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火花 又吉直樹


こんばんは、まっすーです。

最近、お笑いピースの又吉が書いた「火花」を読みました。
この本は、お笑いを目指す主人公の僕と先輩の物語です。

この本を読んで気づいたのですが、
お笑いを題材とした小説って意外と少ないんですねー。
落語家を目指す本はよく見かけますが、
お笑いの小説には初めて出会いました。
又吉はニッチな職業と才能(職業がお笑いかつ文才がある)を生かして、
他の人には表現できないお笑いの空気感を
見事に文章で表現したのだと思います。
その視点と文章の斬新さが、クセになり、、、

なんと3回も読んでしまいました!

今日はそんな「火花」の本を紹介していきます。


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『火花』
発行所 文藝春秋
2017.2.10  第1刷
2020.6.15  第9刷
著者:又吉直樹
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【感想】

本を開くと、まず最初に音が入ってくる。
視線のアングルは足元だ。

「大地を震わす和太鼓の律動に、、沿道は、、
 浴衣姿の男女や家族連れの草履に
 踏ませながら賑わっている」

そこからベニヤ板が見え、舞台が見え、
主人公の僕が相方と漫才を披露している。

足元から、主人公にアングルを寄せるなんて、
なんと斬新な発想だろう。
私はすぐ話に引き込まれていった。



主人公の僕は、誰も聞いていない中、
漫才をしなければならない状態にたたされていた。
やるせない思いで漫才をしていると、

後ろから花火が上がった。

「幻のように鮮やかな花火が
 夜空一面に咲いて、
 残滓を煌めかせながら時間をかけて消えた」

「今度は巨大な柳のような花火が暗闇に垂れ、
 細かい無数の火花が捻れながら、
 夜を灯し海に落ちて行く。。」

文章を読んでいるだけなのに、情景がありありと浮かびあがる。

(残滓を煌めかせる、火花が捻れながら)

こんな単語の組み合わせがあるとは!

そこには花火を表現するのに1番ふさわしいと思える文章が記されていた。


主人公の僕は、面白くありたいと思っているが、自分の言動が誤解されないか、他人の目を気にする節があった。
一方、先輩の神谷さんは、面白いことを純粋に追求し、それが暴力的であれ、気にせずやり遂げてしまうところがある。
そんな自由奔放で純粋な笑いを求める神谷さんに憧れ、僕は弟子入りするのだった。

それから、それから?

僕と神谷さんとの過ごす時間を目で追っていたら
あっという間に完読してしまった。
彼らの生き様にアホらしさを感じ、不安を感じ、敬意を感じ、涙する場面もあった。



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この本を読んで、
お笑いを目指す人間の思考を垣間見た気がする。
例えば次のような思考だ。

《お笑い芸人の思考》
・いつでも面白いネタを探し、自虐ネタが増えると喜ぶ。
・普段の会話の中でもあそこは相手がボケたのにスルーしてもうた。つっこみ忘れた!などと反省をする。
・お笑いで売れないものは発言権がないと思い込み勝手に遠慮する。
・本気で面白いと思った笑いに対してしらける恐怖を感じている。
・お客さんが笑ってくれる喜びが、とてつもない原動力になる。

お笑い芸人にとっては当たり前の思考かもしれないが、私にとっては新鮮だった。
「笑い」に対する熱意がないと
日常でこれほどまでに「笑い」に真摯に向き合うことはできないと思った。



また、笑いのバランスをとる難しさも知った。
面白いものを純粋にぶつけると、その型破りな発想や仕草によって新鮮な笑いは起きる。
しかし、時と場合によっては、
その発言が誤解を招き、誰かを傷つけてしまうこともある。
かと言って無難な笑いばかりだとお客さんは飽きてしまうわけで、、
この微妙なバランスを見極めてネタをつくっていることに気づき、
努力と苦労の絶えない職業だと感じた。



こうしたお笑い芸人たちの
努力と苦労と熱意によって、
私はいつも腹がよじれるほど笑わせてもらっていたのだ。



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最後に、
この本で1番印象に残ったのは、

「これが人間やで」

という神谷さんの言葉である。


この本を読み終えた時、
お笑い芸人に温かな拍手を贈りたくなる。


この本はきっと「お笑い芸人の視点を変えてくれる」本だ。



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PS,又吉さんへ

あとがきの「芥川龍之介への手紙」を読みました。先生から「又吉君は移動教室の時、よく電気を消してくれます」と言われ落ち込んだようですが、先生はきっと「小さなことにも気づくことができる長所」を伝えたかったのだと思います。
又吉さんは、電気を消してくれる都合のいい人間ではなく、隙間の仕事に気づけるすごい人なのです。
私は、あなたの視点の気づきから、お笑いを目指す芸人の生き様を知ることができました。
あなたの気づきから書き上げられたこの作品は
純粋なお笑いファンを増やすことでしょう。

お伝えしたいことは以上です。
寒くなってきたので、
どうぞ身体にはお気をつけて。 


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