業で活躍
参考資料
诺奖得主Edvard Moser:神经科学发展将促进人工智能
画像は各ニュースサイトから引用
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?