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クリエーターの本音【本の間の、音】

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小説家として生きる中で抱いた、個人的な本音を綴らせていただいています。 レピュテーションリスクをほぼ省みず、筆を走らせております。 何卒ご容赦のほどよろしくお願いいたします。
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「仕方のないこと」でも「かまわぬこと」でもなくて、「どちらであっても良い」こと

「仕方のないこと」でも「かまわぬこと」でもなくて、「どちらであっても良い」こと

高関健さんの指揮で、藤田真央さんの奏でるラフマニノフを初めて聞いた日を思い出した。
その音楽の美しさは言うまでもなく、真央さんの脱力の技術を目の当たりにして、私の人生は明らかに変わった。

あまりにも高い純度。圧倒的な美しさ。
ホールにいる聴衆の想念がひとつになっていくような感触。柔らかく、どこまでも広がっていく。インスピレーションが溢れて止まらなくなる躍動感。

これ以上の実感など、本当は、要ら

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自分の本が書店に並んだところで、世界など変わらない

自分の本が書店に並んだところで、世界など変わらない

●初めて書店に自分の本が並んだ日初めて書店に自分の作品が並んだときは、とにかくワクワクした。この舗装された道は遥か遠くまで真っすぐ開けているように見えた。

(私は小説家デビューする前に、アート系雑誌に作品を採用してもらったり、コラムが雑誌に載ったりしていた)

そして、初めて小説が掲載された雑誌が書店に並んだときは、ましてや単行本が書店に並んだときは、世界が変わると思った。 

世界が変わると、

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小説家になりたいのか、いい小説を書きたいのか

小説家になりたいのか、いい小説を書きたいのか

 次の一文から始まる、「2分間の絶景」という短編小説を書いた。数年前になる。当時小さな賞をもらったまま、出版の目途が立たずに時だけが巡った。自分なりに色々な扉を叩いて回ったが、扉は開きかけては閉じることの繰り返しだった。そのため、今は勇気を出してnoteで公開している。

※電子書籍化が決定したため、現在は非公開にしています。

 常田[ときた]もゆ子が育った蒲田というのは不思議な町で、東京都大田

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