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「送料と手数料」(本屋は何と闘っているのか)

hoka booksの嶋田です。仕入れの日々が続いています。

本屋さんといえば、ゆったりした場所で、のんびりしたムードがあって、夢が詰まった場所に思えます。小さな本屋を開業とくれば、なんだかおおらかな日々が待っていそうな気がします。

けれど調べれば調べるほど、夢の本屋に近づこうとすれば近づこうとするほど、この仕事は、のんびりしたものではないなということがわかってきます。

「なんだ、そんなこと当たり前じゃないか」と言われるとそれまでなんですが、本屋の苦労について、「本屋は何と闘っているのか」として、ひとつの問題を取り上げます。

今回取り上げたいのは「送料と手数料」の問題です。本屋とお客さんとの間でのやり取りではなく、
本屋へ本を納品してくれる版元(出版社)や取次(卸し)と、本屋との仕入れのやり取りの話です(どんな商売でも送料と手数料の問題は生じるとは思いますが)。

例えば定価1000円の本があるとします。その仕入れ値が70%の金額だとします。そうすると、1000円-700円で、300円儲かります。比較的安価なクリックポストで送れたとしても198円の送料がかかります。振り込み手数料が100円だとすると、合計298円かかることになり、儲けは全くありません。

一冊での話を例にしましたが、実際にはどうやって儲けを出すのかというと、「まとめて仕入れる」「まとめて支払う」ことによって、利益を出していきます。

取次に一括して頼めば、ある程度まとまったダンボールで送られてくるので一冊あたりの実質送料が下がります。手数料も同じく、ひとつの振り込み先であれば安価に抑えられます。

じゃあ同じところからたくさん仕入れると問題解決かといえば、そう簡単でもありません。たくさん仕入れるということは在庫をたくさん抱えることになりますし、たくさんの本を買い切りで仕入れると即座に高額支払いが必要になります。委託(売れなければ返品)しようとすれば管理が煩雑になったり、保証金が必要になったり、仕入れ値の掛け率が高くなります。新刊書は価格が固定なので、自分たちの規模やスタイルにあった価格設定をすることもできません。
「同じところからたくさん仕入れる」、自分が売れると信じた本をリスクを負いつつ、売れると信じた部数で仕入れる。そして売りきる。すごい大変なことのようですが、そこまでできて、ようやくスタート地点なのかもしれません。

細かな工夫でいえば、たくさんの銀行口座を持って、支払先と同じ銀行を使えば手数料は下がるかもしれません。注文や新刊も含めて、まとまった部数になったら送付してもらうようにすれば送料も最適化できるかもしれません。
直取引(取次を経由しない)の場合は、送料や手数料はある程度割り切りつつ、条件をよく読みながら、最適な部数と取引方法を選ぶことになります。ひとり出版社としても僕は動いていてどちらの立場も経験しているので、出版社に有利な条件が出されているばっかりでもないと感じています。なので、どこまでの条件であれば自分が損をしないのかお互いに納得するラインを見つけて取引することになるでしょう。どちらが得をするかの綱引きはしたくないですね。

選書の目利きと、小さな工夫で、なんとか営業を続けていけるのが本屋なのかもしれません。

それでも、僕はやってみたいです。本屋さんはみんな想いをもって、営業されているのだなと想像すると、たくさんの面白い本屋さんがあるのはありがたいことだなと改めて実感します。

次に更新するときには「同じ本を何冊、何回、仕入れるか」についても考えてみたいと思います。

今回僕が書いたことは、とくに中規模以下の書店では何度も議論されてきたことだと思いますし、当たり前の話のはずです。出版社と平行しながら、初めて本屋をやろうとしているから感じた最初のハードルのひとつだと思ってもらえればと思います。

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