花屋の老人のピアノと歌

英国のセントパンクラス駅。

黒の厚いコートを着た91歳の老人が

駅に置かれているピアノの前に座る。

何気に弾き出し、歌う曲は

ドン・モーエンの「GIVE THANKS」。


やさしく温かいゆったりしたメロディ。

彼の声は嗄れていてとても味がある。

世界大戦の前から花屋で50年以上働き

大好きなピアノを84年も弾いてきた。

今は毎日この駅で弾くのが楽しみだ。


「弱気者には私は強いと、貧しき者には

私は豊かだと言わしめよ」の歌詞が響く。

「すべては神の成される業なのだから」

この歌は彼の人生そのものなのだろう。

歌い終わると人が駆け寄って握手を求める。


老人が笑顔でしみじみと話し出す。

「周りから受け入れられて毎日を重ねる。

同時に私の演奏が人々に喜びをもたらす。

祈りが通じた気がするんだ。ありがいこと。

本当に幸福な人生だった。ピアノのお陰だよ」


ドン・モーエンが歌う「GIVE THANKS」も

神への感謝が気持ちに溢れ、心が洗われる。

世の中は世界中、感染症や自然災害などで

多くの人々が苦しんでいるけれど、歌うことで

いつかまた平穏で幸せな日が来ると信じます。