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やさしくなれます

2020年のアート活動の幕開けは日本で一番好きな場所と言っても過言ではない三菱一号館美術館で『印象派からその先へ』を鑑賞してきました。

2010年の開館以降、何度足を運んだか数え切れない程、大好きな美術館です。キッカケは敬愛するロートレックの展覧会。こんなにも多くのロートレック作品を所蔵している美術館は国内では珍しく、解説も丁寧なため、作品だけではなく画家の人物像に焦点を当てた鑑賞の面白さを教えてくれた場所です。

「やさしくなれます」って何で?

この展覧会の広告を見た時から気になっていた「やさしくなれます」というコピー。

確かに印象派の作品は柔らかなタッチのものが多いので、キービジュアルのルノワールやドガの少女の絵を象徴したコピーなのかな?と思っていたのですが、実際は予想もしていない優しいストーリーに包まれた展覧会でした。(個人の想像です)

今回はそのストーリーを中心にご紹介します。

19世紀、印象派が絵画に革命を起こす

印象派が登場する前までの絵画のテーマは歴史・宗教・肖像画が中心で写実的な表現が基本でしたが、画家達が戸外での制作活動をするようになり、テーマが風景や農民など一般の人々の日常に移り変わったことで幾つもの表現方法が生まれました。

その活動のうねりが大きくなり、いつしか主流が印象派へと移り変わっていきます。

戸外で活動が出来るようになったのは、チューブ入りの絵の具が開発され、自由に持ち運びが出来る様になった事が大きかったそう。
最近は技術の向上で人々の自由を奪うものもありますが、技術革新はいつの時代も人々の行動の自由を創造してくれますね。

友を助ける術を持ちたい

とある画家の死後、妻子の経済的困窮を心配して、画家仲間がボランティアで展覧会を開き、絵を売ったというエピソードが紹介されていました。

ルノワールもその中のひとり。
実際はこの絵ではありませんが、農村の女性の日常を描いた素晴らしい油絵を出品しています。

写実的で室内制作が中心だった絵画表現の常識を打ち破るかの如く革命的な活動を続けた印象派の画家達。
仲間は理想を語り合い、技術を高め合い、切磋琢磨していたに違いありません。
その中で生まれた深い絆を感じるエピソード。

このエピソードに触れながら、私は友が苦しいとき、悲しい時に助ける術を持っているのだろうか?救うためのアクションを起こせるのだろうか?絵の前で深く考えさせられました。
そして、大したことが出来ないであろうことに愕然としました。
誰かが困っている時に手を差し伸べられる術と行動力を持ちたい!と心から思います。

20世紀、様々な絵画表現が花開く

怒涛の世紀末から20世紀に入ると激しい色使い野獣派(フォービスム)、ピカソをはじめとする前衛芸術、古き良きを残しながら夢のような世界を描くエコール・ド・パリなど次々に新しい作風が生まれています。

絵画はこうあるべきというルールや固定概念から解放され、自由を手に入れたアーティスト達の才能が爆発したのだと思います。

イノベーションの第一歩は自由であること。
時代、しがらみ、しきたり、規則、文化、伝統…
生い立ち、性別、学歴、役職…
何か新しい事を生み出したいのなら、私たちを縛るルールや変えられないと思い込んでいる事を無視してみる。頭の中だけでも自由にしてみることからスタートするべきですね。

Love is like the wind, you can't see it but you can feel it.

展覧会のクライマックスは10点から成るマルクシャガールの作品群。

妻ベラを深く愛し、多くの作品に妻を描き込んだ「愛の画家」としても有名ですが、第二次世界大戦の最中、ロシアからアメリカに亡命した直後に妻は突然亡くなってしまいます。

作品の中には妻と幸せな日々を過ごしている時のものや、自分とは別世界にいる事を自分自身に納得させるかの様に別世界にいる妻を表現したもの、晩年に描いた大作など、多くの印象的な作品が並びますが、どの絵も夢と愛が詰まって、やさしく穏やかな気持ちになります。

見出しに書いた文章はニコラス・スパークス著「A walk to remember」に出てくる台詞です。
この物語の主人公が妻を亡くした後にこの様に語るのですが、不思議とシャガールの描く世界とリンクします。

おまけ🤍この作品にも注目

三菱一号館美術館はロートレック作品の他、近代美術の所蔵作品も素晴らしく、中でもルドンのグランブーケは一見の価値あり。一輪一輪の花が意思を持っているみたいに個性的。なのに花瓶の中で見事に調和する大作です。

所蔵作品は常設ではないため、毎回の展覧会で鑑賞する事は出来ませんが、今回の展覧会ではグランブーケが展示されていました。

世紀末〜新しい時代の幕開けを絵画の歴史で振り返るこの展覧会は2020年、令和、オリンピックなど新しい時代や節目を感じる今とリンクしているように感じます。そして、さやしさに包まれています。

2020年をやさしい気持ちで迎えることができてよかった♡

今年も自由気ままにアート×ウエディング情報を発信していきます。
よろしくお願いします。

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