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ボール奪取でフロンターレを上回ったレッズ:ルヴァンカップ準々決勝 川崎フロンターレ対浦和レッズ(9月5日)<2>

ちょっと日が空いてしまったが、ルヴァンカップ準々決勝、川崎フロンターレ対浦和レッズのレビュー2回目。

今日はボール奪取マップを見てみる。

シュートにつながるボール奪取が少なかったフロンターレ

 まずは全体。ただ、今回は中継がDAZNではなくフジテレビ。リプレイの間のボール奪取が少なくとも2回はあったが、その分は除外してある。

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 フロンターレは全体のボール奪取数が56、うち敵陣が28(50%)、シュートにつながったものが4(7%)。

 今シーズン、データを取った11試合でのボール奪取数平均値が68.2だから、56というのはだいぶ少ない。これより少ない試合はセレッソ戦(35)とトリニータ戦(46)、ベガルタ戦(66)だけだ。

 ただし、敵陣でのボール奪取数は少ないわけではない。データを取った試合の中での平均値が27、率にして39.6%なのに対し、この試合では28、率にして50%だ。50%というのは多い数字で、これを上回ったのはセレッソ戦の51.4%とヴォルティス戦の53.6%だけだ。

 気になる数字はシュートにつながった数の少なさ。平均は9.5で、4つというのは今シーズン最小。率も平均が14%なのに対してこの試合は7%。これに近い数字はホームでのグランパス戦の6.9%。前半戦では、シュートにつながるボール奪取は田中碧と谷口彰悟が多かったから、このあたりは、田中の退団と谷口の欠場が響いていることは明らかだろう。


フロンターレを上回るボール奪取数57のレッズ

 次にレッズを見てみる。

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 全体のボール奪取数は57で、フロンターレを上回る。うち敵陣が26(45.6%)、シュートにつながったものは4(7%)。

 対戦チームのボール奪取について、今年データを取ったのは7試合。

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 その平均値は66.3なので、ボール奪取数トータルで見ると、この試合のレッズは平均値を下回る。しかし、敵陣でのボール奪取数の平均値は20.6なので、この試合のレッズの26というのは平均を大きく上回っている。26を上回ったのは、コンサドーレだけだ。

 コンサドーレは、データを取った中で唯一、フロンターレより多くボール奪取していたチーム。コンサドーレとレッズに共通するのは、フロンターレに対して果敢にハイプレスを仕掛けてきたことだ。

 そしてレッズは、敵陣でのボール奪取率が45.6%で、コンサドーレの38.0%を大きく上回る。そう見ると、ハイプレスの奏功率はレッズの方がかなり高いと言える。リカルド・ロドリゲス監督によるチーム改革が順調に進んでいると言うことだろう。

 昨シーズン12月の等々力での対戦で、シュート数がフロンターレ23対レッズ3という一方的な試合だったことを思うと、同じチームとは思えないほどの変化だ。


橘田のボール奪取能力

 次にフロンターレの個人別ボール奪取数を見てみる。ここでいうボール奪取は、味方につながったもの。アバウトなクリアやタッチに蹴り出したものは含まない。キーパーがペナルティエリア内でボールを処理した場合も含まない。

 最多はなんと橘田。

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シミッチ、山村が続く。

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  橘田:13
  シミッチ:9
  山村:8
  登里:6
  家長:5(シュートにつながったもの1)
  脇坂:4
  田邉:3(シュートにつながったもの1(ゴール))
  宮城:2
  長谷川:2(シュートにつながったもの1)
  ジェジエウ:1
  知念:1
  ダミアン:1(シュートにつながったもの1)
  ソンリョン:1

以下が最終ライン4人のボール奪取位置。

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 橘田のいた右サイドはレッズに再三狙われていたが、その中でのボール奪取13は立派。狙われていたからの数字、ということもあるが、深いポジションだけではなく、敵陣でも5個のボールを奪取しているのは見事。

 クロスの質など、もちろん山根視来に及ばない点は多々あるが、この試合は代役を何とかこなしきったと言えるだろう。もちろん、最後のコーナーキックにつながったボールロストは、橘田がユンカーとのデュエルに敗れたことによるものだから(91分のペナルティエリア横のボール奪取はそのあと何とか取り返したもの)、悔いも残るだろうが。

 シミッチが多いのもいつものこと。山村もセンターバックだから多いのは自然。

 気になるのは前半での交代とは言え田邉の3。ボール奪取としてかうんとしているものに単なるクリアは含まないから、田邉はクリアをパスにできていないことを示唆している。谷口はそのクリアの質が非常に高く、味方につながる率が高いから、このあたりも含めてこれから質を上げていってもらいたいと思う。ただ、前半の同点ゴールは田邉のボール奪取が起点だったことは特記しておきたい。


ボール奪取からシュートまでの手数は少ない

 最後に、ボール奪取からのシュートを見てみよう。

  フロンターレ
   9本:家長から2本
   36分:ダミアンが直接シュート
   39分:田邉から4本(ゴール)
   69分:長谷川から2本

 4本というのは少ないが、いずれも少ないパス数でシュートに持ち込めている。そう考えると、組み立て自体が機能不全を起こしていたわけではない。田中碧と谷口の欠場の分、シュートにつながるかたちでのボール奪取ができなくなっていることがポイントだといえる。 

  レッズ
   3分:直接シュート
   7分:9本(ゴール)
   17分:3本
   84分:5本(ゴール)

 レッズについては普段見ていないので、4本というのが多いのか少ないのか判断できない。ゴールにつながった7分のボール奪取は左サイドで捕ったボールを右サイドに回してシュートに持ち込んだ分手数がかかっている。84分は自陣ペナルティアークでのボール奪取だから、5本くらい要するのは当然。それを除いた2本は手数が少ない。やはりボール奪取後シュートまで素早く持って行くかたちを志向していることがうかがえる。


まとめ

 この試合、今までのところ、観戦した中でベスト2(もうひとつは開幕のマリノス戦)に挙げられる。リカルド・ロドリゲス監督の下で、レッズが信じられないほどの変貌を遂げていることがその背景にある。次の対戦は11月3日、等々力にて。

 そのときはレッズの酒井宏樹、フロンターレの山根視来といった代表組も出場するはず。フロンターレは谷口や大島も復帰していることを期待したい。楽な試合には絶対にならないだろうが、またエキサイティングな試合になることを期待したい。

(終わり)


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