星野源「Soul」に顕れる2つの神話
※画像出典:公式ウェブサイトのブログ
アルバム『YELLOW DANCER』に収録されている「soul」の歌詞の意味を調べてみました。
きっかけは2019年踊り初めで受けてきた かわばたみづきさんのレッスンでした。
振付がこの曲だったのだけれど、 音がぽろぽろ光ってたー涙が出そうなくらいすてきだったので動画アップされたら貼付けさせてください。
(追記:動画アップされていたので貼付、ぜひ見てほしいです)
そしてエンドレスリピートの今日。歌詞と音を知りたいと思って調べて考えたことを書いておきます。
1:星野源がこの曲について語っている言葉
この曲について源さんの言葉として見つかったのは以下の2つ。
a:All Night Nippon(2016年4月4日放送分)
アルバム5曲目「Soul」でございます。...この曲はですね...後半バスドラムが ドドドドドーッともの凄いいきおいで鳴り始めるところがあるんですけれど。そこをとにかくやりたくって...そしてタイトなドラムとストリングスだけで聴かせるような曲を作ってみたいなと思いまして作りました。歌詞はあまり意味のない歌詞のつもり。これも口が気持ち良い言葉を並べました。でもね、なんとなーく意味が出てきちゃって。なんか...地球がはじまったとき。なんか...心が生まれた瞬間、みたいな。なんとなくそんな歌詞になってしまいました。
b:出典不明
沖縄のピカピカと光る夕焼けを見ながら曲を書きました。
なんにせよ、心が大事だなと最近よく思います。
NAVERまとめ「星野源アルバム「YELLOW DANCER」曲解説」
ちなみにアルバムについてのリリース時の本人コメントはこちら。
『YELLOW DANCER』完成です。久しぶりのアルバム制作、楽しみながら好き放題にやらせていただきました。
2011年にリリースした1stシングルのカップリング曲「湯気」から、コツコツと進めていた「自分の趣味である(ソウルやジャズ、R&Bやジャンプブルースなどの)ブラックミュージックと、己の音楽性の融合」を、全面的に追及したアルバムになりました。ブラックへの憧れと共に、日本情緒あふれるポップスを目指した結果、「イエローミュージック」と呼べそうな楽曲たちが生まれました。体だけでなく、心も躍るようなアルバムができたと思います。
初回限定盤では初めてBlu-rayを特典にできることも嬉しく、ツアーも発表になり、様々な角度からワクワクしています。
たくさんの人に聴いて欲しいです。星野源4thアルバム、『YELLOW DANCER』をよろしくお願いします!
オフィシャルサイトより
作詞者自身が「歌詞にはあまり意味がないつもりで...」と言っているので、詞について解釈をしようとするのはナンセンスかもと思いつつ、それでも源さんの"意味がない"は私にとっては 十分に有意 だと思うので、以下個人の解釈を書いてみます。
2:Aメロに視える日本昔ながらの風景と神話
Aメロの歌詞はこちら。
海を見た日の 神は幼い
寄せるわ そう 波の味
浮かぶ枯葉 如月 夕陽の向かい
兎が そう 跳ねるだけ
画像出典: 「この世界の片隅に キャラファインボード」
これを見ていたときに連想したのは
ひとつは『この世界の片隅に』ですずさんが描いたような波うさぎであり、時化る日本海なのでした。
なぜ日本海かというと、「枯葉」「如月(2月)」のキーワードがあるけれど、主観的には 夏の海と言えば太平洋、冬の海と言えば日本海がきれいだと思うから。
もうひとつは古事記の神話のひとつである『因幡の白兎(いなばのしろうさぎ)』。
小さい頃おばあちゃんが話してくれて。毛をむしられたからだで海水を浴びてしまう可哀そうな兎の画ばかり記憶に残っていたのだけれど調べ直したら、大国主神とか八十神とか神さまたちのお話(出典:Wikipedia「因幡の白兎」)
なぜ「幼い」と言っているのかは分からないのだけれど。この形容詞はBメロでも出てくるから何かしら意図があるとは思うのだけれど。
3:Bメロに顕れる創世記的世界観
そして続くBメロがこちら。
君を見た日の恋は幼い
日向に そう 咲くように
浮かぶ言葉 誘い 林檎の誓い
木陰に そう 座るだけ
言葉に ならない Soul
名もなき 記憶に 見える 見える
道外れ 逸れた者
身体に 刻んだ 時を 越えて
出典:Google Arts&Culture
Lucas Cranach der Ältere "Adam and Eve in paradise"
こちらはもう自明だけれど、ANNで「なんか...地球がはじまったときとか...」と話していることから紛れなくキリスト教の創世記の話。楽園で蛇がアダムとエバの下にやってきて言葉巧みに知恵の実(林檎の説が最有力)を食べるよう誘うのです。そして2人は神様との誓いを破って "道外れ 逸れた者" となってしまったのでした。
こんな感じですが。最後に主観的な意見を。とてもとてもすきだなーと思ったのは星野源さんがこの歌詞は地球がはじまった時であると同時に
心が生まれた瞬間
と言っていたこと。知恵の実を食べるということは人が神に背くことでありつまり地上で初めて罪が犯された瞬間だったのです。けれどもそれを源さんは、此処から、心が、誕生したと言った。
そうなのです、人生は辛いし、こころの中は綺麗なものばかりじゃない。でも全てをひっくるめてこそを 心 として肯定する思想はポストモダン的だし、何よりとても前向きなメッセージだと思うのです。
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