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HLAB Conversation #29 著者を応援する出版社を作った理由

12月13日(日)に、英治出版株式会社より代表の原田英治さんをお呼びし、HLAB Conversationを行いました。今回はオープンを記念し、SHIMOKITA COLLEGEで初めて開催しました。

*今回、HLAB ConversationはCOVID-19感染拡大防止の観点からクローズドで開催させていただきました。

原田さんプロフィール
慶應大学法学部を卒業後、アンダーセンコンサルティング(現 アクセンチュア)に入社。家業の印刷業などに従事した後、1999年に夫婦で英治出版をさいたま市で創業。
創業時から「誰かの夢を応援すると、自分の夢が前進する」をモットーに、応援ビジネスとして出版業を営む。2018年から「親子島留学」を利用し、1年半、東京と島根県隠岐郡海士町の二拠点生活を送っていた。

原田さんは、実は印刷・出版社の3代目でした。幼少期から、後継者になることの大変さを説かれていました。「自分の会社を作って、親の会社を乗っ取るぐらいの実力がないと後継者にはなれないよ」と言われて育っていたため、卒園時の夢は、「将来自分で会社をつくって社長になり、自分の会社を立派にして親の会社を乗っ取ること」だったそうです。

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「著者を応援する」出版社--英治出版

英治出版は正社員9名の小さな会社です。英治出版の特徴は「著者を応援する出版社」であること。読者の需要のみを優先させず、著者が書きたい本を出版することを重視しています。長く活躍する著者を支援し育成することで、長期的に本の売り上げを伸ばすことを目標としているのです。そのため、英治出版では絶版を作りません。現在は年間12冊ほどしか新刊を出版していませんが、既刊本の売り上げが全体の6割を占めており、全体の売り上げは伸びているそうです。

デジタル化の時代において、紙媒体で本を出すことの意義も、英治さんは著者の成長と結びつけます。

「人間はアウトプットするときに一番学べるんじゃないでしょうか。本を読む人より、書いている著者が一番学びになっているかもしれません。紙の本は情報を固定化し、歴史を残します。そのプロセスにおいて、著者の覚悟が決まるのです。」

読者ではなく著者に目を向けた企画

本の出版は作品の企画から始まります。英治出版では、ここでも著者が第一です。利益追求のために読者層を指定することはなく、あくまでも著者の意図を尊重します。「作品を通して著者は何を実現したいのか」「誰にどのようにして届けたいのか」を追求し、対話を通して企画を練り上げることで一冊の本の企画が完成します。著者を信じつつ、その力を引き出して、裏側でサポートするのが原田さんの理念です。

仲間と作る現実が自分の理想を超えていく

原田さんは、自分の役割を他の人の力を引き出す、サーバント・リーダー(支援型のリーダー)だと話します。原田さんがいることによって、組織にオーセンティック・リーダー(「自分らしさ」を基本としたリーダー)が育つよう取り組んでいるそうです。原田さんは「仲間と作る現実が自分の理想を超えていく」と述べ、仲間の力を借りる力の重要性を説きます。限界のある自分の想像力で作った理想より、仲間の想像力を借りることで実現する現実の方がずっと素晴らしいという考えです。

仲間の力を借りることの重要性と影響力の大きさを、原田さんは”6 degrees of separation(六次の隔たり)”という概念を用いて説明します。これは、直接面識のある関係性にある人を一次(one degree)とし、その人の知り合いを二次、そのまた知り合いを三次とすると、六次(6 degrees)で全人類はつながるという仮説です。私たちは、「人脈」というと一次の関係を増やす努力に向かいがちですが、実は二次、三次の関係をどこまで引き出せるかが鍵となっていると原田さんは話します。直接繋がっている目の前の相手を大切にすることが次の階層につながる唯一の方法であり、自分の夢の実現のための近道だといえます。世の中のすごいことはたいてい二人の会話から始まります。「すごいこと」の実現のためには目の前の人を大切にし、深く知る。そして二次、三次の関係へとつなげることが必要不可欠といえるでしょう。

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応援し、応援され、自分の夢を実現していく

私たちは自分の成長に力点をおきがちですが、人の力を借りることも同様に重要だと原田さんはいいます。

「自分の力で上り詰めることも大切ですが、それには限界があります、どの段階からか他人の力を借りることが必要になるのです。特に社会に出た後は、人の力を借りてでも自分の理想以上の世の中を作った方がずっと価値があるでしょう。誰かの夢を応援すると社会を巡って自分たちに戻ってきて、夢が押し上げられます。それの繰り返しで夢が実現するのです。」

何かを成し遂げる上で、誰かを応援し続ける大切さを、SHIMOKITA COLLEGEのカレッジ生に教えてくれた原田さん。Conversation後も、カレッジ生の途切れない質問に答えてくださり、ありがとうございました!

HLABは、小田急電鉄とUDS株式会社と協働し、多様性豊かな高校生・大学生・若手社会人が寝食を共にする中で互いに学び合い、新たな教育的価値をもたらす学生寮として、SHIMOKITA COLLEGEを2020年12月に開業しました。

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