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田中碧のボール奪取からの素早いトランジション:川崎フロンターレ対サガン鳥栖戦(4月7日)<2>

もう10日も前の話になってしまったが、4月10日の川崎フロンターレ対サガン鳥栖戦のマッチレビュー第2回。

全体で74回のボール奪取

今回はボール奪取マップを中心にレビュー。まずは試合を通じて。

スライド9

 なんか凄く混み合っているように見える。合計すると74回。ヴォルティス戦の69回を上回る。

 ざっと見た感じ、トリニータ戦のような、ボール奪取位置の偏りは見られない。

 ただ、敵陣で32個で全体の43%、自陣半ばまででのボール奪取も多く、逆にペナルティエリア近くでのボール奪取は少ない。

 前半と後半を比べてみよう。

スライド10

 後半。

スライド11

 前後半とも取り立てて大きな傾向を見て取ることができないが、後半になると敵陣右サイドでのボール奪取がない。また、全般的にボール奪取位置が下がっているように見えるが、それはリードしたあとでやや落ち着いて試合を進めるようになったからだろう。

2人のセンターバックで26個

ここで個人別の数を見てみる。

 谷口:14
 シミッチ:13
 ジェジエウ:12
 田中:10
 登里:7
 長谷川:6
 山根:5
 小林:3
 三笘:1
 ダミアン:1
 丹野:1
 脇坂:1

 この2人のセンターバックの合計26というのは凄い。サイドバックを加えた最終ライン4人だけのボール奪取位置を見てみよう。

スライド12

 全体に散らばっているが、谷口とジェジエウの敵陣でのボール奪取数9と言うのも凄い数字だ。それだけサガンを押し込んだ試合展開になっていたと言うことでもある。

中盤に蓋をしたシミッチ、トランジションの早い田中碧

 シュートと言えば、田中碧のボール奪取10のうち4つがシュートに結びついているのも凄い。それだけボール奪取後のパスの質がいいと言うことでもあるし、田中碧がボールを奪ったときのトランジションの速度が速いことを表している。

 もう一つ、シミッチのボール奪取数も多いし、高い位置でのボール奪取から2回シュートにつながっている。

 田中碧とシミッチのボール奪取のみを抜き出したのがこのマップ。

スライド13

 中央部を中心にシミッチがボール奪取していること、田中碧が広い範囲でボール奪取していることがわかる。ここでこの日の鳥栖の攻め方をもう一度。

スライド6

 鳥栖が攻めるときは、中央2列のボックスでボールをクロスさせるようにビルドアップすることが多かった。シミッチのボール奪取は、その位置から考えて、鳥栖のビルドアップを、自陣で食い止めるケースが多かったことを反映していると考えていいだろう。

やはり少ない手数でシュートに

最後に、ボール奪取からのシュートまでの手数をまとめてみる。

 6分:長谷川から2本
 13分:田中碧から3本
 18分:長谷川から6本
 27分:登里から3本
 39分:田中碧から5本
 41分:田中碧から14本
 53分:田中碧から1本
 64分:谷口から15本(得点)
 85分:登里から1本
 89分:三笘から3本

 一番多いのは、得点につながった谷口のボール奪取からの15本、これは一度三笘を使って左サイドを崩してから、中央のシミッチを経由して右サイドを崩し、またシミッチに戻したあとの縦パスから遠野がゴールに押し込んだものだ。

 次が41分の、自陣ペナルティエリア脇からの田中碧のボール奪取を起点とするもの。それ以外はほんの数本でシュートに持ち込んでいる。

 スタッツ上のシュート数が10だから、この日はすべてのシュートがボール奪取からのものと言うことになる。平均値を取ってみると5.3本。まあ、パス数の多い2本が平均値を押し上げていて、この2本を除く8本でみると平均値は3.0本になるのだが。いずれにしても、ボール奪取から素早いトランジションでシュートに持ち込めたケースが多かったことがわかる。

 ただ、実際のゴールは、ショートパスとサイドチェンジを組み合わせた、「いかにもフロンターレらしい」ゴールだった。

11人対11人での90分が見たい相手ではある

 ボール支配率は川崎54%、鳥栖46%。このポゼッション率の中で、フロンターレが74回ボール奪取していると言うことは、それだけ鳥栖がボールを、自陣深くではなく、攻撃的に動かそうとしていたことでもある。スコアも1-0だったし、そういう意味でも面白い試合だった。11人対11人での90分を見たかったようにも思う。今年もまたアウェイを見に行きたくなってしまう試合ではあった。

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