歩き出す恐怖

私は自分自身をまあまあユニークな人間だと考えている。
とは言っても自身を過大評価し、驕り高ぶっているつもりはない。
私は自己を承認するに於いて、他人が介在するのが恐ろしいのだ。

私は人間の感情というものの儚さを沢山目の当たりにしてきた。
愛していると告げた口が、同じ口で、同じ対象へと罵詈雑言を投げつける。
私は最近までずっと人間嫌いだと思っていたのだが、人間そのものではなく人間の移ろいやすさが怖いのだと気付いた。

故に私は他人からの評価の上に成り立つ自己承認というものをまるで期待していなかった。
誰からも評価されなくとも、自信さえ持っていれば私だけは最後まで私の味方で居てくれるのだ、と。

しかし誰の目にも触れずにただ暗渠の奥で仁王立ちしていたところでなんの意味があるのだろうか?
結局のところ人が自分を認めるには他者を介するというプロセスが必ず必要なのだ。

見ての通り、私はさしたる評価を得ていない。
数少ない友人たちから文章などについて褒められる事はあっても、所詮は内輪の評価にすぎないのだ(とは言っても友人たちの言葉も素直に嬉しいのだが)。

私は誰の手も借りず、自分一人の力で立っている。
しかし、歩み出そうとしてもそれを支えてくれる人はおらず、結局同じ場所で立ちすくんでいるままなのだ。

私は前に歩き出したい。
おろおろとみっともなく転びながら、それでも前へと。
いつか私を支えてくれる人たちへ、報いることができるように。