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映画「劇場」を観て

 半年振りに映画館へ足を運びました。13日までだったので滑り込みです。

 以下、映画のネタバレを含みます。お嫌な方は引き返して頂けましたら幸いです。読後クレームは無しでお願い致します。




 凄い個人的な話からなんですが、ラストは昨年11月に出演させていただいた舞台「うつくに」を思い出していました。本当に。演じ手の感想になってしまうんですが、既視感というか「あ、知ってる」みたいな。

 いや、実際は勿論異なるものなのであれなんですが、なんだろ……凄く烏滸がましい言い方になってしまうのですが、観客側に立ってみて、あのとき作演だったアコさんのココロみたいなものの輪郭を、ほんの少し感じられたような気がする、なんて不思議な気持ちになりました。込めたものとか、伝えたかったもの、とか。

 演じ手だったときに理解してなかったのか、とかそういうアレとはまた違うんですけど……でも、私が一番他人だったんだよな…。明確な他者、でした。これ伝わらないな、うん。

 映画の話に戻って。

 「理解できる」「わかる」という言葉を簡単に使うのは怖いのですが、永くんも沙希ちゃんも、どっちも「そういう考えもあるよね」ってなりました。それぞれが話しているときの考え方、相手の何が理解できて、どこが分からないのか。なんでそこに行き着くのか。

 彼は彼女の此処が分からない。彼女は彼の此処が分からない。

 その時の彼の思考と心情。その時の彼女の思考と心情。

 台詞に無いとこも沢山ありましたけど、表情諸々でそれがもう明確で。永くん視点でのお話になっているのに、沙希ちゃん視点でも見ているかのような不思議な感覚を得る部分がいくつもありました。

 あと、バランス感が散りばめられているというか。

 前半、彼女が出す分だけ彼も心の内で出してて(つまり隠れてる)、後半、彼が出す分だけ彼女は乏しくなっていく(つまり心の内で出している)。

 対比で、噛み合ってるようで全然噛み合ってなくて。でも一緒に居る、そんな多分5、6年。

 それって恋なの、愛なの。依存なの、執着なのって疑問を持たなかったわけではないんですけど。そもそもが紙一重だし。しかも初恋、と言うならば。

 なのに、初恋というには淡いものにはならず、反面、それは子供のように幼く拙く。キスシーンもベッドシーンも無いから余計になのかな。どちらにも垣間見えるアンバランスさが、ただ純粋に凄いと思いました。

 あとね、沙希ちゃんの「あなたは変わらないじゃない」「でも本当は全然悪くないんだよ」「だって、変わってないんだから。焦って、変わったのは私の方」という一連。これが、本当に真理。

 5、6年(当初沙希ちゃんが学生だったので)の間、本当に彼は変わらなくて。だって、ほとんど彼の人生の時間経過を感じなかったので。大衆に紛れられないことを学生時代に実感してほぼずっとそのまま。だけど、それって、彼という“個”として存在が確立しているということで。そんな彼を好きになったのだから、変わらないことを責めるのは変だろ、という認識。そっか、そうだなってなりました。

 中身が成長しないから、とかいう話じゃないんですよね。そこを持ってくるんじゃなくて、彼はあれで等身大。あれで全部。しかも、実は彼自身が一番それをよく分かってる。そこまで理解してて、好きであり続けられなかった自分がすべて。だから、あなたのせいじゃない。

 沙希ちゃん、賢いと思います。ほんと。

 此処がターニングポイントでラスト成長に繋がった(ように見える)のは、それこそテーマ的には愛ゆえだったと取るべきなんだろうな。有言実行したって。

 でも、私はそこじゃなくて。成長はしてないと思うんです、別に。やっぱり彼は本質的には変わってないなって思うんですよ。演劇こそ我が人生、みたいな人。ずっと。分かる人が分かればいい。ただ、ラストが今までと違ったのは多分、表現を伝えたい人が明確に一人居たって、それだけじゃないかな。客席に実際に居るか居ないかは関係なくて。

 「君のことを嫌いな人が客席に一人居ると思ってやってみて」

 嫌いな人、ではない定義でも、一人居ると思って、だったのかなって。

 で、矢印が一人に向いていたのなら、きっとそれは明確に想いだったのかなって。

 そこがかな、って。伝われ。

 他にも刺さる台詞いっぱいあったんですけど。いや、ほんと考えやなんかを文字化するのって難しいな。作家さん凄い。物書きさんは凄い。形のないものに形をつけるって本当に難しい。

 そういえば、ふとしたときにやっぱり役者目線で見ちゃうんですけど。一挙手一投足のクセの付け方や性格の表し方(彼の場合右肩下がりがち、歩くとき片足に体重乗せがち、猫背、食べ方が雑、だけどカレー一滴まで掛けたがる細かさ)とか、綺麗に笑う、とか、そういうの凄いなってまじまじ観てしまいました。

 インプット、アウトプットしていきたい。

 相も変わらず纏まらないなか、最後までお読みくださり、ありがとうございました。

2020.8.12

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