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北大の先生が選んだ本(30)今こそ、戦争を考える(相庭達也先生)

三省堂書店札幌店様とのコラボレーションコーナー「北大の先生が選んだ本」が現在展開中です。テーマは「今こそ、戦争を考える」、選者は北海道大学大学院文学研究院専門研究員の相庭達也先生です。本記事では、三省堂書店札幌店様にて配布中の選書リストを公開します。みなさまぜひ足をお運びください!
★三省堂書店札幌店様の紹介ページ:
「北大の先生が選んだ本」第30弾更新しました! | 三省堂書店 (books-sanseido.co.jp)
*「品切れ」などの在庫状況は2024年7月現在の情報です。

■選者紹介

相庭達也(あいにわ たつや)
北海道大学大学院文学研究院専門研究員
【専門】日本近代史

■選者の著作

相庭達也著『明治期北海道の兵士たち:徴兵・戦没・慰霊』北海道大学出版会、2024年


明治期北海道の人々はどのように徴兵され戦没し慰霊されたのか。屯田兵と第七師団の動向を中心に、「移民社会」北海道での郷土部隊の成立過程とその東アジア史における役割を、合祀名簿や遺品の手帳などの多様な史料から解明する。
定価: 7,700 円(本体価格7,000 円+税)
ISBN : 978-4-8329-6897-4

明治期北海道の兵士たち ― 徴兵・戦没・慰霊 | 北海道大学出版会 (hup.gr.jp)

■選書リスト

01 島木慈子著『戦争で死ぬ、ということ』岩波書店(岩波新書)、2006年【品切】

「戦争で死ぬ」ということの意味について、真摯に考察した書籍です。その結論の一つとして、戦争とは「正当化される大量殺人」
と筆者は記しています。ウクライナやパレスチナでの戦闘など、現在の世界情勢の中で、戦争とは何かについて、改めて考えさせる1冊です。
定価: 858 円(本体価格780 円+税)
ISBN : 978-4-00-431026-6

02 吉田裕著『日本軍兵士: アジア・太平洋戦争の現実』中央公論新社(中公新書)、2017年

アジア・太平洋戦争で日本軍兵士が直面した戦争の実態と、軍隊の姿勢を明らかにした本です。数年前にベストセラーになりました。特に知的障害を持つ兵士や「戦争神経症」についての記述は目を引きます。さらに日本軍の異質な軍事思想とその根本的欠陥を指摘しています。日本軍兵士と日本軍の実際を知ることができる一冊です。
定価: 902 円(本体価格820 円+税)
ISBN : 978-4-12-102465-7

03藤原彰著『餓死した英霊たち』

ガダルカナル島は「餓島」と呼ばれます。戦歿した兵士の大多数が餓死であったためです。多くの兵士が餓死したのは、この島だけではありません。本書によれば、各地の戦場における餓死者は、第2次大戦で戦歿した日本軍兵士の60%強とされています。その原因を解明し、戦時下の軍隊の根本的性格とその姿勢を明確に理解し、戦争の本質を知るための書物です。
【青木書店】2001 年/品切
定価: 2,750 円(本体価格2500 円+税)
ISBN : 978-4-250-20115-8
【筑摩書房(ちくま学芸文庫)】2018 年
定価: 1,210 円(本体価格1100 円+税)
ISBN : 978-4-480-09875-7

04 大岡昇平著『野火 改版』新潮社(新
潮文庫)、2014年

フィリピン戦線で結核に罹った一兵士が主人公です。彼は野戦病院から見放され、原隊からも追放されます。あらゆるものを口にし、飢えと闘いながらレイテ島を彷徨います。その時彼は、日本兵の死体を目にします。自身の体験から『俘虜記』を著した大岡昇平が、
戦場における一兵士の心情を、見事に描いた作品です。
定価: 605 円(本体価格550 円+税)
ISBN : 978-4-10-106503-8

05 半藤一利著『ノモンハンの夏』文藝春秋社(文春文庫)、2001年

1939 年、日中戦争が泥沼化する中で、背後に同盟国ドイツがあることを期し日本はソ連との戦争を開始します。それがノモンハン事件です。ハルハ河渡河時の戦闘では、ソ連の戦車群に対して日本軍歩兵は歩兵銃と「三ツ矢サイダー」の瓶で白兵戦を挑みます。死傷者率は68%を超えており、世界史上でも類を見ないものです。日ソ両軍の激戦がよく理解できる1冊です。
定価: 858 円(本体価格780 円+税)
ISBN : 978-4-16-748310-4

06 日本戦没学生記念会編『新版 きけ わだつみのこえ: 日本戦没学生の手記』岩波書店(岩波文庫)、1995年

1943 年10 月、徴兵猶予とされていた大学、高等学校、専門学校の学生が、徴兵対象となり数多の学生たちが戦地に送られました。
学徒出陣です。彼らを中心に戦歿した学生個々の遺書や手記を纏めたのが本書です。志半ばで応召し戦歿していった若者の様々な想いが実感できます。
定価: 1,320 円(本体価格1,200 円+税)
ISBN : 978-4-00-331571-2

07 謝花直美著『証言 沖縄「集団自決」:慶良間諸島で何が起きたか』岩波書店(岩波新書)、2008年 【品切】

「遺体が転がり、手や足が吹き飛ばされ人の悲鳴や泣き声が響き、(中略) 手榴弾で死に切れなかった人々は、(中略) 鎌やなたを使って、子どもや女性、家族の中の弱い立場の者から切りつけ始めていた」。特に戦闘能力を失って以降、日本軍は島民に手榴弾を渡
します。そして、集団自決が行われました。
定価: 836 円(本体価格760 円+税)
ISBN : 978-4-00-431114-0

08 一ノ瀬俊也著『故郷はなぜ兵士を殺したか』角川学芸出版(角川選書)、2010年 【品切】

故郷が兵士を「殺す」のは、何故でしょうか。そもそも兵士にとって故郷とは生まれ育ち、「兎追いし」場所です。戦争とは、その故郷をも「戦場」とするものであったといえるでしょう。戦争が、地域社会を変容させる過程が、見事に描かれた1冊です。
定価: 1,980 円(本体価格1,800 円+税)
ISBN : 978-4-04-703472-3

09 日本中国友好協会編/笠原十九司概説・監修『日本は中国でなにをしたのか: 侵略と加害の歴史(日中友好ブックレット3)』本の泉社、2018年

日中戦争研究の第1人者である笠原十九司氏が監修した一冊です。日中戦争で日本軍は、何を行ったのか。「慰安婦」、「南京事件」、「731部隊」等々。それらを一冊のブックレットとしてコンパクトに纏めたものが本書です。いわば日中戦争を理解するための入門書といえるでしょう。
定価: 660 円(本体価格600 円+税)
ISBN : 978-4-7807-1913-0

10 田中仁著『ボクらの村にも戦争があった: 学校日誌でみる昭和の戦争時代』文理閣、2012年 【品切】

小中学校に残る学校日誌から、学校が軍国化していく過程を描いたものです。校長からの「至誠ヲ以テ臣民ノ道ヲ完フセヨ」との訓示に、児童は「私タチハ力一ッパイ皇国ニツクシマス」との決意を述べます。子どもたちを「小国民」とし、やがて兵士として彼らを戦場に送り込むシステムが確立し、学校が軍国化していく様子がよく分かります。
定価: 2,640 円(本体価格2,400 円+税)
ISBN : 978-4-89259-688-9

11 加藤陽子著『それでも日本人は「戦争」を選んだ』

東大大学院教授の著者が、高校生に行った授業の講義録です。日清戦争から太平洋戦争までが分かりやすく書かれています。特に各戦争が「何故起きたのか」について、詳細に述べられています。また、受講した高校生に「自分が作戦計画の立案者であったならば」といったことを主体的に考えさせることに主眼を置いたものです。戦争について考えることができる一冊です。
【朝日出版社】2009 年
定価: 1,870 円(本体価格1,700 円+税)
ISBN : 978-4-255-00485-3
【新潮社(新潮文庫)】2016 年
定価: 990 円(本体価格900 円+税)
ISBN : 978-4-10-120496-3

12 佐藤忠男著『草の根の軍国主義』平凡社、2007年 【品切】

著者自身が軍国主義化するまでの過程を描いた本です。小学校からの皇国教育を受け、戦争を「是」とする映画を見、「爆弾三勇士」の行動に愛国心を抱く著者。普通の無垢な少年を「軍国主義者」へと変貌させた当時の社会状況が、鮮明に描かれている作品です。
定価: 1,760 円(本体価格1,600 円+税)
ISBN : 978-4-582-45435-2

13 纐纈厚著『私たちの戦争責任: 「昭和」初期二〇年と「平成」期二〇年の歴史的考察』凱風社、2009年 【品切】

真摯に歴史的経過を研究し、その成果を元に戦争責任を問うたものです。帯紙には「過去の戦争には責任はなくとも 明日の戦争には責任がある」と記されています。現在の極めて不安定な国際情と、「きな臭い」国内の政治状況の中で、平和であり続けるために、お読みいただきたい一冊です。
定価: 1,980 円(本体価格1,800 円+税)
ISBN : 978-4-7736-3307-8

14 中尾知代著『戦争トラウマ記憶のオーラルヒストリー: 第二次大戦連合軍元捕虜とその家族』日本評論社、2022年

戦場での兵士たちは、友軍兵士の死を目にし、欠損した死体を目撃します。一方で殺した敵兵への想いが心に刻まれることでしょう。
それが心に傷を残しトラウマとなり、その後の生活に大きな影響を与えることになります。そういった精神状況を当事者への聞き取りに基づいて書かれたのが本書です。
定価: 3,740 円(本体価格3,400 円+税)
ISBN : 978-4-535-58748-9

15 武井彩佳著『歴史修正主義: ヒトラー賛美、ホロコースト否定論から法規制まで』中央公論新社(中公新書)、2021年

歴史学は先行研究を批判修正し、新たに歴史事象を復元する学問です。本書の「歴史修正主義」とは、それとは全く異なったものです。特定の価値観で歴史的事象を評価するものです。日本史でも同様の動きが近年活発化しています。歴史修正主義の存在と社会的役割について認識する必要があるでしょう。
定価: 924 円(本体価格840 円+税)
ISBN : 978-4-12-102664-4

16 山崎雅弘著『日本会議: 戦前回帰への情念』集英社(集英社新書)、2016年

「日本会議」という組織があります。本書によれば2015 年の内閣では79%の閣僚が、さらに300 人の国会議員が会員とされ、全
国会議員の42%になります。副題は「戦前回帰への情念」とされています。意見の分かれる論点ですが、現在の政治動向に強い影響力を持っていることは事実です。しっかりと認識しておく必要があるでしょう。
定価: 836 円(本体価格760 円+税)
ISBN : 978-4-08-720842-9

17 姜尚中著『愛国の作法』朝日新聞社(朝日新書)、2006 年 【品切】

愛国心とはなんでしょうか。愛すべき「国」とは、国民・郷土・国家など様々なものを含みます。仮に国家とした場合は統治権力をも意味します。「愛する」ということも、愛おしさ・敬愛・溺愛など多様な心情です。であるならば、国家(統治権力) を溺愛することも愛国心といえます。それは自国の権力に対して無批判的に、その政策等々を受容することに他なりません。その点に警鐘を鳴らした1冊です。
定価: 770 円(本体価格700 円+税)
ISBN : 978-4-02-273101-2

18 髙橋源一郎著『ぼくらの戦争なんだぜ』
朝日新聞社(朝日新書)、2022年

最近、戦争を疑似体験するようなゲームが流行しています。いわゆるゲームソフトや、サバイバル体験的にレイザー銃を持ち、実際に相手に向けて射撃するものあります。作家である著者が、教科書の記述、多くの詩歌、多様な小説の記述を駆使し、戦争の実
態を表現しました。その目的を「『彼らの戦争』ではなく『ぼくらの戦争』にふれるために」としています。
定価: 1,320 円(本体価格1,200 円+税)
ISBN : 978-4-02-295157-1

19 斎藤貴男著『安心のファシズム: 支配されたがる人びと』岩波書店(岩波新書)、2004年 【品切】

ファシズムとは決して過去のものではありませ
ん。民主国家下で成立し得る政治体制といえます。その原動力になるものは、何でしょうか。本書では「携帯電話」の危険性を指摘しつつ、「自由でないことの『幸福』」について触れています。今後この世界がファシズム化することを避けるために必読の1冊です。
定価: 902 円(本体価格820 円+税)
ISBN : 978-4-00-430897-3

20 高柳先男著『戦争を知るための平和学入門』筑摩書房、2000年 【品切】

平和学という学問があります。既に多くの人々が研究を行い、国内の大学でも講座が開設されています。この平和学を日本に導入した
先駆的研究者の一人が本書の著者です。入門書ですが、実は著者の遺作です。心の中だけで戦争を否定し、平和を望むだけでなく、実際に平和を維持するために、何をすべきか。是非、お読みいただきたい一冊です。
定価: 1,320 円(本体価格1,200 円+税)
ISBN : 978-4-480-04238-5

21 根本橘夫『〈心配性〉の心理学』講談社(講談社現代新書)、1996年【品切】

本書によると、青年期の65%の人たちが「自分は心配性」と捉えているそうです。無論、青年期以外でも日常生活の中で「不安」を
抱きながら、「心配」を感じている人が多いのでしょう。教育心理学者である著者が、心配や不安を抱くメカニズムを明解に説明しています。その上で、終章(第5章) では、そういった感情との「つきあい方」が述べられています。変化の大きい現代社会の中で、お読みいただきたい書物です。
定価: 748 円(本体価格680 円+税)
ISBN : 978-4-06-149297-4

22 諸富祥彦著『「本当の大人」になるための心理学: 心理療法家が説く心の成熟』集英社(集英社新書)、2017年

激変する現代社会の中、40 代や50 代で不満や不安、また焦りを感じている方々が数多くいらっしゃるのでしょう。著者はこの年代以
降を「人生の午後」と評します。その「午後」をどの様に過ごしたら良いのか。研究者で実際のカウンセラーでもある著者が、身近な話題から、平易な表現で具体的な指針を示しています。人生の「コーナー」に立ち、今後の人生を「成熟」したものにするために、是非お読みいただきたい1冊です。
定価: 902 円(本体価格820 円+税)
ISBN : 978-4-08-721001-9

23 平木典子著『自己カウンセリングとアサーションのすすめ』金子書房、2000年

アサーションとは、相手の意見や気持ちを大切にしながら、しっかりと自分の意見や考えを表現することといえるでしょう。良好なコミュニケーションを構築する上で、とても大切なことです。そのためには、先ず自分自身を「知り」、さらに自身を「育てる」ことを著者は提案しています。多様な価値観が存在し、他者との付き合いが極めて難しい状況で、コミュニケーションに関心のある方に、お勧めの本です。
定価: 1,650 円(本体価格1,500 円+税)
ISBN : 978-4-7608-2586-8

24 ヨースタイン・ゴルデル著/須田朗監修・池田香代子訳『ソフィーの世界: 哲学者からの不思議な手紙』NHK 出版

14 歳の少女ソフィーに切手の張っていない、差し出し人も「クローバー通り三番地」と記されただけの手紙が届きます。その手紙に
は「あなたは誰」としか書かれていません。そんな奇妙な関係の中で、送られてくる手紙を通して、ソフィーは一生懸命に考えながら
「哲学」を学んでいきます。少女に送られてくる平易な手紙から、様々な哲学者の思想を知り、考えることができる貴重な作品です。
【単行本】1995 年
定価: 2,670 円(本体価格2,427 円+税)
ISBN : 978-4-14-080223-6
【新装版(文庫)】2011 年
〈上巻〉定価: 1,100 円(本体価格1000 円+税)
ISBN : 978-4-14-081478-9
〈下巻〉定価: 1,100 円(本体価格1000 円+税)
ISBN : 978-4-14-081479-6