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仕上げではなく、きっかけとしてのミトマドリブル: 11月14日フロンターレ対アントラーズ戦<2>

14日がアントラーズ戦。そして18日がマリノス戦。とても濃密な試合が二試合続いた。幸せであると同時に、頭がものすごく疲れてます(笑)。

アントラーズ戦のレビュー、速報を含めて3本目。

今日はこの試合でのフロンターレの攻撃を分析してみる。

攻撃サイドは、左??

まずは例によって攻撃サイドのカウント。ペナルティエリアの両脇のスペースに入り込んだ回数を数えてみる。

(前半)
 右サイド:5
 左サイド:5
(後半)
 右サイド:2
 左サイド:5

この試合は三笘薫は左ウイングで先発。右ウイングは家長昭博。

今年の夏以降のフロンターレは、特に三笘が出ている時間において、左サイド偏重の傾向がある。負けた10月7日のFC東京戦の前半が右5回に対して左12回、10月18日のグランパス戦が試合を通じて右4回に対して左14回、10月31日のFC東京戦が右14回に対して左25回(なんだこの数は!!)となっており、左の方が右より2倍以上使われる傾向にある(あくまでペナルティエリア脇のスペースに進入した数なので、DAZNのスタッツとは違いがあると思う)。

それがこの試合、特に前半は左右同数という、この秋以降初めての数字を示している。

このことは、山根と家長の連携が非常によく取れていたことを表している。特に、山根と家長だけではなく、脇坂が真ん中や左に寄らず、きちんと右のハーフスペースのポジショニングを維持し、山根・家長をリンクさせる役割を果たしていたことが大きい。

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また、ダミアンも、センターバックの間ではなく、左右に動き回った。

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左サイドにボールがあるときでも右ハーフスペースに立つことがあったので、サイドを両方使いながら揺さぶっていくという約束事があったのかもしれない。

フロンターレ 左サイド ダミアンポジショニング

こうなると、右サイドでボールをキープし、縦をうかがう家長への対応が重要になる。実際、三竿健斗が(鹿島の)左サイドに流れて家長とマッチアップする形が何回か起こった。

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三笘へのパスの出所と三笘のプレー選択

もう一つ、三笘へのパスの出所を見てみよう。
登里:11(スルーパス1)
 ダミアン:5(サイドチェンジ1)
スローイン:4
コーナーキック:3
 中村憲剛:3(スルーパス1)
 谷口:2
 家長:2
 田中碧:1
 山根:1
 不明(脇坂?):1(スルーパス1)

やはりいつもと同じように、登里享平とのパス交換が非常に多い。また、この試合で目立ったのが、三笘の前のスペースに向けたスルーパスが散見されたことだ(3本)。

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これはこれまではあまりなかったことで、おそらく三笘へのチェックのためにサイドバックが高いポジションを取っていたことによるのだろう。
ボールを受け取った三笘のプレー選択は
ドリブル:17
パス:14
シュート:2

また、三笘のドリブルの成功率も見てみよう。シュート、シュートにつながるクロス、それとファウルを取った場合を大成功、味方にパスを通した場合を成功、ボールロストを失敗とすると、この試合の数字は以下のようになる。
大成功:6
成功:10
失敗:1

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これは三笘のボールロストの瞬間

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細かいパスでマーカーをずらすのではなく、シンプルにドリブル

上記の数字をFC東京戦と比較してみよう。

10月31日のFC東京戦では、全プレー機会68回中パスが42回あり、細かいパスでFC東京のマーカーをずらしてからドリブルを仕掛ける意図が明確に感じられたが、この日はパスよりもドリブルが多く、FC東京戦とは違うプランがあったことを察することができる。

おそらくアントラーズの強度の強いディフェンスだと、パスが引っかかったり、微妙にコントロールできない可能性が高いことから、細かいパスでマーカーをずらすより、むしろシンプルにドリブルを仕掛けてファウルを取りに行くというプランだったように推測できる。

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実際、三笘のドリブルからイエローカード2枚とゴール前でのフリーキック1回を獲得しており、上記の「大成功」が6になることからも、このプランは有効であったと評価できる。

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ただし、三笘のドリブルを早めに仕掛けると言うことは、スペースがそれほどないところでのプレーになるため、三笘自身のシュート数は2にとどまった。

しかし、全体としてはシュート17本であり、家長を中心とする右サイドでの崩しと合わせて、アタッキングサードでの仕掛けは上手く機能していたとみるべきだろう。点が取れなかったというのは、結果にすぎない。

ただ、ここ数試合、攻撃は機能しているのに点に結びつかないことが増えているのが気にはなる。このあたり、小林悠の不在も大きいのだろうが。チームが調子を崩していくときは、「機能しているが結果につながらない」ことが予兆であることが多いので、勝ち点差は開いているけれど、フロンターレにとって正念場ともいえるだろう。

素晴らしい試合を、ありがとう

この試合、フロンターレが2点目、3点目を取ってもおかしくなかったし、アントラーズが2点目、3点目を取ってもおかしくない展開だったが、結果は1-1の引き分けだった。

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これはこれで妥当な結果だったのだろう。アントラーズのいくつかのラフプレーを除けば、ビデオで見直しても、本当に目を離せない、レベルの高い、素晴らしい試合だった。こういう試合を、来年も見たい。来年、等々力だけじゃなく、鹿島スタジアムにも来ようか、そんな風に思えた。


今日の報道によれば、PCR検査を受けたアントラーズの関係者はみな陰性だったとのこと。本当に良かった。サッカーをスタジアムで見ることのできる幸せをかみしめながら、シーズンの残りの試合を楽しみたい。

(終わり)


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