見出し画像

登山靴あれこれ③(LOWAタホープロについて)

私が現在愛用している登山靴はLOWAタホープロ。この登山靴についてひたすら思いを書いてみました。偏った内容になっていますが、どうかご容赦ください…

LOWAとタホープロについて

LOWA(ローバー)はドイツに本社を構える登山靴メーカーで、製品はすべてヨーロッパ内で製造されています。どのモデルもフィット感と快適性に優れ、トレッキングシューズからアルパインシューズまでどのモデルも高い歩行性能を持っています。タホープロは日本でのみ販売されているモデルで、木型からソールまで日本の山に最適な性能を持ち、発売から10年以上続いているロングモデルです

バックパッキングブーツについて

あまり聞きなれないこの種別。トレッキングシューズに含まれるのですが、その中でも特に荷物を背負って長時間歩くことに適した靴を指しています。よく耳にする言葉だと縦走用の靴。重い荷物を背負い長い期間歩くことを対象にしているため、アッパーは頑丈で防水性も高く、ソールの剛性は高く作られています。そのため靴の重量は重いものが多いです。ワンタッチやセミワンタッチの固定式アイゼンをつけることができないため積雪期には使えませんが、雪のない時期では高い歩行性能を持っています。

メーカーやメディアにより名称は違いますが、登山靴には概ね以下のジャンルがあります。

トレッキングシューズ  日帰り、小屋泊向き

バックパッキングシューズ テント泊、長期縦走向き

ライトアルパインシューズ  テント泊、岩場縦走向き、厳冬期除くオールシーズン対応

アルパインシューズ 厳冬期含む冬山用。保温材入の靴やダブルシューズがある

歩行の快適性について

登山靴の骨といっても良い、シャンク(心材)。一般的な靴ではシャンクは土踏まずや踵から土踏まずにかけて設定されますが、登山靴では踵から足先まで設定されています(もちろんモデルによる)。タホープロには樹脂製で重い重量に対応するため固めのシャンクが踵から足先にまで使用されています。

画像19

靴を捻ってもまったく歪みません。この剛性が不正地における歩行時の足の傾きを抑えることで安定性をもたらし、さらには足の疲れを軽減します。また、重量のある荷物を背負った場合においても歩行時の足の傾きを抑制し、安定した歩行を可能とします

アルパインシューズに使われるようなシャンクはいっさい曲がらないような固さがありますが、この靴のものは体重をかければ足先は多少曲がり、程よい固さのものが使われています。登山道での細かいスタンスにたちこむためのもので、北アルプス等の岩稜帯を通過する際に有効となります。

画像6

ミッドソールには衝撃吸収性に優れたPU(ポリウレタン)が使われ、分厚いミッドソールを形成しています。この厚みが重量のある荷物を背負って歩いた際、足にかかる衝撃を緩和し、ガレ場などでは凸凹が足裏に伝わる衝撃を和らげます。クッション性を高めると安定性が落ちる傾向がありますが、このソールは適度なクッション性と固さを両立しています。

画像2

アウトソールは土道から岩稜帯までカバーするオールラウンドなパターンで、土道の多い低山から3000m前後の高山帯まで対応しています。

画像3

アウトソールの先端は平らな部分が多くとられており、これが岩場で立ち込んだ際に高いグリップを確保します

画像4

ソールの先は反り上がっており、トゥスプリングが確保されています。これにより足先が曲がりにくい登山靴で自然な歩行(足先で地面を蹴って歩く)を可能としています

画像5
画像6

SPSシステムというLOWA独自のソールシステム。ソール内の2ヶ所に固めの部品を入れることで歩行時の安定性を向上させます。歩く際、ちょうど過重のかかるところに設置され足のブレを抑える作用をします

画像16

しっかりした踵部分、フィット感と固定力のある甲抑え部分、固めのシャンクとクッション性と反発力を備えたソールで抜群の安定性を実現しています

フィット感について

登山靴及び靴は木型を基に作られています。登山靴の多くはヨーロッパで作られており、その木型は欧米人の標準的な足の形を対象としていることから幅広の足が多い日本人(最近の若い世代は細身の足幅の人が増えているようですが)には狭く感じることが多いそうです。LOWAの靴は欧米人向けの標準木型と日本人向けのワイド木型を採用したモデルがあり、タホープロにはワイド木型が採用されています(以前は標準木型モデルもあった)。私の足は実寸26.5、足囲26.4でワイズは3Eになるため、このワイドモデルがとてもよくフィットします。なお、日本のメーカー(キャラバン、シリオ、モンベルなど)の登山靴は幅広の木型で作られています

画像7

Wマークがワイド木型の証。JIS規格であるワイズとしては3E~3E+に相当

画像18

タングには左右非対称であるLOWA独自のC4タングが使われています。脛や足首が曲がる部分は柔らかい素材になっていて、甲を圧迫しないための切れ込みが入れられており、柔らかさを感じつつ抜群のフィット感を生み出します。

画像9

このタングがずれることのないようこれもLOWA独自のXレーシングが用意されています。靴紐をXのようにクロスさせることによりタンを押さえつけ、センターからずれることを防ぎます。これにより長時間の歩行でも紐を閉め直す必要はありません

画像10

足首部分の可動式シューレースフックもフィット感を向上させる機能のひとつです。また、足首の前後の可動域が広がるためハイカットの靴ながら自然な足運びを可能とします。

ティカムⅡ等の最新モデルには複数のシューレースフックがアッパーから独立して可動するローバーフレックスというシステムが使われており、より高いフィット感を生み出しているそうです

画像12

最新モデルにはシューレースフックにボールベアリングが内蔵され靴紐の滑りを向上させていますが、この通常のフックも十分に滑らかです。ここでしっかり紐を引っ張り締めこむことで甲の高いフィット感が得られます

このフィット感を向上させる機能で靴が足の一部になったかのような感覚をもたらします。

アッパーについて

画像13

アッパーの素材には2.5mm厚のヌバックレザーが使用されています。撥水性と調湿性に優れ、高い耐久性を持ち、手入れをし、使い込むことでエイジングを楽しめる素材です。ワックス加工してツヤツヤにすることもできますが、私はヌバックレザーのマットな風合が好きなのでそのまま使っています

画像14
画像15

ライニング(靴の内側)には現在の登山靴にはほぼ標準装備であるゴアテックスが採用され高い防水性と透湿性を両立させています

メンテナンスについてはこちら

ライトアルパインシューズとの違い

同じ重い荷物や縦走登山に対応する靴にライトアルパインシューズがあります。アッパーには主に化繊が使われ軽量、ハイカットながら足首回りの動かしやすさを謳われることが多いシューズです。バックパッキングシューズと似た山行形態を得意とする靴ですが、大きな違いはかかと部分にセミワンタッチアイゼンを装着するためのコバが付いており、アイゼン歩行が可能となっていることです。また、アイゼン使用が前提となっているためとても固いソールが使われており、足先はまったく曲がりません。これはライトアルパインシューズはクライミング(アイス含む)のための靴であり、そのためソールは薄く爪先まで真っ直ぐでトゥスプリングはあまり確保されていません。これは岩場を登る際に力を発揮しますが、土道中心の低山やなだらかな道を歩く場合は歩き難さを感じます(ソールが厚く柔らかで快適な歩行性を重視したモデルもある)。セミワンタッチアイゼンを使用することができますが、靴に保温材は入っていないため、厳冬期の八ヶ岳や北アルプス等気温の低い山域での使用には向きません。ほぼオールシーズン使えるため大変便利ですが、快適性では他のジャンルの靴に劣ります

画像11

バックパッキングシューズはコバがないため、アイゼンは固定力が低めのバンド式のみ使用可能です。しかしソールの固さがアルパインシューズやライトアルパインシューズに比べ柔らかいため本格的なアイゼン歩行には適しません。雪の少ない低山や無雪期の雪渓程度であれば対応できますが、基本的には積雪期の使用は想定されておらず、その代わりとして無雪期に特化されているため特に一般縦走路ではとても快適です。弱点としては重いということ。また、緩やかな傾斜の登山道ではソールの柔らかく軽いトレッキングシューズに快適性で劣ります

画像20

UK9のサイズで約940g 現在主流の化繊の靴に比べると圧倒的に重い…

足をしっかり守る靴

画像17
画像18

私は長年ひとつの重登山靴を使い続けていましたが、ある山行で膝の靭帯を痛めたことから登山靴の買い換えを検討しました。長く使いたいので革製であること、ハイカットで剛性のあることを考慮し候補に上がったのがタホープロでした。いざ購入し、初めて山で使った際にその快適さに驚きました。長い間履いて足に馴染んだ重登山靴と変わらないフィット感で歩行感覚は快適そのもの。靴でこんなに違うのか!と感動しました。堅牢性や安定性の高さから安心して山に持ち出すことができます。低山かつ短時間の行程の場合は軽量のトレッキングシューズを使いますが、少しでも道に不安がある場合は低山でもタホープロを使っています。ハイカットで剛性が高く、歩きやすい登山靴を求める方はこのタホープロ及びLOWAのバックパッキングシューズを検討してみてはと思います。

エイジング(購入から2年経過)

使い初めて2年、かなり使用感がでてきました。手入れは基本的にヌバックベロアスプレー(防水栄養スプレー)とヌバックテキスタイルボトル(栄養ローション)。岩や石に擦れるため起毛がなくなってきました。

画像21
画像22

爪先部分はよく擦れるため傷だらけです。乾燥も進みやすいので、この部分には栄養クリームやレザーワックスを少し塗っています

画像23

黒い部分も実はヌバックレザー。スプレーではこの部分に届きにくいため、栄養補給を兼ねてレザージェルやレザーワックスを塗ります。常に折れ曲がっており、歩行時に力も加わりやすいので油分は抜けやすい箇所とも言えます。しっかり手入れをしたい部分です

画像24

側面も擦れて起毛がなくなり傷が見られます。とはいえ、登山靴なので傷付いてなんぼ。私は味が出てきたと感じています

この記事が参加している募集

買ってよかったもの

おすすめアウトドアギア

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?