マーケター必須スキル:生活者理解のための分析とは
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マーケター必須スキル:生活者理解のための分析とは

前回の「マーケティングセンスを鍛えるフレームワーク活用術」に続き、今回は「LIFULL MARKETING SCHOOL」第2回目の研修内容を紹介します。
「なぜ生活者理解が重要か?そのための手法と考え方にどんなモノがあるのか?」について語っていますので、マーケターとして成長したい、人材育成に力を入れたいという人の参考になれば嬉しいです。

マーケター向けの研修

こんにちは、LIFULL HOME‘Sマーケター職種マネージャーのtoruです。
今回の研修は前半と後半に分け、前半は私、後半は弊社UXリサーチャーの小川さんに講師を担っていただきました。
小川さんはHCD-Net認定 人間中心設計専門家資格も修得された、LIFULL初のUXリサーチャーです。過去にもnoteでUXトークを繰り広げていますので(UXデザイナーとして、社内での評価のされ方を自らデザインする|UX Potatoイベントレポート)、UXリサーチャーのキャリアに興味がある方は是非チェックしてみてください。

さて、今回のテーマは「生活者・ユーザー視点」です。
前回研修でも触れましたが、マーケターとしてのセンスを高めるために、以下の視点でお話ししました。

・フレームワーク=型。
・覚えた「型」を思考の道しるべに学習効率を上げ、日々学習&アウトプットを繰り返すことでセンスが磨かれる。
・生活者理解の一例を「自分の中の引き出し=型」として覚え、実践で使えるようにする。

今回は、マーケター必須スキルである生活者理解のための手法・考え方を「型」として身に付け、日々の業務に役立てられるようお話ししています。手探りで色んな分析をしたり、直感をもとに施策立案したりすることもあるかと思いますが、限りある時間を効率的に使い、人に伝えやすく・教えやすくするものとして、今回の「型」を覚えていただけると嬉しいです。
ここから、実際に話した研修内容を紹介していきます。

なぜ生活者理解・ユーザー視点が必要か?

マーケターにとっての生活者理解の必要性は言わずもがな感もありますが、改めて下記の問いを受講者に投げかけてみました。

問い
・競合サービスではなく、LIFULL HOME’Sを使う人ってどんな人?
・なぜLIFULL HOME'Sを使うのか?
・ユーザーにどんな課題があって、どんな訴求をすれば良いのか?

この問いの答えに詰まるor社内の各職種間で認識が揃っていないと、的外れな施策をやってしまったり、一貫性のない体験を提供してしまったりします。
ちなみにCB Insightsの調査によると、新規事業失敗の原因として「ニーズの理解不足」が最も多くを占めているというデータもあります。基本の考え方でありつつも、ユーザーの反応をみる・インサイトを探る・正しく捉えることが難しいことを物語っていますね。

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こういった事態を避けるためには「生活者を理解する」手法を型として身に付け、施策の成功確率を上げることが重要になります。
生活者理解の手法は色々ありますが、本研修では「定量調査」「定性調査」の一部をテーマに説明しました。市場はファネルで大枠を捉え、セグメントは定量分析で捉え、個人は定性調査で捉え、それぞれを行ったり来たりしながら解像度を上げていくという流れです。

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セグメントを理解する方法とは?

定量調査ひとつを取っても分析手法は多々ありますが、今回はセグメント理解の手法として「ターゲットプロファイリング」を紹介します。
この手法は、定量データ(アンケートデータ等)をもとに、集団の中で同質な人をセグメントとして定義し、デモグラフィック・意識価値観等の切り口で、生活者の解像度を上げるものです。
例えば、「LIFULL HOME’Sを使う人ってどんな人?」という問いに対し、市場全体から「自社サービスユーザー」と「他社サービスユーザー」のセグメントを作成し、色んな軸で①ボリュームの把握・②他のセグメントとの違いの確認をおこなっていきます。
ここでは、自社で実施しているアンケート結果(※)をもとに、以下の観点で分析してみます。
※分析の前提として、元となるアンケートデータが市場を代表する設計になっているか、サンプルサイズが担保できているか、生活者理解に必要な設問が網羅されているか、というマーケティングリサーチ的な観点も重要になってきます。

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1 ボリュームを把握するためには

自社サービスユーザーはどんな人が多いのか?という観点で見ていきます。
実際の分析時はもっと多くの切り口で見ていますが、研修時は分かりやすいようにいくつかの軸に絞って分析しました。若年層が多いのか、首都圏の人が多いのか、単身世帯が多いのか、などです。
ちなみに、他社ではライフスタイルや意識価値観の軸で見るべきで、性年代などのデモグラフィック属性での分析は時代遅れだという意見を見かけることもあります。しかし、LIFULL HOME’S事業は住み替え=大学入学・新卒入社などのライフイベントや、ローン審査年齢などに密接に関わるので、年代等も基本的かつ重要なファクターだと捉えています。

2 他のセグメントとの違いを確認するには

一例として競合サービスユーザーとの相対比較の観点で見てみました。
例えば、自社サービスユーザーが「若年層が多い」ということがボリューム確認から分かったとしても、それが自社特有のものか、市場自体がそうなのか、競合と比べてどうか、といった比較軸を持たないと特徴が明らかにできません。ボリュームと相対比較の双方の視点で捉えることが重要です。

次のステップとして、ここで明らかにしたセグメントの特徴をもとに、今度は「市場にあてはめる」という工程を繰り返してみます。
上記はあくまで「自社サービスを利用しているユーザー」という視点で分析しましたが、そこで明らかにしたユーザー特徴を市場にあてはめた際に、市場全体でどれくらいのボリュームがあるのか?市場定義の切り口として理解しやすい・施策に使いやすいのか?などを見ていきます。
例えば自社ユーザーの中から「お菓子の家に住みたい」という人が20%存在するので、この人たちを1つのセグメントとして定義したと仮定しましょう。このセグメントは成長率が高く特徴的なので、今後の戦略的なターゲットとして狙おうとした場合、市場全体の中で「お菓子の家に住みたい」人が何%いるかを確認します。その結果、わずか0.001%しかいなかった場合、果たしてこのセグメントは適切なターゲットと言えるでしょうか?このように市場全体にあてはめると、施策の方針やターゲットの妥当性を検証することができます。

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こうして、色々な切り口で仮説を立てて試行錯誤し、時には解釈に齟齬が無いかを定性調査で確認しつつ、関係者全員が理解しやすく、施策に役立てやすいセグメントを作っていきます。
ここでの注意点として、セグメントは「多く作りすぎない」ことが重要です。多種多様な生活者がいるので細かいセグメントが大量に出来てしまいそうですが、現実的には何十個ものセグメントを完璧に覚えておくということが難しいものです。だいたい片手で数えられるセグメント数にとどめておき、覚えやすい名称を付け、経営・マーケティング・プロダクト開発におけるユーザー像の共通認識化を目指します。全員の頭の中に常にセグメントイメージがある状態を目指した方が、結果として部署を跨いだ共通言語化・施策活用に使いやすくなります。せっかくセグメントを作っても、誰も覚えられない・施策検討時に頭の中に生活者像が浮かばないようであれば、セグメントを作る意味が薄れてしまいます。

セグメントをどう施策に活用したら良いか?

ここまで、定量データをもとに生活者を理解するための分析手法例としてターゲットプロファイリングを紹介してきました。
きっちりと生活者理解が出来たら、「どんな知覚刺激」を与えると生活者に響くのか・戦術や施策にどう繋げられるかを考えていきます。ここがマーケターの腕の見せどころですね。
そうは言っても、いきなり戦術や施策を考えるのに悩む人もいるかもしれません。そんな時こそ、前回研修時にお伝えした「フレーム=型」を思考の道しるべとして考えることが近道になります。
ここでは一例として「バリュープロポジションキャンバス」を紹介しました。ターゲットプロファイリングをもとに顧客セグメントを作成・理解し、自社がどんな価値を提供できるかを考えるフレームです。研修時には、ターゲットプロファイリング分析用のデータと、下記テンプレートを用意し、受講者全員で分析と訴求点を考える演習をおこないました。演習では、人によってプロダクト開発の切り口だったり、コミュニケーション方法やクリエイティブ表現だったり、色んなアイディアが出てきます。研修という場で、社内各領域の全マーケターが集まる醍醐味を感じますね。

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以上、定量データから生活者を理解する手法と施策検討方法をお伝えしてきましたが、前半をまとめると下記になります。
研修ではあくまで一例を紹介したに過ぎませんので、ここで身に付けた型をもとに自分の中の引き出しを豊かにして、マーケターとして成長していきましょう。

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HCD (Human Centered Design) とは?

ここからはUXリサーチャーの小川さんに講師をバトンタッチして、HCD(Human Centered Design)や定性調査について語っていただきました。
HCDとは、使う人を中心に・優先的に考えて、企画・設計・開発・デザインをおこなっていこう、というデザインの哲学・考え方です。

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時代を遡ると、当初はサービスを使う人が「普通に使える」ことを重要視していましたが、今では本質的なニーズの追求やサステナビリティも含めた考え方となっています。実際のユーザーひとりひとりに注目して、現状や環境を把握し、開発途中で何度も繰り返し・ユーザーも巻き込みながら検証していく考え方です。

HCDの考え方
1.ユーザーやタスク、環境に対する明確な理解に基づいてデザインする。
2.設計や開発の期間を通してユーザー(の視点)を取り込む。
3.設計は人間中心的な評価によって駆動され、また洗練される。
4.プロセスは反復的である。
5.設計はユーザエクスペリエンスの全体に焦点をあてる。
6.設計チームは多様な専門領域と技能と見方を取り込む。
※ISO9241-210より

前半の研修では、主に定量データからの分析・施策への落とし込みについて述べましたが、ここからHCDを踏まえた定性調査についてお話しします。
定量と定性はお互いに補い合うものなので、量で質を、質で量を代用できるものではありません。それぞれの手法を組み合わせて、生活者をより深く理解することが重要です。
例えば先ほどのバリュープロポジションキャンバスを例に取ると、セグメントがまだざっくりしていて施策アイディアが浮かばない・検討した施策アイディアがユーザーに刺さらないかも、といった悩みも出てくるかと思います。その際は、実在のユーザーに会って、セグメントの解釈にズレがないか、訴求方向性は本当にユーザーに刺さるのか、などを定性調査で明らかにしていきます。

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定性調査の注意点とは?

ここで定性データを読み取る際に、いくつかの注意点があります。
インタビュー調査などで生活者から実際の意見を聴く際に、「ユーザーはこう言っていた」と言葉をそのまま受け取ると危険です。

1 言葉の解釈

たとえ同じ言葉であっても、人によって解釈は如何様にも変わりますし、状況(コンテクスト)は経験・背景によって意味も変わってきます。単語や文章をそのまま切り取るのではなく、発せられた言葉のストーリー全体を深く理解する必要があります。

2 セグメントと個人の捉え方

インタビュー調査を受けてくれた対象者は、そのセグメントの代表ではありません。定性的な調査で得られた情報がその人固有のことなのか、同じセグメントの人にある程度あてはまることなのか、きちんと見極める必要が出てきます。そのためには、市場・セグメント・個人の観点を行き来しながら分析し、同じセグメント条件の人を何人もインタビューしていくことが重要です。

3 目的の明確化

ここは全ての施策や定量調査でも同じことを言えますが、目的や利用用途を考えずに「とりあえずユーザーにインタビューすれば何か分かるだろう」という考えで調査をしても何も得られません。当然、目的によってインタビュー対象者・内容も変わってきますし、結果の利用用途によっては、調査手法・分析手法も変わってきます。

4 ユーザーに答えを期待しない

インタビュー結果をもとに、「ユーザーが●●というサービスが欲しいと言っていたので、それを開発してプロモーションしよう」という考え方では、失敗する可能性が高いです。ユーザーはその分野の素人であり、全体の中で見えているのは一部分だけです。問題の根本でなく、顕在化した氷山の一角について答えてくれたに過ぎません。ユーザーの要求に対して最適解を考えるのは、その分野のプロであるサービス提供側(企業)がやることです。

・誤った考え:ユーザーの意見をそのまま施策やプロダクトに反映しよう。
・正しい考え:欲しいサービスの背景を調べ、根本的な課題を見つけて、その課題を解決するアイディアを考えよう。

施策立案時の注意点とは?「ユーザーについて考える=ユーザー目線」ではない

生活者理解に基づき、ユーザー目線のつもりで考えた施策やプロダクトがいつの間にかサービス目線になっていないでしょうか?
頭のなかで「思ったようにユーザーを動かせた」、「自分たちの企画をユーザーに提供できた」、「今までにない体験を提供できた」などの思考になっている場合は、ユーザーを操るというサービス目線に陥っています。サービス提供側である我々が知っている全てのことをサービス利用者が知っていたとしたら、彼らはそれでも意図された行動を取るだろうか?彼らはそれを後悔するだろうか?という思考を持つことが重要です。例えばユーザーから取得したデータを自社の利益だけに使っていたとしたらサービス利用者はどう思うのでしょう?サービス提供側としての倫理観をもつこと(Don't Be Evil)を忘れてはなりません。

このような注意点を踏まえ、生活者をより深く理解して戦術策定・施策立案やプロダクト開発をおこなうと、サービス利用者だけでなく、企業・組織にとっても大きなメリットとなります。市場・セグメント・個人をよく理解し、組織として・マーケター個人として、市場に求められる存在になっていきましょう。

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研修の反応

以上、第2回目の「LIFULL MARKETING SCHOOL」の内容はいかがでしたでしょうか?
今回の参加者アンケートも好反応で、

【受講者の声を一部抜粋】
・とにかくわかりやすい。専門用語というよりも誰にでもわかる事例やデータでご説明いただき理解しやすかったです。
・定性調査の結果は「セグメントの総意ではない」点や素人の意見であるためそこに注意することを気づけました。
・連続的な業務の延長線上ではなく、立ち止まる。俯瞰する。の視点が改めて肝要であることを認識しました!
・講師のお話は日々の業務の心構えとしてとても刺さる内容でした!
・調査データの分析は今まで我流でやっていたので講師の視点をインプットできてよかったです。とても参考になりました。

などなど、参加者のみなさんが生活者理解・ユーザー視点の考え方を「自分の中の引き出し=型」として覚え、日々の業務に役立てられるものになったと思います。
そして、ここまで読んでいただいた読者の皆様にも、少しでも気付きを与えることができたら、LIFULLに興味を持ってくれたらとても嬉しく思います。ぜひ、今後もフォローいただければ幸いです。

▶︎LIFULL HOME'S MARKETING 公式アカウント
https://note.com/homes_marketing/followings
▶︎LIFULL HOME'S MARKETING マガジン
https://corp.lifull.com/m/md05b38f01ac1

次回は、「LIFULL MARKETING SCHOOL」第3回のテーマとして実施した「データ・ドリブン」についてもご紹介したいと思います。著名な外部講師をお招きして、社内だけでは得られないような知見・経験をふんだんに語っていただきました。
次回の投稿もぜひお楽しみに。


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