英語の聞き取りが3日である程度できるようになった時の話

 自分の学生時代、幸運にもノルウェーに一年間留学させてもらえる機会がありました。その時、やはり英語には苦労しました。その時にどのように克服出来たか、思い出を振り返りつつ書いていきたいと思います。

結論から

 色々背景なども書いていくため少し長くなりそうなので、結論から述べます。自分の場合、ノルウェーに着いて3日で英語の聞き取りはなんとか出来るようになりました。一日目はあまり聞き取れない状態で散々だったのですが、奇跡的だと自分でも思っています。そのプロセスですが、以下のような流れでした。

1. ノルウェー滞在2日目にオスロ大学でボスになる先生から「明日これまでの研究成果を一時間くらいでプレゼンしてよ。ラボの他の学生も誘うから。」と急遽言われる。

2. これまでの発表資料などで英語のものあるけれど、1時間もかけて色々と話せる自信がなかったので、2日目の帰宅後、急いで原稿を作り始める。スライドの文字をそのまま読むプレゼンは自分のポリシー上したくなかったので、ほぼ徹夜で話す内容を頭の中に入れていった。

3. 当日無事1時間程度でプレゼンを終える。その直後、ボスや学生さんたちからいろんな質問が来るのだが、何故かほとんどちゃんと聞き取れるようになっていて、質疑応答もある程度問題なくクリアした。

という感じです。なので、自分で英作文して、それを覚えて、音読する、といプロセスをある程度こなしていくと、英語で受け答えする能力は結構上がるんじゃないかというのが自分の経験上の結論です。

背景

 自分が修士課程の学生 (M1) の時、研究室のボス同士の繋がりでノルウェー人のオスロ大学博士課程の学生が日本に半年間来ることになりました。自分は当時から北欧が大好きで、とても楽しみにしていた記憶があります。そして、その彼 (名前はKyrre君)が研究室に来て、自分は積極的に話かけました。しかし、Kyrreの言ってることがあまり理解出来ず撃沈した記憶があります。Kyrreは色々と気を遣える人間だったので、ゆっくりと話してくれたりしながらなんとかコミュニケーションも取れ、半年間仲良く過ごしました。Kyrreがノルウェーに帰る少し前、「ノルウェーに住むことに興味があれば、ノルウェー政府奨学金をもらってオスロ大学に滞在すれば?」とコメントをもらいました。そのため、KyrreのボスのJimというオスロ大学の教授に推薦状を書いてもらい、博士課程の一年間はオスロ大学で研究をすることを計画しました。もちろん審査や面接を通らないと奨学金はもらえないので英語の勉強を開始し、初めてTOEICを受けました (確か590点くらいしか取れなかった)。もともとリスニングが苦手というのがあり、そこは課題でした。

 その後、研究内容を整理して在日ノルウェー大使館で面接に臨み、無事10ヶ月分の奨学金を獲得することが出来ました。D1の夏にドキドキワクワクしながらノルウェーに飛び立っていったことを今でも覚えています。

ノルウェーに着いて

 KLMを使ってアムステルダム経由でノルウェーのオスロ入りしました。Jimの研究室のアシスタントが確か空港近くまで来てくれて色々と面倒を見てくれました。まず、学生寮の手配をしてくれて、自分がこれから住むフラットを確保してくれました。次に近くのIKEAに連れて行ってくれて、必要なものを購入する手伝いをしてくれました。自分の印象としてノルウェー人は全体的に親切な人が多く本当に助かりました。ただ、そのアシスタントも学生寮の人達も、話す速度が速いと感じました。TOEICテストのリスニングのスピードがゆっくりなのでそれに慣れていると肩透かしを喰らいます。ネイティブでもないのに話す速度が本当に速い(まあネイティブはもっと速いいのですが)。ただ、良かったのは向こうからたくさん話しかけてくれるので、その時点でとても良いトレーニングになったということ。ノルウェーに着いて一日目は肉体的にも脳みそもとっても疲れた日でした。丸一日英語でずっとコミュニケーションを取っていたので脳が溶けるほど疲れました。 ちなみに、学生寮のフラットはキッチンだけ共同でそれ以外(バス・トイレ)は各部屋に完備されている形のものでした。そのフラットのメンバーは、ノルウェー人 x2, イラン人 x1, シンガポール人 x1というメンバーでした。この時点で、他の人達が言っていることは多分25%くらいしか理解出来ていなかったと思います。

二日目

 初日を無事終え、簡単に部屋の整理をしたところで大学に行きました。もちろん目的はこれからお世話になる研究室のボスに会いに行くことです。Jimとは初めて会ったのですがこれまた話す速度が速く、言っていることを理解することが難しい状況でした。ただ、Kyrreもそこに加わってくれて、コミュニケーションを取る仲介をしてくれていました。これからの研究生活を無事進めていくことが出来るのか、本当に不安な日だったと記憶しています。ただ、幸いだったのがノルウェー人 (特にその研究室のメンバー) が本当にいい人たちだったことです。一度言っても理解出来ない自分に時間をかけて付き合ってくれて、本当に感謝しかないです。またノルウェー人はほとんど完全にバイリンガルですね。普段はもちろんノルウェー語なんですが、例えばランチで、自分が入ってきたら完全に会話を英語にスイッチしてくれます。そんな気遣いも本当に有り難かったです。

 2日目もそのような感じで過ごしていたのですが、夕方頃にボスから魔の一言が・・・。「明日、研究室のメンバーの前でこれまでの研究成果を発表してよ」と。かなり焦りましたがやるしかないのでOKと答えました。これまでの発表資料もそれなりにあるし、一応国際学会で発表した経験もあったので、スライド自体はすぐに準備することが出来ると思いましたが問題は英語。やはり英語でスムーズに話すというは敷居が高いです。そのため、18時くらいに帰宅した後、徹夜の原稿作りへと進むのでした。

三日目 (夜中〜)

 原稿作り自体はそんなに手間取らなかったと記憶しています。これまでの経験もあったので。ただそれでも二日目の24時位まではかかったと記憶しています。その後は原稿を覚える作業に進めました。カンペを用意してそれをそのまま読むという選択肢もあったとは思います。しかし、自分は昔からプレゼンにこだわりがあって、スライドに記載した文章を読むということはしたくないのです。基本的には何も見ずにスムーズに話したいと考えていました。多くの学生が最初の英語プレゼンはスライドに書いてある内容を読むだけになってしまいがちだと思いますが、自分はそこは頑なに拒否しました。英語力もないのにそのようにしたため、日本ではボスに呆れられたりしたこともありましたが。とにかく、明け方まで自分の作った文章を頭の中に叩き込んで、音読して過ごしました。

3日目 (日中)

 午前中は自分が滞在するオフィスの整理をして、昼過ぎから自分のプレゼンが開始となりました。聴講者が何人いたかは覚えていませんが、確か10人もいかないくらいだったと思います。プレゼン自体はとりあえず無難に終えることが出来たと思います。そしてその後、Jimやその他学生から質問が色々と来るのですが、何故かほとんど問題なく聞き取れるのです。自分でも正直良くわからない感覚でしたが、答えられることは答え、勉強不足により答えられない点は、今後の課題として受け答えをして質疑応答も無事終えることが出来ました。

考察とまとめ

 どうして聞き取りが出来るようになったのか。自分は専門家ではないので推測の域になりますが、英文を覚えて音読し、アウトプットを繰り返すことで、脳にこれらの英文が染み込んだのだと思います。これにより、覚えた文章と関連する英語については、あるセンテンスを聞いた時点で、脳の先読み機能が働き、次に来る単語を限定することが出来ることが一つポイントなのではないかと考えています。あとはもちろん、アウトプットを繰り返したことで英語回路のようなものが脳に形成され、聞いた英語を日本語に変換することなくそのまま理解することが出来たのではないかと思います。結局のところ、何かしらの形でアウトプットを継続することで英語力は思ったより簡単に伸ばすことが出来る、というのが自分の考えです。以上より、また自分の経験より、聞き流すだけで英語が出来るようになるといった教材について、その効果は懐疑的です(持論ですが)。

 以上、学生時代の自分の経験を振り返ってみました。結局人間の脳も人それぞれだと思うし、自分に合った方法で何かしらアウトプットすることを続けることが出来れば、英語力は間違いなく上がると思います (重要なことなので繰り返しました)。 自分がちょくちょく行っているトレーニングとしては、ESL-LAB (https://www.esl-lab.com/intermediate/) の英文を聞いて、それをディクテーションし、内容を覚えて、音読する (ネイティブの音声と重ねて音読) というプロセスを繰り返すことです。自分はかなり効果的だと思っています。

 上記のやり方で英語で問題なくコミュニケーションを取れるようにはなっていったのですが、未だにネイティブのアメリカ人同士の崩した英語については全て正しく聞き取ることが出来ません。これが出来るようになるためにはもう2つくらい殻を破らないといけないなと思っており、現在試行錯誤中です。英語が本業ってわけでもないのでなかなか最近時間を避けていませんが。社会人になってアメリカにも駐在したのですが、その時の話はまた次のネタにしたいと思います。


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