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ナイフで脅された話をふと思い出した

※同様のトラウマがある方にはお勧めしない内容です。

小学生の頃のことを何故か急に思い出したので書いてみます。
特にオチも救いも何もない話です。

子供の頃、小学5年生くらいの時の話だと思います。
我が家はその頃、家の大改築をやっていました。田舎ですので相当デカい家、それを大々的に改築するとあって、たくさんの職人さんが来ていて、たくさんの資材が運び込まれていました。(ド田舎ですのでそれらの資材を運び込んでもあまりある土地でした)

そんな中、何かの資材が足りなくなったらしく、職人さんから「近所のホームセンターまでご家族の誰かに案内してほしい」と申し出がありました。
まだカーナビなどもなかった時代のことです。見知らぬ土地のホームセンターに行くには、誰か地元の人間が付き添って車に同乗するしかない時代でした。
しかし私の親は仕事もあり手が離せない。そこに、ちょうど学校から帰ってきた私が呼ばれました。

ホームセンターまで、田舎の我が家から車で片道15分くらいの距離。
小学5年生の私、道案内くらいはできる年齢だと思われたのでしょう。
私も「まぁそれくらいなら」と思い、見ず知らずの職人さん(記憶では20代くらいの若い男性)の大きなトラックに乗り、二人でホームセンターに向かいました。

どんな資材を買うのかと思えば、小さな部品をひとつだけ買う程度だったらしく、買い物はすぐに終わりました。
トラックの助手席でぽつんと待ちわびていた私に、職人さんは「お待たせ~」と乗り込んできました。

「この部品がね、どうしても必要だったんだよ」と、小さなビニール袋を見せてくれたことを記憶しています。そんなもの見せられても小学生に分かるはずもなく。「ふぅん」とだけ答えたような。

…その後です。

「実はね~、他にも欲しかったものがあって、買っちゃったんだよね♪」と、いきなり私に見せてきたのが、サバイバルナイフです。

▲こんな感じのやつでした。例えで引用しちゃって申し訳ない。

「見て見て、これさあ、10本もナイフがついてるの。肉切ったりするのにもいいんだよね」といって、わざわざそれを開封し、一本一本のナイフを、私の耳元に突き付けてきました。
小学5年生女子だった私。正直、怖かったです。

■自分の子供には「なんでも話してね」と言い聞かせているけれど

なぜ見ず知らずの成人男性にナイフを突きつけられないといけないのか? 
私は親切で道案内をしてあげただけなのに?
幼かった私は頭の中でぐるぐる考えました。

ただ、怖くて何も言えなかった。
あと、「怖がったら相手の思うつぼだ」とも思いました。

視線を合わせず、ことさらどうでもよさげに「ふぅん。私、早く帰って宿題したいんだけど」みたいな感じのことを言って乗り切ったところ、職人さんはつまらないと思ったのか、ナイフをしまって車を運転し始めました。
正直、その車に乗り続けて家まで帰らねばならないのも恐怖でした。

家に帰るまでに何かされるんじゃないか。その恐怖を、必死に自分で打ち消しました。
「家族も職人さんも全員見ていた中で出てきたのだから、私の身に何か起きたら絶対みんな気付くはず。だから安心していい」と、何度も自分に言い聞かせました。

結局、それ以上に怖いことは何も起きず、無事に帰宅。
職人さんも何事もなかったように仕事に戻っていきました。

で。
私が親にそのことを訴えられたかというと――できませんでした。

だって、私が「さっきの職人さんから車の中でナイフを突きつけられた」なんて言ったら、親が絶対に悲しむでしょう?
私を指名したせいで私が怖い目に遭った、なんて、親だったら絶対に後悔するはず。
だから、私はそのことを黙っていました。そして記憶から抹消しました。
「何もなかったんだから、忘れよう」って。

■子供は思いのほか親のことを考えてる

いじめ問題などでよく聞く「何かあったら全部なんでも話してね」って言うの、あれは無理だと思うんですよね。私みたいに、割となんでもあっけらかんと話す人間でさえ、言えなかったですもん。

別に私は親のことをそこまで尊敬してるとか、大事にしてるとかでもない、「ごく普通に良好な親子関係」くらいのものです。
それでも言えなかったんだよなぁ。自分が苦しむのより、相手が苦しむ方が見てて辛いんだもん。

「何かあったら話してね」という言葉は、もちろん100%厚意でできてる言葉なんだけど、届かない時があるんだよなぁ。

なんてことを、なぜか30年くらいたった今、急に思い出してしまいました。

どうしたらよかったんだろうなぁ。
自分の子供にそんなことがあったらどうしようかなぁ。
思い出したことで、思い悩んでいます。
とりあえず、毎日いろいろ話をしよう。



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