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[緊急調査]withコロナでの学生の悩みはなにか?(前編:学び編)

 新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大を受け、多くの教育機関では休校やオンライン授業などの措置が取られています。「学びを止めるな」という掛け声のもとさまざまな取組みが行われていますが、学生目線では具体的にどのような悩みがあるのでしょうか。

 HLABではその実態を明らかにするために、サマースクール過去参加者を対象にアンケート調査を行いました。この記事ではその結果の一部を公開いたします。母集団には偏りがあると思いますが、学生の生の声にお目通しいただけたら幸いです。「学び編」と「就職活動編」の2本に分けてお届けします。

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アンケート実施概要

調査名
「新型コロナウイルスを受けた実態調査」
対象
HLABサマースクールの過去参加者
実施方法
メールにてアンケート(Googleフォーム)へのリンクを送信し、回答を依頼
回答期間
2020年4月26日(日)〜2020年5月1日(金)
回答者数
57名

基礎情報

 アンケート回答者のうち、9割を大学生以上が占める結果となりました。高校生のサンプル数が少なかったため、この記事では大学生以上(n=51)に焦点を絞った分析の結果を紹介していきます。学年別の人数分布としては、大学1・2年生の回答が多く集まっています。

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 回答をいただいた方々の通う学校の内訳を見てみると、67 %が私立、25 %が国立、8%が公立大学となりました。全体のうち回答者の多かった大学としては、国際基督教大学、早稲田大学、慶應義塾大学、東京大学などがありました。この記事で紹介する結果を見る際には、このような属性の偏りを頭の片隅に置いておいていただければと思います。

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学ぶ機会の減少に関する懸念

 さて、調査結果の中身に入っていきましょう。生活に関して困っていることを尋ねた設問では、学ぶ機会の減少に関する懸念が高まっていることが明らかになりました。54.5 % の方が「ずっと家にいて精神的に疲れるが、どのように対処すればよいかわからない」と回答したほか、56.8 % の方が「課外で学ぶ機会(講演会など)がなくなって学ぶ機会が減った」と回答しました。

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 家の中で学べる教材コンテンツも多数公開されていますが、外に出て自らの身体を動かして「体験」しながら学ぶことが難しくなってしまったのが現状がうかがえます。HLABでもサマースクールの中止を決断しましたが、オンライン授業や自宅学習が増えていく中で「学校」という枠組みの外での学びの機会(いわゆる正課外学習)をどのように作っていくのかが、これからの大きな課題となります。

 詳細は後述しますが、コミュニケーションや交流の機会の減少、留学計画の変更などの面でも影響が出ています。

勉強や研究が思うようにできない

 生活に関して困っていることについて、自由記述で回答していただいたものもご紹介します。運動不足やオンライン授業で机に一日中モニタを見続けることなどによる心身の健康への心配のほか、勉強や研究が思うようにできない現状が表面化しました。

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実際の回答の一部をご紹介します。

<心身の健康>
・自由に出かけられなかったり、太陽をあまり浴びられなかったり、運動不足になりがちだったり、ずっと家でパソコンとかで遠隔授業も課題もこなさばければいけないので視力の低下が不安です
・大学の授業が全てオンラインになり就職活動も全てオンラインでPCに向かう時間がかなり長くなり、勉強できることや就職活動を進められることは非常にありがたいと思うけど、健康に良くないなと思っている。
<大学・研究>
・学び方が「わからない」というよりも、学びたいという意欲があるのに図書館や書店が閉まっていて求める物が借り出せない、という状況に最も困っています。
・インタビューやアンケートができないために、データの取得の見通しが立たず、修論の予定が立てられない
・ 互いに高め合えるような仲間に出会いたい。社会人や世代を超えた人との交流をしたい。
<講義形式・内容>
・ 留学先の大学の授業をオンラインで受講しているが、授業によっては教授も疲れてきたのか講義の質が落ちた
・講師や教授によって使うアプリやサービスがバラバラで課題や講義の詳細が非常に分かりづらい。Zoom, Microsoft Teams, Schoology, e-class, DUETなどを複数同時に使う先生もいて煩雑。

留学の予定が不透明に

 留学の予定が大幅に崩れ、先行きが見えなくなってしまったことに対する不安も高まっています。誰しもがコロナ禍の影響を受けていますが、学生の進路やキャリアへの影響も極めて深刻です。

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<留学>
・秋学期からの交換留学が実施されるのかどうかの見通しが立たず、準備に影響が出ている。
・本来は1年間の留学を予定していて、JASSOの海外留学支援金も年間を通して受給する予定だったが、3月に留学到着後2週間で強制帰国となったため、帰りの飛行機代を網羅することができないまま4月分の支給が停止となった。

留学計画の変更によって就職活動への影響も出ているようです。この詳細は後編の「就職活動編」の記事にて詳しくお届けします。

大学に入学したのに、何もできないストレス

 春から大学一年生となった方に注目してみると、新しい環境になったにもかかわらず、期待していたことが実現しないことに対する懸念が多く見られました。長い受験勉強を経てようやく大学に入れたのに、新しい友達をつくることも教室で講義を受けることもできない、というのは相当なストレスなはずです。

・第一志望の大学に具体的な目的をもって進学したのにコロナの影響で何もかもそのチャンスが潰されたこと
・大学生になり、自分の将来のキャリアのために何かプロジェクトを始めたいと思っていたが、家におり大学で新しい人と深く関わることが難しく、時間のロスを感じる
・オンラインでサークル活動が始まってるのを見ると興味があってもなんとなく気後れして逃している。
・大学生活への純粋な不安とうずうずが濁ってしまい、多少のストレスが溜まっているが、これに関しては仕方ないと思うし待つしかないのは皆同じであると思う。

 勉強や研究に限らず興味関心を広げる機会を与えてくれるのが、新しい環境での人との出会いや対話です。大学入学直後のスタートダッシュはその刺激が最も多いタイミングですが、オンラインでいかにそのような新しい交流や対話の機会をつくっていけるかが、大学や教育に携わる人全員にとっての課題といえるでしょう。また、オンラインで作られていく新しい交流や対話の機会への物理的・心理的なハードルをいかに下げていくかも重要な論点でしょう。

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おわりに (アラムナイのみなさんへ)

 アンケートの分析を通して、学生が現在直面している悩みや課題が明らかになりました。学びたくてもこれまでと同じような環境では学べない、留学がキャンセルになった、就活も先行きが見えない・・・。先行きが見えない不透明な時代に突入した今、悩みや課題はこれらに留まることなく、むしろこれからどんどん増えていくかもしれません。

 それでも、不安に駆られて一人で抱え込む必要はありません。今こそ、HLABの強みが発揮されるときなのです。HLABには同世代や少し歳上のお兄さんお姉さんがたくさんいて、勉強、進路、キャリア、さらにはプライベートなことを気軽に相談したり議論したりすることのできる文化があります。日本中、世界中に広がる幅広い分野で勉強や仕事をしている人のネットワークを活かせば、このピンチをチャンスに変えることもできるかもしれません。

 HLAB事務局としてもアラムナイのみなさんをサポートするイベントなどを企画していきますが、Facebookグループを活用して、ぜひ相互に悩みを打ち明かしてみてください。心の支えになってくれたり、役立つ情報を教えてくれたりする人がきっといるはずです。

インターネット越しでもピア・メンターシップは成り立つと、信じています。

分析/文章:植田 陽

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後編「就職活動編」はこちら。

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HLABでは、高校生を対象としたオンラインプログラムを緊急開催いたします。本記事の主たる分析対象である大学生とは異なりますが、ご興味のある方はこちらをご覧ください。

また、HLABでは2020年12月開業予定のレジデンシャル・カレッジの開発をおこなっております。ご興味のある方は以下のページより詳細をご覧ください。


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