ドキュメンタリー映画『越境の花嫁』(2014年、イタリア/パレスチナ合作)

短縮バージョンを一見してあまりにも気に入ってしまったので、ウェブ上で公開されている資料に基づいてコピーを勝手に書いてしまった。日本再上映を希望!

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 陽気な結婚式一行を装って、イタリアからスウェーデンへ。

 目的は、亡命。

 2013年10月、イタリア人ジャーナリストのガブリエーレ・デル・グランデは、シリア人編集者とシリア人翻訳者のふたりとミラノ駅で落ち合った。コーヒーを飲みに行こうとして歩きかけたとき、アラブ語の会話を聞きつけた若いパレスチナ人男性から声をかけられた。聞けば、スウェーデン行の電車は何番線から発つのか教えてもらいたいという。難民なのだ。あいにくミラノからそんな電車は出ていないと答える代わりに、デル・グランデは彼をコーヒーに誘った。

 「そうだ、結婚式はどうだろう」

 最初は突飛な思い付きだった。

 しかしそれはデル・グランデ自身の体験に根差していた。ちょうど一カ月前、彼はシリアのアレッポの戦火から逃げ延びた。激しい銃撃戦が目前に迫る夜、みなが避難していた隠れ家に、シリア人の少年がウェディング・ドレスを手に持って現れた。みながあっけにとられているなかで、少年はそれを千々に引き裂いてデル・グランデたちに配り、それぞれ頭に巻くように指示したあと、みなを先導して走り出した。みなが闇の中を撃たれずに無事に走り抜けることができたのは、白い布を頭に巻いている者はシリア自由解放軍の味方だということになっていたからだ。デル・グランデはその布をイタリアに持ち帰り、大切にとっておいた。

「ウェディング・ドレスが使えないか」

 さらに他のシリア人難民2組と知り合ううちに、思い付きはアイディアに変わってきた。花嫁を連れている男に、その親族に、いったい誰がパスポートを出せというだろう? デル・グランデは古くからの信頼できる友人たちに声をかけた。花嫁役を引き受けてくれたアクティビスト、そして仲間のジャーナリスト、ライター、研究者、料理人、映画監督、カメラマン……大勢の同行者を連れて、新郎新婦とその親族に扮装したシリアとパレスチナからの難民が、ミラノからマルセイユ、ボーフム、コペンハーゲンを経て、ストックホルムを目指す。

 ドキュメンタリー映画『越境の花嫁』(伊題: Io sto con la sposa、英題: On the Bride's Side 2014年、イタリア/パレスチナ合作、89分、イタリア語、アラブ語、英語) 。

 現在、47分の短縮バージョン(英語字幕付き)をアルジャジーラのサイトで視聴できる。

参照: Io sto con la sposa オフィシャルサイト(イタリア語・英語・アラブ語)

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