012_タイトル

ミトコンドリアの祖先は、太古の昔にバクテリアに侵入したバクテリアだった?

ATPは、生命のエネルギー源だ。
僕たち真核生物は、ミトコンドリアでATPを作っている。

ミトコンドリアで何が起きているかを、最近何回かに分けて書いてみた。

ATPが作られる仕組みをざっくりと書いてみたし、


この仕組みがなんでこんなに回りくどいのかも書いてみた。


軽く振り返ってみると、ミトコンドリアの内膜の上には、電子伝達系と、ATP合成酵素があって、

001_ポンプと合成酵素

 まず、電子伝達系がプロトン(水素イオン)を膜の外に汲み出して、
 プロトンが内側へ戻ろうとするエネルギーを使って、ATP合成酵素がATPを作る。
・・・というわけだった。

001_プロトンの数の比較

ところで、僕たちのような真核生物の細胞はミトコンドリアでATPを作るけど、原核生物(バクテリア)にはミトコンドリアがない。

でも、バクテリアだって生き物だから、ATPは必要だ。
どこで、ATPを作っているのだろう?
というか、バクテリアのATP合成酵素はどこにあるのだろう?

実は、バクテリアのATP合成酵素や電子伝達系は、細胞の表面(細胞膜)にある。

004_バクテリア

まあ、この図はATP合成酵素や電子伝達系を大きく描きすぎだけど、イメージとしてはこんな感じ。

つまりバクテリアは・・・
 細胞の外にプロトンを汲み出して、
 細胞の中より外の方がプロトンが濃い状態にして、
 外から中にプロトンが流れ込んで来る勢いを利用してATPを作っている。

ところで、真核細胞は、細胞の中にミトコンドリアがあって・・・

005_真核細胞とミトコンドリア

ミトコンドリアは、膜が二重になっている。
そしてこの、波打った内側の膜(内膜)に、電子伝達系とATP合成酵素がある。

006_ミトコンドリア

というわけで、真核細胞とバクテリアを、大きさの違いを無視して並べてみると、こうなる。

007_ミトコンドリアとバクテリア

(実は真核細胞の方が、直径がひとケタ大きいんだけど・・・)

どうだろう?!
違うけど、なんか似てる!!
これはなんだろうか?

これを見て、僕たちは何を思いつくべきなのか?

ポイントは、ミトコンドリアの膜が二重になっているところだ。
どうやったら、膜が二重になる?

今のところ、こう考えられている。

20億年ぐらい前、
 あるバクテリアに、
 別のバクテリアがこう、
  やってきて・・・

008_共生_1


中に入っていって・・・

009_共生_2


入って行って・・・

010_共生_3_1


プチッとちぎれると・・・

010_共生_3


ミトコンドリアのできあがり!!

011_共生_4

・・・ってわけだ!

ミトコンドリアの、
 内膜は、入ってきたバクテリアの細胞膜で、
 外膜は、それを受け入れた方のバクテリアの細胞膜、
だったんだね!

つまり、20億年ほど前、バクテリアに別のバクテリアが入り込み、「共生」という状態になった。

そして、中に入ったバクテリアはエネルギー生産(ATPの合成)に特化するようになり、それを受け入れた大きい方の細胞は自身の表面でATPを作るのをやめてしまった。

この奇跡のような共生関係から真核細胞が生まれて、僕たちの祖先となったらしい。

この驚くべき仮説は、細胞内共生説といって、真核細胞の誕生について今のところ定説になってる。

もちろんこの仮説には、いくつもの根拠がある。

たとえば真核細胞には核があって、核の中にはゲノムDNAが入ってる。
ところで、実はミトコンドリアも内部にゲノムDNAを持っていて、細胞の中で自ら分裂し、増えていく。
自分で増えてくあたりが、いかにも「元バクテリア」っぽい。

その他にも多くの研究成果がこの仮説を裏付けている。

けど、僕は「かたち」に興味があるので、この、
 ん?
 違うけど・・・
 なんか似てるぞ?!
  っていう感じが好きなんだな。

そしてこの、
 「かたち」から、細胞内共生説が類推できちゃう!
っていうところが、とてもおもしろいと思うんだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?