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信仰する宗教の内に流れる身近で親しい死生観|映画『コンスタンティン』

ファンタジーでエクソシストな映画。

見処は、主人公ジョン・コンスタンティンが散弾銃よろしく対悪魔銃を携えて半悪魔をなぎ倒していくところ。貯水タンクに十字架をぶっ込むところも、この世界観を理解した後だったのでニヤリとしてしまった。
裏で小さく流れ続ける音楽も静かに殺伐としていて小気味良い。

天使だったり悪魔だったりが本当に出てくるタイプの映画って、やっぱり日本にはない感覚なんだよね。日本には天国・地獄に直結する死生観がないからさ。あってもせいぜい「いいことをした、悪いことをした」程度だろう?
それよりはどちらかと言うと輪廻転生の方が強いだろうし。

自殺をしたら問答無用で地獄へ、だなんてさ、日本的な感覚ではなかなか無い。

そこを踏まえて、『臨死に依って地獄にお邪魔します』ってのは面白かったな。カトリックを逆手に取った、言葉遊びみたいな頭の柔らかさを感じた。

あと、ヒロインを浴槽にうずめるシーンも。
あれ、分かっていたのに一瞬まじで殺しにかかっているようにしか見えなかった。
俺がそうだったんだけど、視聴者の大半は浴槽の中で息を止めている内にシーンが切り替わって地獄を映してくれるもんだと思ってたよね。それがなかなか切り替わらないんだから、えっ、こいつなにやってんの?って。
あそこの見せ方は面白かったな~。でもやっぱり漫画的な表現のようにも感じたな(後述)。

日本人が神社や墓に日本由来の神秘めいた信仰や恐怖を感じるようにさ。
海外の人も信仰する宗教の内に流れる身近な、親しい死生観の神秘めいた部分を感じていて。そしてそれを楽しむ余裕があるんだなと。

いやさ、ガブリエルやルシファーって、日本で言ってしまえば天使(概念ではなく名詞)や閻魔様を出してしまうようなものだろう?
で、そいつらが戦ったりするんだから漫画みたいだよねと。
そういう、題材としてはクラシックで、すぐに触れられる分かりやすいファンタジーに焦点を当ててつくられていたのかなと。

それにさ、魔除けのネックレスとか、悪魔が持っていたコインとか。アイテムが日常に近いし。
水を媒介に地獄へ行くなんてかなり日常に近いよな。日本なら風呂で髪の毛を洗っているときに目を閉じてだるまさんが転んだをしてしまうくらいの近さ。

ほかにも、マッチの箱に入った悪魔由来のキーキーうるさい虫とか、ドラゴンの炎が出る金の筒とか、ちょっとしたフラスコに入ってる聖水とか、出てくる小物がやはり日常に近い。ギリギリ手に入りそうだと思わせるものに留められている。
別にさ、精巧に創られた石像とか悪魔の名を冠した動物の剥製とか、一般人がまず手にしないようなものを曰く付きにしてもよかったのに、そうはしなかったのだから。

つまり、日常の中に潜む恐怖に対して、やはり日常内で収まるアイテムで対抗したかった。
少し題材がずれるが、日本的に表現するなら紫ババア口避け女がそうだろう。
(紫色をしたアイテムや、ポマードといった少し頑張れば手に入る対抗策という意味合い)

日本人が幽霊や妖怪、童話の感覚でものを言うときに表されるものが海外の感覚ではガブリエルやルシファーだったんだね、と。それは海外での宗教文化でも日本と同じように日常に溶け込んでいて、ふとした瞬間に「いるのかな」って思うくらいには、身近な存在なんだ。
それを、この映画では主人公のエクソシストを通して見た人に再確認させてくれる。





追記:
ヒロインを水に沈めるシーンが漫画的だなって言ったのを答えてないから書くんだけど、
あれ要は日本なら「ーーーって沈めるんかーい!」「出してやらんのかーーい!」みたいな読者の突っ込み待ちの状態だよね、とそう言うことが言いたかった。

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