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その事実は、真実か?

2020年10月、NewSchoolの
ビジュアルコンテンツ講座にて
講師の櫻田さんより課題図書が発表された。
『FACTFULNESS 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣』である。

衝撃のFACTFULNESS

私はこの本を手に取った時
正直、「わっ、分厚っ」と思った。
しかし、櫻田さんから出された課題、
読まないわけにはいかない。

『FACTFULNESS』はこんな内容である。

世の中には本能的な思い込みでデータを正確に、正しく見られないことがある。
その本能は10個の思い込みに分けられる。その思い込みを止めることで、データを基に世界で起きる出来事を正しく見ることができる。

この10の思い込みの中に一つだけ興味深いものがあった。
「犯人捜し本能」である。
「人は誰かを責めれば物事は解決する」という思い込みの本能だという。
人は何か悪いことが起きたとき、
単純明快な理由を見つけたくなる傾向がある。

私はこの本能を実際に経験したことがある。

学校生活で行われがちな犯人捜し

このとき、校内は誹謗中傷をした犯人を特定することだけが目的になっていた。
犯人を特定し、責めれば問題は解決するという
単純な思考になっていたからである。
しかしそれだけでこの問題は解決したのだろうか。
実際、犯人が分かったところでその問題は解決しなかった。

犯人を捜す間は皆、自分事のようにこの問題を考える。
しかし、犯人が分かった瞬間に皆この問題について
一気に他人事のように捉え、考えるのを止めた。
私はそのとき周りの皆のことがひどく冷たく怖く感じた。

『FACTFULNESS』では

「犯人ではなく、原因をさがそう。
悪いことが起きたとき、責めるべき人やものだけを探してはいけない。
その状況を生み出した複数の原因やシステムを
理解することに力を注ぐべきだ。」

と述べられている。

誹謗中傷が起きた原因は一体何だったのか。
加害者も被害者というような言葉を最近よく耳にするが、
誹謗中傷をした者だけに原因があったのだろうか。

当時、誹謗中傷のDMを送った犯人の子は
「送った内容が誹謗中傷までになるとは思っていなかった」と話していた。
私は犯人の子から放たれた、この一言が気にかかっていた。

世の中はFACTFULNESSだけか

『FACTFULNESS』を読んでひとつ考えたことがある。
私たちはデータを正しく読み解くことが必要である。
情報をとり入れたり、データを分析する際には
その「FACT」=事実に注目し考える必要がある。

しかし、コミュニケーションや前に述べた人間関係では
「FACT」だけではないと考えている。

「TRUTH」=真実について考えることもときには必要ではないのだろうか。
あくまでも「FACT」を正しく理解した上での話である。
では事実と真実の違いは何か。

【事実】:実際に起こった事柄。現実に存在する事柄
【真実】:事実に対する嘘偽りのない解釈
(Weblio辞書より)

調べてみるとこのように書かれていた。
つまり、事実というのは1つしかなく、
誰が見てもそのようにしかとらえられない客観的なもの
である。
それに対して真実というものは複数あり、主観的なものである。

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例えば、「AさんがBさんを殺した」ということが起きたとき、
事実となるのは「AさんがBさんを殺した」ことである。
しかし、「AさんはBさんを殺そうとは思っていなかった。」
としたらそれはAさんにとっての真実である。

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つまり、真実というのは事実に対する主観的なとらえ方である。
言い換えると人の心の動きであると私は考える。
となるとそれは当然複数、人の数だけ存在することになる。
ときに誤解を与えることもあるだろう。
しかし、事実だけを知るのではなく、それに対して
真実を読み解くことも必要な場面はある。

私は現在大学生であり、大学では法律学を勉強している。
授業ではこうした事例や判例は沢山出てくる。
事実に対して犯人や加害者、被害者の真実を読み解く。
その条件として「事実に偽りないこと」である。
事実を捻じ曲げることはなく、それぞれの真実も
読み解くことによって特に人間関係上での複雑に絡み合った
原因が見えてくることもある。

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これからの時代においての求められるものは
ではこれからの時代において求められる、私たちが求め
必要とするものは一体何だろうか。
情報やコミュニケーションの速度が速くなっていく中で
もちろん「事実」は必要不可欠な条件である。

しかし、それだけを求め、得ることが最も必要なことなのだろうか。
場面や状況によっては、真実を読み解くことも必要になるだろう。
そしてその真実はいつも事実であるとは限らないと思う。

私はFACTFULNESSという最低限の土台の上に
TRUTHFULNESSという考え方も大切にしたい。

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