今回は、船木亨著『現代哲学への挑戦』に基づいて、健康について学びます。
船木氏は、健康について、次のように述べています。
2019年末から始まったコロナ禍で、命や健康に関しては、厚生労働省の見解に振り回されてきたという思いがあります。
日本は諸外国ほどには、ロックダウンは厳しくはなかったですが、それでも、長い期間、大勢の人たちが家に閉じ込められ、会社員のばあいは、リモートワークを強いられていました。
これなどは、命や健康を媒介にしてみずから進んで隷属しようという意志があったように感じます。つまり、本来人間は、自由のはずなのだが、コロナ禍では感染してはならない、移してはならないというスローガンの元に、人々の行動をいいなりにするのは何らかの権力ということになる。
國分功一郎氏は、コロナ禍の騒ぎの中で、イタリヤの哲学者ジョルジュ・アガンベンが問題提起をしたことを紹介していました。
アガンベンが問題提起した当時は、2021年で、コロナ禍が蔓延して、医療機関は逼迫し、医療従事者の方々は大変な苦労をしていた時期でした。だからその状況をなんとか改善しようと、世界中で緊急措置が実施されていたという最中なだけに、大きな反発を招いていました。
ただ、アガンベンは、「緊急状態」や「例外状態」という概念について様々な角度から研究していたということです。権力は「緊急状態」や「例外状態」というものを巧妙に利用して、民主主義をないがしろにしたり、人々の権利を侵害していくことがある、と述べています。
そういえば、日本では、地震などの災害が起こるたびに、憲法改正で「緊急事態条項」を設ける必要があると騒ぎだす極右の政治家の方々がいますが、怪しくて危険ですね。
引用図書
船木亨『現代哲学への挑戦』
國分功一郎.著『目的への抵抗―シリーズ哲学講話』