匂いの話

自転車を漕いでいてふと懐かしい匂いがした。まちの匂い。昔住んでいた町の匂いがした。家の近所の風景を思い出す。水溜り。赤く錆びたトタン屋根の家。歩くたびにじゃりじゃりと音を立てる道を挟んで、向かいには、上を歩いちゃダメって教えられた芝生。フサフサの芝に育ったら、四角に切って売られに行く。彼岸花が咲いていて、これは噂で、毒があるから触ると死ぬって聞いてた。でも、緑の背景に赤い曼珠沙華は良く映えて、毒なんて感じさせないくらいに綺麗だった。

竹内栖鳳が晩年に描いた動物は、匂いまでも描いたと言われていたんだっけな。匂いというのは、意識して嗅げるものではない。絵から、視覚から匂いを感じられるというのは、凄いなあ。凄いしか言葉が出てこないのがなんとも悔しいけれど、まさに神業、なんだろうな。

匂いを嗅がせたいとは特に思っていなかったけれど、人の記憶にリンクするというのは、素敵なことだと思う。見る人と描く人の記憶がリンクしたとき、なんだか不思議な力が湧いてくる。

高校3年のときだったと思う。残念ながら作者を覚えていないのだけれど、それは、川沿いの桜並木の水墨画だった。正面から見た瞬間、風が吹いた。母と歩いた桜並木を思い出す。水墨画、色彩は無いはずなのに、不思議と色づいて見えて、空気が、風が、匂いが感じられた。懐かしい感じがした。

匂い

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どうでもいいけど書き出したかったこと。ゲロ袋。
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