フロンターレ中盤のボール奪取と素早いトランジション:川崎フロンターレ対サンフレッチェ広島(4月18日)<2>
今日は4月18日、川崎フロンターレ対サンフレッチェ広島戦のレビュー2回目。
最終スコアは1-1の試合。今日はボール奪取マップを中心に見てみる。
これは、相手ボールを奪取した場所と選手をまとめたものだ。「奪取」がポイントなので、タッチに蹴り出したりクリアしたものは含めていない。水色がシュートに至ったもの。赤色が得点に至ったもの。
フロンターレボール奪取マップ:中盤3人で半分のボールを奪取
まずフロンターレの全体。
合計74回。アビスパ戦の91回よりは少なく、サガン戦の74回と同じ。敵陣では27回で36%(サガン戦では32個で全体の43%)。シュートに持ち込んだのは15回で20%(スタッツ上のシュートは22本なので、ボール奪取によるトランジション以外からのシュートが7本あったことになる)。
前半だけを見たのが下の図。前半は非常に高い位置でボールを奪取できている。しかも敵陣でのボール奪取17回のうち、5回でシュートまで持ち込めている。実際に得点に持ち込んだのは自陣深くでの36分の田中碧のボール奪取から三笘のドリブルによるロングカウンターが起点なのだが。
後半だけを示したのが下の図。やや後半の方が重心が後ろに寄っているのがわかる。
ボール奪取の20%でシュートに
個別に見てみよう。
田中:15(うち5回でシュート)
ジェジエウ:12
谷口:9(うち3回でシュート)
脇坂:9(うち2回でシュート)
山根:7(うち3回でシュート)
遠野:6
家長:4
登里:3
塚川:3(うち1回でシュート)
小塚:3(うち1回でシュート)
三笘:2
小林:1
最多はアビスパ戦に続いて田中碧。
田中碧の凄いのは、単にボール奪取数が多いだけでなく、シュートにつなげる形でそのあとのパスが出ていること。ボール奪取後、シュートまで持ち込んだ数は5回に達する。家長のゴールも元をたどれば田中碧のボール奪取が起点だ。
脇坂も9回でセンターバックの谷口と同じ数。シュートまでつながった回数も2回。
遠野と交代選手の塚川、小塚を含めて、中盤3ポジションのボール奪取位置だけを抜き出してみるとこうなる。彼らのボール奪取数は合計で37。つまり50%だ。
この中盤3人のボール奪取のパターンは、全体のボール奪取のパターンとほぼ重なる。中盤3人がそれだけ大事な仕事をしていると言うことでもある。
最終ライン4人と比べてみよう。4人で合計30回のボール奪取。
中盤での谷口、ジェジエウのボール奪取が多いのはいつものパターンだが(山根のボール奪取位置の高さも目を引く)、やはり最終ラインは後ろに寄る。
このことから、フロンターレのボール奪取の中心が中盤3人であることがよくわかる。
なお、前線3人とも比べてみる。合計7回。
家長は普段よりも多いが、3人分合計しても直接ボール奪取した数は少ない。ここから言えることは、前線3人がサボっている、ということではなく(笑)、3人できちんとパスコースを絞って、中盤3人でボールを奪取しているということだ。
サンフレッチェ ボール奪取マップ:エリアの偏り
次にサンフレッチェを見てみる。
合計回数は65回。数字上、フロンターレより10%少ないが、ポゼッション率が57%対43%で、サンフレッチェの方がボール奪取の機会が57/43多いことを考えて計算を補正すると、フロンターレの67%と言う数字を導くことができる(この数字が意味ある数字かどうかは別の問題だが)。
それよりも大きな差は、65回のボール奪取中シュートにつながったものが4回、すなわち6%しかないこと(スタッツ上のシュートは6本なので、ボール奪取によるトランジション以外からのシュートが2本あったことになる)。フロンターレが20%だから数字でいうと3分の1になる。
ただ興味深いのは、ボール奪取位置に偏りが見られることだ。
1つは右サイド(サンフレッチェから見て。以下同じ)の自陣高い位置。もうひとつはペナルティエリア付近、バイタルエリアに当たる地域の左側だ。
実は1つ前のアビスパ戦でも、右サイドの高い位置でのボール奪取が多かった。
これは、三笘対策として、三笘にボールが渡る前に抑えようとするディフェンスを敷いていると考えると納得ができる。
バイタルエリアでのボール奪取が左側に偏っているのも、三笘がドリブルを始めてしまうとボールを奪えないのでそのエリアのボール奪取が空白になっている、と言うことが影響しているように思われる。
昨日アップした三笘のドリブル位置を再掲してみると、そのあたりがよくわかる(180度逆なので脳内補正してください)。
やや手数の多かったフロンターレ、カウンターに徹したサンフレッチェ
最後に、ボール奪取してからシュートまで、何本のパスを必要としたかを比較してみる。
まずはフロンターレ
3分:谷口から4本
12分:脇坂から4本
31分:田中から5本
32分:脇坂から3本
36分:田中から3本
37分:山根から2本(ゴール)
38分:田中から14本
40分:谷口から4本
63分:田中から7本
71分:小塚から5本
76分:塚川から12本
80分:田中が直接シュート
80分:山根が直接シュート
91分:谷口から21本
次にサンフレッチェのボール奪取からシュートまでのパスの本数。
52分:1本
64分:4本(ゴール)
82分:2本
86分:4本
フロンターレは5本以下でシュートに持ち込んだのが10本あるが、10本以上のパスをつないでいったものが5つ。80分の直接シュートの2本を除いた12本での平均パス数は7本で、やや多め。
これは、トランジションの時でも、サンフレッチェのブロックが素早く構築されたため、攻略にパスを回す必要があったということだろう。
ただ、点を取ったときは自陣ペナルティエリア付近での田中碧のボール奪取から、三笘のドリブルを含めて3本のパスで山根のシュートに持ち込み、キーパーのはじいたボールを回収した山根から脇坂、家長へと2本のパスでゴールしている。この時は、ブロックが再構築される前に2本シュートを打ち込むことができ、二本目がゴールになったということだ。
ゲームプラン通りの試合運びができたサンフレッチェ
サンフレッチェのボール奪取からの4本のシュートはすべて後半だが、そのパス数の少なさが目を引く。
64分は一度キーパーまで戻しているが、キーパー大迫の正確なフィードとジュニオール・サントスのドリブルが威力を発揮して、少ない手数でゴールに迫ることができた。
トランジションの早いディフェンスで失点を局限し、カウンターで点を取る、と言うゲームプランを忠実に遂行し、勝ち点1と言う結果に結びついた点で、サンフレッチェとしては上手くゲームを運んだと言えるだろう。フロンターレは、早い時間に2点を取って、カウンターのリスクを上手くマネジメントしながらゲーム運びする展開に持ち込みたかった試合ではあった。
(続く)
(5/7 8:30に写真を追加し、誤字を修正しました)