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最近のCMはなぜストーリー性を重要視しているのか?

金曜ロードSHOW!を見ていると「これはCMなのか?」と思うようなCMが流れてきます。

「あなたとクルマの物語」というCMタイトル。

このCMを見て思うことは素直に感動してしまうということ。映像にストーリー性があり、CMということに気が付かず見入ってしまう。

CMの最中も車についての紹介は一切なく、ストーリーを壊さず自然の流れで少し登場するくらいです。もしかしたら、車について詳しくない人であれば、CMを最後まで見て、スバルのロゴが出てきてやっと「あースバルのCMだったんだ」と気が付く人もいるのではないかと。

こういったCMは他にもいろいろな企業(ソフトバンクやAUなど)が取り組んでいます。「広告の進化」を如実に感じます。企業がなぜこのようなCMを出しているのか?今回はマーケッターの観点から考えてみたいと思います。

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少しあなたに聞きたいのですが、
普段、広告を見てテンションが上がり、楽しい気分になるでしょうか……?

正直、広告を見て「やった!広告だ!」なんてワクワク楽しい気分になる方は少数なのかなと思います。CMが出てきたらっテレビのチャンネルを変える方や最近で言うとYouTubeを見ていて広告が表示されれば「邪魔」と思う人が大半かなと。

世の中で配信されているほとんどの広告は「Vol.3」でお話している「いますぐ客」をターゲットとしています。「いますぐ客」というのは、今すぐに商品を買いたいと思っている方のことを指します。喉がカラカラに乾いている人に向けて、水を売るというような認識をもってもらえればとわかりやすいかと思います。

ビジネス的な観点で考えると広告費を掛ければ、必然的にその費用を回収しなければなりません。キャッシュフローの関係もあります。したがって、すぐにでも商品やサービスを購入してくれる「いますぐ客」にアプローチするしか無いのです。

ビジネスの立ち上げ当初は「いますぐ客」をターゲットとした広告が必須です。そうでないと短期的に売上が上がらず倒産してしまいます。ただ「Vol.3」でも話したように「いますぐ客」は市場のわずか1%しか存在しないのです。

いますぐ客の奪い合いでは、厳しい価格競争を強いられます。さらに、ほとんどのお客からは「鬱陶しい」と感じられ広告を視界から排除します。無駄に広告費を垂れ流しているのです。

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広告を考える上で、広告の歴史を知ることは非常に有用です。特に日本のモノ作りを支えてきた自動車業界の広告は非常に参考になります。自動車業界の広告訴求の歴史は以下の通りです。

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1960年、大衆車の出始めはクルマ自体の説明に訴求点を置いていました。まだクルマの普及率が2.8%の時代です。クルマというだけでお客が興味を持ち、売れていきます。アクセルを踏めば走る、ブレーキを踏めば止まる、ハンドルを回せば曲がるなど走ることにおいて必要十分で事足ります。

1970年~1990時では時代が進むごとにクルマの性能が技術の発展と共に向上していきます。走ることに加えて「燃費、軽快性、操作性、壊れにくさ」などいかに良い性能であるかが売れるポイントとなっています。

ただ、2000年以降普及率が80%に到達し、軽自動車でもある程度快適に走行できるようになると、性能の向上を推しポイントにするだけでは売れなくなってきます。

売れるポイントとなるのは
「クルマを手に入れてどのようなことができるのか共感を与え、どんな未来が待っているのか」

このクルマを買うとこんなことができるという気づきを与えることが重要になってくるのです。実際に冒頭の「あなたとクルマの物語」ではクルマの性能紹介はほとんどされていませんね。クルマの紹介はそっちのけで、家族とそして新しく生まれてくる家族のやり取りを流し「スバルの車があるっていいな」と潜在的に思わせようとしているのです。

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感情や想像で惹きつけ、必要性と未来に気づいてもらわなければならないのです。

気づきは「まだまだ客」を引き上げます。

商品やサービスを必要としていない「まだまだ客」に気づきを与える広告は彼らを購入の土台に引き上げます。まだ商品を必要としていないお客でも潜在的には商品やサービスを欲しています。その潜在的なニーズや欲求を掘り起こすことが可能となるのです。

さらには気づきは共感を生み、共感は口コミ(バズマーケティング)を呼びます。口コミは手離れで発生していくものなので広告費は掛かってきません。

「まだまだ客」は市場の8割を占めています。この8割を相手にできれば、激しい価格競争やいますぐ客の奪い合いをすることなくブルーオーシャン市場でビジネス展開をできるのがマーケティングの理想形です。

その理想形に載せるためにも、「共感し、利用した後の想像力や好奇心が掻き立てられ、シェアしたくなる広告」を作り上げることに我々マーケッターは頭に汗をかきながら、試行錯誤して行かなければならないのです。

(Vol.3をもう一度読んで「まだまだ客」の心理について知るならこちら)

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