文学に言祝ぐ 石橋毅史「本屋」は死なない

「文学に言祝ぐ」は、筆者が心惹かれた本を心の底から推す場所です。今回は石橋毅史「「本屋」は死なない」を推します。

 この本は、何か非常に個人的な手記を読んでいる気になりました。「本」よりも「本屋」にどうしても心惹かれてしまう著者の疑問を探るために、この本は書かれたのではないかと思いました。

 あとがきの中にp.263「ここでいう「本屋」とは、小売業の一形態としての書店業全般を指さない。「本」を手渡すことに躍起になってしまう人、まるでそれをするために生まれてきたかのような人、つまり本書に登場するような人達のことである。」と著者の定義がありました。
そう、その意味で本屋は死なないといえるのでしょう。なぜなら、本屋の未来をつくるのは、本を誰かに手渡したいと願う人間ひとりひとり、なのだから。

 …筆者の個人的な話になりますが、先日、二子玉川の本屋博に行ってきました。40の本屋さんが集まった会場は、熱気にあふれていました。各本屋さんは長机2コほどのスペースにみっちり本を置いていました。そこを見て回ることの何と面白いこと!狭いスペースに、十何冊かの選ばれた本だけが置いてあるその環境は、ああ、手渡したい本とはこれなのか、と善くも悪くも、売り手の真意が透けて見えるようで、興味深くありました。でもだからこそ、面白いのでしょうね。

 この本の中に、マルセル・モース「贈与論」を紹介した内田樹「街場のメディア論」の引用がありました。
p.177「でも、メディアは「金儲け」のために作られたものではありません。ある人類学的機能を託されてこの世に登場したものです。」
 メディアを「本屋」に言い換えて、「本屋の人類学的機能とは?」を考えたくなります。
 本文を引用しながら語るのなら、
P.216「本屋の主力商品は読んだ人の人生を変えるかもしれないくらいの「本」」
であり、
p.44「「本」を自分の思うかたちで人に手渡してゆきたいと願う姿勢は、人間の根源的な欲望に関わる、もっと大きな何かに支えられているのではないか」
とするならば、その人間らしさを維持したまま本屋に生き続けてほしいと思うのです。

 本が好きな人間としては、本との出会いの場を提供する「本屋」を新たな視点から見ることができるおすすめの一冊です。ぜひお手に取ってご覧ください。

折口悠
紹介文献:石橋毅史「「本屋」は死なない」(2011年、新潮社)

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本、好きです。誠実に読むことを心がけています。本を読んだ感想を語りたくて「読書感想文」を書きます。