人魚が貝殻をまとうのは20世紀から

久しぶりにおっぱいの本を読んでいる。

本書は22名の著者が、おっぱいをテーマに様々な論考を書いた本である。俺が読んだ中だと『乳房の文化論』と似たような構成だ。まだ全部は読み切っていないのだが、この中に一つ興味深い話があった。

『乳と貝――人魚の乳房をめぐる力学』である。よく人魚は貝殻で作られたビキニを着用している。著者はこれに着目し、この貝はいつ人魚の乳にへばりつくようになったのか、そしていかなる力で落ちないのかと疑問を投げかける。

正直なところ、この開始時点で「やられたな」と思った。俺も貝殻ビキニを着用している人魚は多く見てきたが、そのことに疑問を持ったことはない。当然のように人魚と貝殻はセットで描かれることが多いので、それが当たり前だと思っていたからだ。海にいるのだから胸を隠すなら貝を利用する。当然のことだ、と。なのに著者は疑問に思った。そこがすごい。

本稿によれば、貝殻が人魚の胸に現れるのは20世紀に入ってから、しかも本格的にビキニとして機能するようになったのは1950年代以降らしい。それまで人魚の胸に貝は不在であった。

思わず「本当に?」と思い、Wikimedia Commonsを確認する。

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