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宮城・高蔵寺①―灼熱の阿弥陀ロードの先に見たリアル浄土(回想2015前編)|訪仏帳_#3

仏像note「訪仏線」と名乗り、主要記事として「訪仏帳」という仏像拝観記を書くべく始めた当noteだが、「あの時ははるばる仏、訪ねたなぁ」と、苦労してたどり着いた実感と目にした光景・仏像の素晴らしさに真っ先に思い出す体験がある。
ちょうど5年前の今頃に訪ねた、宮城県角田市・高蔵寺(こうぞうじ)だ。

長くなるので、前・後二編に分ける。


阿弥陀ロード〜第一章「18きっぷ(?)で乗り鉄の旅」


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いきなり18きっぷで乗れないはずの新幹線の写真なのは、道中こんなことがあったからだ。

この時の仏旅は宮城・岩手・福島の東北2泊3日。
だが実は、夜は某女性アイドルグループの「真夏の全国ツアー2015」(モロバレ笑)仙台公演2days参戦も兼ね、それを18きっぷで巡る計画だった。

その最初の目的地が高蔵寺で、都内からこのような乗り継ぎを考えていた。

池袋 5:12発
|  埼京線大宮行
赤羽 5:22着/5:57発
|  宇都宮線宇都宮行
宇都宮 7:29着/7:37発
|  宇都宮線黒磯行
黒磯 8:28着/8:39発
|  東北本線郡山行
郡山 9:58着/10:08発
|  東北本線福島行
福島 10:54着/11:00発
|  仙台シティラビット3号仙台行
白石 11:32着

※ダイヤは当時のもの

…のはずだった。

だが、赤羽でうっかり一本前の高崎行に乗ってしまい、音楽を聴いたり、SNSに夢中になっていたせいで、恐ろしいことに終点に着いて初めて気がついたのだ。
さすがにその時は一瞬わけがわからず、頭が真っ白になったが、そこから必死に挽回する方法を考えた。
夜はライブもあるし、高蔵寺は予約拝観だから、どうしても間に合わないといけない。

幸い、新幹線を使えばどうにかなることがわかり、実際は赤羽からは以下のルートをたどることになった。

赤羽 5:54発
|  高崎線高崎行
高崎 7:28着/8:05発
|  両毛線小山行
小山 9:49着/9:58発
|  東北新幹線なすの255号(E5系)郡山行
郡山 10:53着/11:20発
|  東北新幹線やまびこ133号仙台行
白石蔵王 11:49着

※ダイヤは当時のもの

結果的には乗り換えは1回減って、予定より17分遅れで済んだが、18きっぷのケチケチ旅のつもりが新幹線代で7,470円余計にかかってしまった(笑)。

在来線の白石駅と新幹線の白石蔵王駅は離れているが、むしろ白石蔵王の方がほんの少しだけ高蔵寺には近い。

しかし、ここからが本当の試練だった。


阿弥陀ロード〜第二章「灼熱のツーリング」


ここから高蔵寺までは約10km。
歩いて行ける距離ではないし、バスもない。
だが当初予定の白石駅にも結局下車した白石蔵王駅にもレンタサイクルがあり、双方で乗り捨ても可能だった。

さっそく手続きをして出発。
真夏の真昼間の炎天下。
水分や塩分補給など熱中症対策はしてきたつもりだったが、いやいや想像を超える過酷さだった。
多分地元や土地勘のある人なら、あきれてしまうだろう。

本当は高蔵寺へは同じ市内である阿武隈急行の角田駅からの方が近く(といっても7kmある)アップダウンもずっと少ないらしいのだが、東京から仙台までどうしても18きっぷでJRに乗りたかったので、こんな無謀な挑戦になってしまった。

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国道113号線。
みちのくおとぎ街道ともいうらしいが、そんな甘いものではなく、陽炎がゆらめきトラックが行き交う果てしない「ロード」だった。

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脇道に入ればのどかな田園風景になり、東北らしい鮮やかな夏の緑がまぶしい。
だが、さらにアップダウンが激しく、これも全く楽ではなかった。

なお、体験しての結論として、
真夏にこの距離を自転車で(あるいは徒歩でも)行くことは絶対におすすめしません!

やはり危険だ。
自分は途中暑さで足がつるほどだった。
あくまで個人の体験談(あるいは失敗談・反面教師)として読んでいただきたい。


地獄の行軍の先に現れた光輝く阿弥陀堂


体力も限界に近づき、このままでは本当に阿弥陀さまがお迎えに来られるかも…と思ったその時、本当に極楽のような場所にたどり着いた。
それが高蔵寺だった。

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境内に足を踏み入れ、不揃いな石畳を進み、左右の巨木の先に見えたのがこの光景。

「光ってる!」

中尊寺金色堂のように本当に金ピカに光っているわけではないが、陽光を反射する茅葺屋根は確かに黄金の輝きだった。
ここまでの苦労も相まって、本当に浄土を目にした思いだった。
とにかくいいところだ。

平安初期に徳一菩薩が創建したと伝わるが、やはり古代から続くお寺の立地は素晴らしい。
きっと元々特別な場所なのだろうし、さらにそこに千数百年の歴史と文化が積み重なっている。
決して自然だけではない、人の手が紡いできた伝統がそのまま土地の、建物の風格としてしみ込んでいる。

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平安末期・重要文化財の阿弥陀堂は、奥州藤原氏ゆかりの建築らしからぬ素朴さ、簡素さだが、力強くも品があり、凛とした佇まいで見飽きることがない。

繊細優美だったり、往時の極彩色や華やかさを偲ばせる阿弥陀堂も大好きだが、このシンプル極まりない姿は、親しみやすくもあり、逆に恐れ多くも神々しくもあり、不思議な味わいがある。


* * *


いよいよ、入堂。
後編に続く…


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[当記事の訪仏日 2015.8.5]
掲載情報は基本的に参拝・拝観・鑑賞当時のものです。
最新の拝観情報、交通情報等は各所公式サイト、問い合わせ等にて確認のうえおでかけください。

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