ネパールから世界へ 〜スペシャルティコーヒーづくりへの挑戦〜
Himalayan Luxury Beansでは、生産から販売まで、すべての工程を一貫して手掛けた、ネパール産のスペシャルティコーヒーを販売しています。
スペシャルティコーヒーとは、コーヒーの中でも最高級品質のものを指す言葉で、世の中に流通しているコーヒーのほんの数パーセントほどがこれにあたります。
品質に関しては、SCAJによって厳格に定められた基準にしたがって味覚検査が行われ、一般的には、検査で80点以上となったコーヒーのみをスペシャルティコーヒーと呼んでいます。
さらに、スペシャルティコーヒーは単に品質が高いだけではなく、生産者や品種、生産工程などが明確になっていたり、地域コミュニティや自然環境への配慮がなされていたりと、品質以外の面でもそれぞれのコーヒーごとに特徴があります。
スペシャルティコーヒーとしての品質を担保するためには、生産地での品質管理がとても重要で、収穫の仕方から収穫後の工程、ときにはコーヒーの木の栽培管理に及ぶまで、非常に繊細な対応が求められます。
品質へのこだわり
Himalayan Luxury Beansのコーヒーの特徴は、ほのかに香るフルーティーさとすっきりとした口あたり、そして、余韻として感じられる優しい甘みです。
これらの良質な香りや味を出すためには、生産地での品質管理の取り組みやコーヒーの栽培に適した環境条件が鍵となります。
完熟した果実だけを収穫
私たちが飲んでいるコーヒーは、元をたどるとチェリーのような果実にたどり着きます。
写真のような赤い果実を収穫し、その果肉部分を取り除いたあとで残る種子(豆)の部分を焙煎したものを、お湯で抽出して飲んでいます。
香り高く、美味しいコーヒーをつくるために、収穫は大切な工程です。
赤く完熟した果実のみを収穫することで、カップに注がれたときに華やかな香りがたち、コクがありフルーティーな甘味を感じられるコーヒーになります。
しかし、赤く熟した果実のみを収穫する作業は、簡単ではありません。
コーヒーの実の大きさは1〜2 cm ほどで、1本の枝にところ狭しと、たくさんの実が付きます。
さらに、熟すタイミングは、同じ枝の中でも一粒一粒ばらばらなため、完熟した果実のみを収穫するためには、根気のいる作業が求められます。
農家さんにとっては、少しでも多くの果実を収穫して販売できた方が収入が増えるので、赤い実もまだ黄色や緑色の実も一緒に収穫してしまいがちです。
そのため、私たちは収穫の方法に関するトレーニングを実施し、ネパールの国で定められた買い取り基準よりも2割ほど高い価格で、農家さんから買い取りをしています。
風通しの良い環境での天日乾燥
収穫されたコーヒーは、収穫後1日以内をめどに、果肉部分を取り除く作業(パルピング)に進みます。
パルピングを行い、果肉や豆に付着したぬめり成分(ミシュレージ)を取り除いたあとは、10日〜2週間ほどかけて、じっくりコーヒー豆を乾燥させていきます。
コーヒーの生産工程の中で、この乾燥の工程はとても大切で、乾燥が十分に行われていなかったり、時間がかかりすぎてしまったりすると、コーヒーにカビっぽい香りがついてしまったり、発酵のしすぎによる嫌な渋みを感じることにつながってしまったりします。
ネパールのコーヒー生産の現場では、乾燥後のコーヒーを地面で乾燥させていたり、民家の屋根裏で乾燥させていたりするところが多くあります。
また、推奨されている乾燥日数よりも短いケースがほとんどで、これにより乾燥が不十分なコーヒー豆が多く出回っています。
私たちが一緒にコーヒーづくりに取り組んでいるネパールのトゥロポカラ村でも、以前までは3〜5日間ほど地面で乾燥させて出荷しているという状態でした。
乾燥工程についてもトレーニングを実施し、風通しを良くするための乾燥棚(アフリカンベッド)を導入したことで、いまでは、他のスペシャルティコーヒーとも引けを取らないクリーンな口あたりのコーヒーになっています。
コーヒーづくりに適した環境
コーヒーは、主に熱帯〜亜熱帯地域で生産される作物です。
具体的には、南緯25度〜北緯25度のコーヒーベルトと呼ばれる地帯が主な生産地で、この中でも標高1,000〜2,000 mの地域で上質なアラビカコーヒーが採れると言われています。
ネパールはちょうど北緯25度くらいに位置しているため、コーヒーの栽培も盛んに行われています。
また、国土の大半が山岳地帯であるネパールでは、おいしいコーヒーの条件として欠かせない適度な標高の地域が多くあります。
Himalayan Luxury Beansのコーヒーの生産地であるトゥロポカラ村は、標高1,100〜1,300 mほどに位置しています。
さらに、ヒマラヤ山脈を有するネパールは水資源が豊富で、山岳地帯の水は非常に綺麗です。
先ほど紹介したパルピングの後には、豆を水洗いする工程があるのですが、その際、豊富で良質な水は、クリーンな味わいのコーヒーをつくる上でとても有利になります。
コーヒーづくりを始めた背景
私たちは、2012年からネパールでの活動を始めました。
活動開始当初は、主に孤児院での食料支援や交流の場作りなどの活動に取り組んでいました。
しかし、継続的に孤児院での活動を続けていく中で、ある課題に直面させられました。
たとえ、孤児院での生活が充実していたとしても、孤児院を出た後は、就職先を見つけることが非常に困難である
ネパールは、国全体として深刻な雇用不足に悩まされています。
GDPの約3割が出稼ぎによる海外送金で賄われている状態で、経済発展途上のアジア諸国と比較しても、この割合はかなり高いものです。
どうすればネパールの方の雇用をつくることができるか。
これまで、生鮮野菜の生産に挑戦したり、ネパールではよく食べられているヤギの畜産に挑戦してみたり、他にもネパールの方の雇用機会を創出できるような取り組みを数多く行ってきました。
長年、現地パートナーと協力しながら様々な活動をしてきた中で、農業従事者が大半を占めるネパールで生産ができ、かつ、海外にも世界に向けて輸出できる作物として、コーヒーの可能性を信じ、2017年からコーヒー生産事業を開始しました。
私たちが、コーヒーに込めた想い
ネパールでのコーヒー生産事業は、0からのスタートでした。
まだコーヒーを栽培したことのない農家さんに、コーヒーの苗木を配布して一緒に植樹をしたり、コーヒーの栽培はすでにしていても、適切な管理方法を知らない農家さんにトレーニングを行い、村に泊まり込みで一緒に収穫や乾燥管理を行ったりしてきました。
そんな中で私たちが見てきたのは、仕事がなくて悲壮感漂う農家さんの表情ではなく、家族や友人との時間を大切にしながら、幸せそうに暮らす彼らの日常でした。
彼らが経済的に余裕のある状況ではないことは事実ですが、ともにコーヒーづくりに取り組む中で、「村の暮らしが持つ豊かさ」や「幸せとは何かという本質的な問い」について、私たちは常に考えさせられてきました。
ネパールの農家さんたちの「貧しさ」ではなく、日常にある「豊かさ」を届けていきたい。
ネパールの小さな農村からでも、世界に通用するコーヒーをつくれることを証明したい。
私たちは、この1杯のコーヒーが、コーヒーを飲んでくださる方にとって、「豊かさ」に出会うきっかけとなることを願っています。
この1杯から生まれるあたたかな未来を信じて、私たちはこれからも歩みを続けていきます。
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