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豊岡演劇祭2020体験記 9月20日日曜日(青年団、越後正志、劇団普通、山川陸設計、変わりゆく線)

9月20日日曜日

11:30~12:40
青年団
『思い出せない夢のいくつか』
江原河畔劇場 スタジオ

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座席数70。前の2列は一席飛ばしなので、実質35か。
当日券出ないとのことだけど、キャンセル待ちで10名くらい並んでた。

まず、開演前に舞台装置とそれを照らす照明で気持ちが高揚する。公民館の一室のような空間に、汽車のボックス席が置いてあるだけなんだけど、違和感なくそこにあって、劇世界を作ってる。線路とか枕木とか、大量の石、バラストとか、網棚の荷物とか、細部がめちゃめちゃ作り込んであるけど、全体としてはすっきり最小限の分量という感じでまとまってる。美術センスが素敵すぎる。装置の木材の色は、劇場の天井の梁の色と合わせてあるのかな。それとも天井の梁も装置の一部だったのかな。舞台美術は杉山至氏。

旅公演に向かう汽車の中の、女性歌手とマネージャーと付き人の三人のセリフ劇。退屈しのぎの会話の中で、互いの腹の探り合うさまが、スリリングにも、滑稽にも見えた。

午前中の一発目から、メインディッシュみたいなのを頂いて、いきなり満足した。

12:40~13:10 
越後正志
『観測地点』
江原エリア

江原河畔劇場に行くのにも、道に迷っちゃったんだけど、その後もろくに調べずに駆けだしたから、また迷った。江原の町をぐるぐる回ったから、今はちょっと詳しくなった。

それで、友田酒造を中心とした駆け足での鑑賞になってしまった。

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酒蔵の中に美術作品が展示されていた。次の予約もあるから、申し訳ないけど、急いで見て回らなきゃ!って気もそぞろだったけど、植物の大量の青焼き写真が、隙間風でひらひらとなっている中に身を置くと、ほっと落ち着いた。

作家の越後正志氏が、「天井からうっすらと光が差し込む蔵独特の空間に惹かれました」と配布資料に書かれていたけど、そういう静謐な感じが活かされた作品になっていた。

13:30~14:10 
劇団普通
『電話』
ワークピア日高 江原

「ワークピア日高」という会場は、どうも江原河畔劇場に近いようだと、地図を見て思っていたけど、実際は隣接していた。

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私が見た中では、この会場だけ靴を脱いでの鑑賞だった。

全部で60席くらいかな。だから実質30名定員。
他の演目を、全てネット上で事前払いを済ませていたから、こちらが現金払いだったことを忘れてて、受付で慌てた。お金が足りてよかった。

実家にいる長男、実家を出ている次男と長女、この二か所を繋ぐ一回の電話の会話劇。小道具としての電話は出てこない。舞台上では、それぞれが電話の話し相手の目を見ずに、空(くう)を見ながら会話する。

それぞれ独立した大人だけど、兄弟妹という関係性上、ちょっと踏み込まないといけないようになっているところや、踏み込んでほしくないところなどをやり取りする様が見どころ。

微妙なやり取りを延々とやるのだけど、これを全部茨城弁でやるから、なんか温かい。「だっぺ」とかよりも、「~でしょうよ」が印象的に使われてる。「そうでしょうよ」の応酬は、癖になりそうだった。

アフタートーク聞きたかったけど、次のフィールドワークに間に合わなそうだから、冒頭ちょっと聞いて、退室させていただいた。時間の関係で、他意はなかったのです。

14:30~15:50
山川陸(山川陸設計)
『三度、参る』
江原エリア

『三度、参る』は、豊岡の街を介して皆さんの眼差しに出会う場として設計されます。
短いルートを繰り返し歩き、その中で観た物事を地図にする。この一連を山川陸と手押しの什器がナビゲーションします。
演劇祭を巡り、上演を観る、その身体をも見つめる時間と空間を共に立ち上げましょう。

と、公式サイトで説明されてて、実際やったらその通りなんだけど、どういうことか全く想像がつかないまま、時間がぴったり合っているという理由だけで参加した。

実際参加してよかった。演劇祭のバリエーションとしても深みが出たし、ぱっと見は何もないような江原の町に、愛着が芽生えた。

関係者の方に怒られそうなくらいざっくり言うと、「劇場裏の数百メートルの中の目についたあらゆるものを、制限時間内に測りまくる」という内容。

測る人、それをメモする人、メモの台を動かす人とパートをローテーションしながら、チームプレイで進めていく。写真とか撮ってる暇もない。

色々測る中で、劇場の周辺って、こういうものがあるんだとか、こういう街並みになってるんだ、とかいうのが、どんどん細かな情報として身体に入ってくる体験が、大変良かった。

神鍋高原スキー場に行く、若い人たちの中継地点として栄えたのが江原の街並みで、スキー気分を盛り上げるために、ロッジを模した壁面装飾が多いのだという豆知識なども、面白かったなぁ。

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16:30~17:45
変わりゆく線
『四つのバラード』『diss__olv_e』
豊岡市民会館

江原から車で20分。ギリギリの到着だったが、駐車場がいっぱいで、焦った。第二駐車場が数百メートル先にあったから停められたけど、走ったぁ。

一階席は312席で、中二階の一部も使ってる。
総集客数は、160くらいかな。私が見た中では、この演目だけが指定席だった。当日受付でチケットを渡されたときにはじめて自分の席がわかるという、当日指定席ね。

この演目は会期中一回しか上演されないものだからか、中二階は赤と白の服を着た、スタッフさんでいっぱいだった。で、たぶん、遅刻ギリギリだったという関係か、私はこの中二階で鑑賞した。大勢のスタッフさんと一緒だったから、関係者の気分で観られた。

前半『四つのバラード』は、姿こそ見えなかったけど、ピアノの生演奏だったのかな。ピアノに合わせて、見目麗しい男女がもつれたり、互いに突き放したりする、ダンス作品。リノリウムを敷いただけの舞台で、二人が踊りまくっているだけなのに、目を奪われる。

後半『diss__olv_e』は、男女6人が、大量の赤い風船を、蹴ったり割ったりしながら踊る作品。大きな会場だから、風船を割る音は大したことないのだけど、静寂の中で、さぁ、今から風船割るぞぉ、みたいなシーンは、やっぱり緊張する。蹴り上げてパンと割る動作が、なんかカッコいい。

国際演劇祭を目指す演劇祭だから、こういう言葉の内容に頼らない、ノンバーバルな舞台は外せないんだと思う。きっと、私も、海外の演劇祭を観に行ったなら、外国語がわからなくていい作品を必ずプランに入れると思う。

けど、まだよく分からない。ダンスの愉しみ方が。美しいと思うし、すごく身体が動くなぁと感心はするのだけど、30分集中して観られるかと言われると、自信がない。

せっかく「かばんのまち」豊岡に来たから、終演後、目の前のカバンストリートに繰り出し、長男の長財布を買った。

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そんなこんなで宿の夕食の時間、18時が迫り、慌てて電話を入れる。宿に着いたら、すぐに食事をとってくださいということで、浴衣にも着替えず、バタバタとご馳走を食べた。その後ひとっ風呂浴び、浴衣に着替えて、城崎の街に出た。

この日も、街角の恋人たちには出会えなかったけど、また射的した。城崎ジュースも飲んで、城崎ジェラートも食べて、城崎ビールも飲んだ。出石ビールも。

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ところで、実際に移動してみると、この演劇祭、かなり広いエリアで展開されていることがわかる。

「江原河畔劇場」と「城崎国際アートセンター」が22km離れているから、福岡に置き換えると、「天神」と「二日市温泉」の間の距離に相当する。で、その間の「春日原」とか「大橋」とかでまた会場があって、その他、フリンジの会場としては、「太宰府」とか「糸島」がある、みたいな距離感。

温泉を絡めたくって、西鉄でつないでみたけど、これだと行政の市区町村の区分をまたがってしまうから、豊岡演劇祭とはちょっと違ってくるな。福岡市内で収めようとすると、地下鉄でつなぐとして、「香椎」と「今宿」の間の距離に相当すると言えば、エリアの広さが伝わるかな。

一日目の記事は、こちら↓


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