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たぶんきっと好きだった

高校2年の夏、わたしはサッカー部に恋をしていた。

高校3年間、サッカー部のマネージャーをやっていたわたしが、入部したキッカケは体育のサッカーが楽しかったから。そして、何か夢中になれるものを探していた。

授業があったその日の放課後、入部届を持って職員室に現れたわたしをみたときの顧問の顔は今でも忘れない。
中高一貫校で、中学3年間部活に入らずボケっと過ごしていた女生徒が、高校に入っていきなり運動部に入部届を持って押しかけてきたのだから、戸惑いもわからなくはない。

当然だが、これまでゆるく過ごしていた私にとって、学校で一ニくらいに規律正しいと言われていたサッカー部の生活はしんどかった。

毎日学校で最後に下校していたのはサッカー部だったし、テスト期間をのぞけば休みは年間で10日あるかどうかくらい。

わたしはスクールバス通学をやめて、時間の融通がきく、片道2時間半の汽車+自転車+バス通学になった。(学校が山の上にあったので、山の麓まで自転車、麓から学校まで徒歩かバスという乗り継ぎをして学校に行っていた。)

そして来る日も来る日も、蹴られるボールを拾っては磨き、ゼッケンを洗い、飲み物を用意した。

ときには顧問に叱られ(マネージャーなのに)、部員に八つ当たりをされ(わたしはお前らの母さんではないと何度も思った)、学校の試験で赤点をとって部活を咎められても(一応進学校だったのに)辞めようと思ったことはなかった。

なぜあんなに一生懸命だったのか、多分きっと好きだったのだろうと思う。

正直楽しかった思い出と同じくらいに悔しいことや辛いこともあったので認めがたいが、サッカー部という居場所が大好きだったのだ。

サッカーではなく、サッカー部を好きになったきっかけも理由も、今だによくわからない。
1年目のときはそれほど、でも2年目の夏にはもうかけがえのない居場所になっていたと思う。

きっと、わたしはサッカー部に恋をしていたのだ。
当時はまったくそんな風に思ってはいなかったけれど、大人になって振り返るとあれは、一生懸命好きな人に尽くしていたのだ。

こんな記事を部員に読まれたら、相当に恥ずかしいので、このくらいにしておこう。

死ぬまでくらいには、読ませてやってもいいかもしれないけど。


編集:彩音 
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