94.イギリス産業革命その3
①産業革命が起きた理由。
理由は三角貿易での奴隷を売買し、綿花産業で儲けるあの産業構造を壊さないようするため。
もう一つは、都市への人口流入による労働力の急増。人々は農村から追い出されたのだ。
イギリスは北海道の寒さ。だから自給するには食料が足りず、フランスから輸入していた。しかし、フランスと仲が悪く、輸入が止まることもしばしばあった。
イギリスの農民は次第に自給する道を模索しだした。
②農業革命
農作物を増やす方法は二つ。
①生産面積を増やす。
②生産性をUPする。
まずは生産性をUPする方法から。
土地を休ませながら土地を三分割して作物も変えていく三圃制。
ここから土地を4つに分けて、休む土地がなくても永遠に使用し続けられる方法が開発された。
土地には窒素が必要だ。この窒素を吐き出すことのできるクローバーやカブを植えることでそこに家畜も放ちながらフル活用しつづけられると言う無敵の方法、ノーフォーク農法を編み出した。
もう一つ、生産面積を増やすに関して。これはヘンリ8世の時代に行われた共有地をジェントリが勝手に土地を囲い込んで自分の土地にしてしまうことがまた起きた。
第二次エンクロージャーだ。第一次とは規模が違う。下の表を見ていただきたい。
今回は議会で法案が可決され、合法的に囲い込みが行われたのだ。10倍の土地が囲い込まれた。
共有地に住んでいた人々は当然、追い出され、邪険にされ、生活ができなくなる。
いくところのなくなった人々は生きるすべを藁をもすがる思いで都市へやってくるのだ。
これが人口の流入に繋がった。
③労働者の悲惨な状況
人々はまともな家もなく、農村から出てきた。川のそばに住み着いてなんとか職を流す。
雇用者からは足元を見られて、低賃金で働かされる。休憩などなく15時間平気で働かされる。子供などいたら育てることなど無理だろう。病気になっても会社がなんとかしてくれることもない。保険もない。高額な治療費は誰が払うのか。
上の絵はジン横丁。酒を飲まないとやっていられないのだ。母が階段でくたびれて気絶するように寝ており、腕から子供が落ちかけている。あの高さから子供が頭から落ちればおそらく命はないだろう。
我々の想像をはるかに超える過酷な労働環境だったに違いない。
④近代資本主義の成立
新たな階級が生まれた。資本家と労働者だ。
労働者は自分の時間と労働力を売ってお金を稼ぎ、資本家は生産されたものを売ってお金を稼ぐと言う近代資本主義が成立した。
⑤機械に対するアレルギー
労働者たちは職人たちが大勢いたが、ジョンケイをはじめとする機械の発明によって職を失った。ジョンケイも命を狙われたそうだ。
彼らは自分の職を奪った機械を壊し始めた。ラッダイト運動と言う。
そういえばウーバーが出てきた時もタクシー運転手が抗議していたニュースがあったが、全く同じことがこの時代にも起きていた。
⑥産業革命の恩恵
もちろんいいこともあった。むしろいいことの方が多い。近代資本主義の成立によって人口が急激に増え始めた。これは財サービスが多くの人々に行き渡り始めたと言うことだ。
飛鳥時代の貴族の食べ物と、現代日本の2980円食べ放題ビュッフェ、どちらが豊かだろうか。
産業革命によってゼロサムゲームは終わりを告げ、パイが増え出したのだ。そして格差が生まれたとか言うルソーみたいな人々がたくさん出てきた。しかし、格差が広がっているのではなく、下は少しずつ上がりながら、上はもっと早いスピードで上がっているにすぎない。格差は広がりながら豊かになっているのだ。
④慈善的な社会主義者たち。
労働者の過酷な働き方を見かねて、なんとかしようとする場当たり的な資本家も出てきた。
オーウェンはスコットランドに労働者と一緒に経営する工場を実験的に作った。のちにアメリカに土地を購入し、ニューハーモニー村を作った。しかし、村の経営は次第に独裁的になり失敗した。
マルクスは彼らを空想的社会主義者と呼んだ。
何はともあれ、彼らのおかげで労働条件をある程度規制する工場法ができるきっかけになったわけだが。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?