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ロンドンの芸術大学での「人種差別」についてのワークショップがどんな内容だったのかって話

今年の9月から通っているロンドンの芸大で、新入生向けのオリエンテーションがあって、その中で「人種差別」についてのワークショップがありましたので、それがどんな様子だったのか話したいと思います。どんな学校に行っているのかとか、いま何をしているのかとか、そういうの詳しくはこちらに纏めてます。

「いじめ、カッコ悪い」とも違うニュアンス

オンラインワークショップで、講師は2人でした。一人は、イギリス出身の黒人女性、もう一人は、フィンランド出身の白人女性。出身地と人種と性別に意味が出てくるのは、当たり前なんですけど改めて、こりゃ適当な事は言えないなと背筋をピンと正しました。

全体の印象としては、80名くらいの学生達が全員、言葉選びを間違えないようにはしてるんだけど、大胆に話題に切り込むっていうか、「今思いついた事を話してる」って感じが無かったです。リラックスしてるんだけど、常にどっか緊張の糸が張られているというか。また、(もちろん、これに限る事は出来ませんが、)日本で起きる人種差別からは「共同体を壊すな」みたいなニュアンスを感じる事が多いですが、なんというか、日本より「考えなきゃいけない項目が多い」って印象でした。例えば、ジェンダー、出身地、いつ両親がイギリスに来たか、など。でも、それは僕が、日本における人種差別に対して鈍感なだけかもしれません。あと、この国では僕は「差別される側」なんで、そういった意味での『立場の違い』もあると思います。

軽く自己紹介をした後からディスカッションが始まりました。最初のテーマは、いわゆる「ブラック・ライブズ・マター」についてでした。講師の話や、人種差別のバックグラウンドの説明はサクッと終わって、そこから4人一組のグループに分けられて20分くらい話して、その後に全体で「グループで何を話したか」を共有した後に、「話したい人がなんか話す」というのが1時間くらいありました。

僕らのグループで話した事

僕の割り振られたグループは、イギリス出身の白人の男性と女性が1人ずつ、イタリア出身の白人女性が1人、と僕でした。僕らのグループで話した事は、「人を不当に扱うのはダメだよね。努力しても変えられない事を理由にするのは、もっとダメだよね。」ということと、「差別ってダメだけど、作品の設定としては面白いよね。」という、主にこの2点でした。踏み込んだ話はせず、まあ、そうだよね、というような感じで、割と軽めにサクッと終わりました。まあ、同級生とはいえども、生身で会ったことが無いので、そんなもんだと思います。

そんで全体セッションになって、「グループで何を話したか」を発表したり、話したい事がある人は話すって感じだったんですけど、これが盛り沢山だった。正直、難しくて、途中わかんない時間があった。その中で、いくつか印象深い出来事がありましたのでそれを書いて、このワークショップで思った事をチョロっと書いて終わりにします。

全体セッションで印象的だった事とか

①「『白人』と『黒人』の境界線」について
白人の女性が「私は白人ですけど、」と一言断ってから話し始めたのが印象的だった。彼女の意見としては、「白人と黒人の境界線を、存在し無い物のように扱うのがフラット」なんじゃなくて、「黒人と白人の間に、境界線はあるよね。でも、その境界をどうやって扱おうか?」って所から始めないと、いつまでたっても、議論が曖昧になるだろうという意見。これは納得でした。「皆んな同じ。」は、全くあり得なくて、だからと言って「皆んな違って、皆んな良い。」は過大評価。つまり、「みんな違って、みんな普通。」じゃないと、って思いますもんね。僕は思います。

②「差別」って、白人と黒人の間だけの話じゃないよねって話
この発言をした方はカメラを切ってたんで、どんな方なのか分かんないんですけど、①の話題が投げ掛けられてから議論が深まり、「いやマジでそうだよね、っていうか、さっきから黒人と白人の話ばっかだよね。」って流れになっていきました。まあでもこれに関しては「ブラック・ライブズ・マター」の話からワークショップが始まってるんで、そこが大きく取り上げられただけじゃない?とも思いますが、それにしても、この指摘は、鋭かったとは思います。

③「LGBTQ差別」とか「ジェンダーギャップ」とか
こから、当たり前のように「同性愛」とか「トランスジェンダー」とか、いわゆる『クィア』に対する差別の話に流れていった事が、印象的でした。ただ、しっかり盛り上がる前に講師の方が「今回は、『人種差別』についてのワークショップだから、一旦その話題はやめましょう。」と打ち切る形で終わりました。これも、印象深い。あ、そこはドライなのね。まあそうよね、なんでもかんでも話してたら、軸がブレるもんね。と思いました。今回のテーマは、『人種』だったので、ここに焦点は当たりませんでした。

④白人以外の人を当てる時間
最後の10分くらい、白人以外の生徒を意図的に当てる、白人の生徒が積極的に話すっていう流れになったんですけど、個人的には、「ここは偏見に基づいてるじゃないですか?政治家の記者会見じゃないんだから?いずれにしても僕は、このワークショップの最後の最後でその当て方はどうなんすか?」と思いました。まあ、それくらい、白人優位な社会なのかもしれません。この辺りは、考えていきたいです。

最後に、このワークショップで思った事

これは普段から思ってることなんですけど、「無自覚な差別意識」が一番怖いと、改めて思いました。勿論これは、自分の中にある物も含めて。曲がりなりにも、言葉を扱う者として、「無自覚な差別意識」には、常に敏感で居たいと思っています。

日本で大学の新入生に向けてこういうワークショップしたら、どんな感じになるのか興味があります。あと、スタートダッシュとして個人的に書き残しておきたいことは書けつつあるんで、そろそろ肩の力抜いて、引越しのカルチャーショック(内覧の時に普通に前の住人が居る、鍵の交換/付け替えはしない。)とか、これからロンドンに旅行で来る人の為に、持って来てたら色々と楽だったのにって後悔してるグッズ一覧とか、そういう軽めのやつも書きたいです。

こっから下は、最近とったイギリスっぽい写真たちです。本当は、この写真の6億倍きれいです。写真うまくなりたいな〜。

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