ヘタ思い出

時をかける旬ジャンルfeat.今かよ

みなさんが青春を共にしたジャンルはなんだろうか。ガン種、テニス、忍たま…なんでもいいのだが、中高生の頃オタクの友人がいた方は「基礎教養」とでもいうべきか、まあとりあえずこれは見てるよね…?というジャンルがあったのではないだろうか?
私は田舎で生まれ育ったため、数少ないオタクが寄り集まったところでジャンルが合致していることは稀であった。そのため、私は「同じ日本語なのに相手が何を鼻息荒く話しているのかさっぱりわからん……」という事態を避けるべく友人のジャンルをスピードラーニングする習性があった。

相手の推し(とその相手)、世界観、特筆すべき点、CP傾向などを中心にスピードラーニングしておけば相手の好みにかなり偏りはするがジャンル概論の単位は取れるくらいにはなるものだ。私が割と浅く語れるジャンルが多いのはこれが理由である。

そんな私が人生で常にスピードラーニングを行い続けてきた作品と言えば「Axis powers ヘタリア」である。多感な中高生時代を送る2008年、ヘタリアの書籍1巻は発売された。
友人の要請に応え借りて読んだが、まず話がまッッたく分からなかったことが印象深い。(Web同人作品を書籍化しているためエピソードごとにまとまりがなく、かつ各国の年代も行ったり来たりしているため)
わからないなりに一生懸命スピードラーニングを行っていたが、2009年にはめでたく(当時色々あったが)アニメ化。やはり高速学習には映像媒体が一番だ。(私はハリーポッターの原作を一度読んだが、冒頭で脳内の映像化にくじけ映画化されるまで読破を断念した過去がある。)
アニメのヘタリアもエピソードは切れ切れで親切とはお世辞にも言い難いが、1話あたり10分をハイテンションで駆け抜け高速でエンディングが終わる様は深夜に見る幻のようで面白かった。

この頃にはヘタリアの人気も確固たるものとなっており、学研から発売されていた「女の子のためのクチコミ&投稿マガジン」(ジャンル・CP問わず読者の投稿イラストがババーッと載っている雑誌。田舎者がオタトレンドを掴むのにうってつけ)でも巨大なコンテンツと化していることが見受けられた。読者の実録4コマではお国柄・日本史世界史ネタが頻出。クチコミの中心読者層である中高大生はお勉強真っ最中のお年頃、「歴史」ネタの相性はとにかくよかったのだ。

そして2009年と言えば忘れられないのが「ヘタリア キャラクターCD」の発売だろう。ヘタリアは異様に楽曲が充実しているコンテンツで、各国にちなんだメロディーや楽器・お国柄を表した歌詞など「国の概念の擬人化キャラクターたち」であることが最大限に生かされている。

中でも「ヘタリア キャラクターCD Vol.4 イギリス」の登場に全国のオタクはさざめいた。冒頭から「ン俺の名前はイギリスだ。正式名称はァグレートブリテン・および北部アイルランド連合王国ゥ。後でテストに出すからな~」と国の正式名称をオタクの脳に刻み、杉山紀彰のクセになる歌唱と珍妙な歌詞をもって現在に至るまでヘタリア史上一の迷曲と讃えられている。
当時の私と友人もこの熱狂の渦の中におり、友人間で最も迷曲とされていたガンダム00のロックオン・ストラトスのお経ラップ(名曲です)とタイマンを張れると話題であった。

進学した私はまた新たなヘタリアオタクたちと出会う。祖国領(日本推しのこと)、仏領、西領…当然彼女たちのために引き続きスピードラーニングを行っていくこととなる。カラオケに行くと友達は当然ヘタリアのキャラクターソングを入れまくるため私もキャラソンを借り、大抵のものを歌えるように勉強しておいた。銀幕も見た。学園ヘタリアに発狂する友人を傍で見守った。グッズを買いあさる友人に付き合った。建国記念日には乾杯し、友人のためにキャラクターを描いた。
それにしてもここまで勉強しておいて私本人はヘタリアについて「まあ…普通に面白いよネ…」くらいの感情だったのだから人間響かないときは響かないものである。

時は進み、私は忍たまで同人デビューし新たな友人と出会う。しかし忍たまで唯一カップリングが一致していただけでそのあとの活動ジャンルは一切合致せず「もはや合致しているジャンルは“人生”だけだ…」という状態に陥っていた。その時友人が再燃していたのがヘタリアである。
つくづく私のオタク人生は「常にヘタリアオタクが傍にいる」のだ。私本人は別にそれほどでもないのだが、常に友人を夢中にさせている、常に傍らにある不思議なジャンル……それがヘタリア…。
ヘタ特有のタグ付けルール(国擬人化というセンシティブなジャンルであるために細かい自治ルールがある)もわかる、キャラソンもわかる、キャラクターも見分けられる、その時々界隈で起こった出来事もまあまあわかる…。

もはやスピードラーニングというか「並走」といった様相だ。
それも友人のジャンル移動で途切れてしまい、ヘタリアは時々発作のようにキャラソンを聴いてはその完成度に涙する「懐メロジャンル」となってしまった……。

しかし2019年も残りわずかの2019年12月23日、友人が突如ヘタの二次小説をtumblerに再録。(自分で読み返しやすくするため)
私は彼女が同人誌を出すたびに友人のよしみで一部ずつ貰っていたのですでに一度は読んだことがある話だ。へえ~これ久々だね……と私も読み返してみる。

あれ……………………これ…………………萌えるな…?

2008年から11年の時が経とうとしているこの時、私の中に初めて友人の作品という枠を飛び越え「純粋にヘタ二次に萌える」感情が生まれた。
友人とはジャンルが一瞬しか被らなかったものの、彼女の弁慶の萌え所はまったく私好みだったので読めども読めども「この作者、信頼できるな…」という作品しかない。

(恐らくだが)もともと目の大きな美形に興味がなかった私が今になって唐突に萌え出したのは「錦田警部はどろぼうがお好き」を履修したことにより”美青(少)年を解する心“を手に入れたことが大きいだろう。やはり錦田警部はどろぼうがお好きは神God仏作品ということがハッキリわかる。

居ても立っても居られない私はdアニメストアで2日後にはアニメシリーズを再度完走し、イラストを描き始めた。驚いたのは友人である。
出会って6、7年の間頑として「ああ…普通に面白いよね、ヘタリア…」という態度を貫き友人に頼まれて無理やりにヘタリアの絵を描いていたはずの肘樹が自分が小説を再録したばかりにいきなり発狂し能動的に絵を描いているのだから、「ど…どうしちまったんだよ…」としか言いようがない。

↑その場を切り抜けてきたスピードラーニングとは打って変わり、
セルフラーニングにより解像度が3000倍に。

突如としてヘタリアで気が狂いだした私に経緯を知らないフォロワーから「すわ何かヘタリアで動きが!?」と心配されたがヘタリアには何も起こってはいない。私がおかしくなってしまっただけなのだ。(しいて言うなら今竹林の絵の再録作業が進められています)


12月29日、高速でインターネットカチカチサーフィンを繰り広げていたところ、なんとヘタリアをイメージしたコラボバッグが一部再販されていることがわかった。「こんなオシャレなグッズ…ヘタリアじゃない!!」と珍味慣れしていたヘタリアオタクを震撼させていたことも記憶に新しい。

え……???????1万円を超えるかばんを…??????????この私が…??????この…私が…???????

noteをお読みの方は私の物欲の拗らせっぷりをご存じかもしれないがとにかく私は己への承認が厳しく、大抵のものは「でも私にはいらないでしょ…こんなもの…」という理由だけで物欲を打ち消すことができる。今使ってるお出かけかばんも3年前に原付でコケたときに深い擦り傷ができているのに「まあ別に使えるし…」と買い替えていないレベルだ。

いやいや…落ち着けって…いくら奇跡的に自分の中でヘタリアが盛り上がったタイミングでバッグが再販されててしかもそれが比較的使いやすいデザインと色合いで…トマトの形のラバータグがかわいいからってこんな高い買い物を…私が…この私が…




あ゛あっ……?届いとるじゃないか…!!25,600円…年末年始も休まず営業…たったの2日で……!!!!

↑戦慄する友人。もっともである

私はamazonで聞き逃しているキャラソンをすべてmp3購入し(当時DVDの特典CDだったまわる地球ロンドも全部家であぐらかいてても買える、なんていい時代なんだ)二次創作を漁り始めたが、とにかくラクだ。

それもそのはず、11年間にわたって勉強を済ましているのにハマってなかったジャンルなんてそうそうないわけである。コンビタグもだいたいわかる……。あまつさえ、友人の神最高同人誌を既に持っているので慌ててまんだらけに駆け込む必要もないのだ。

なんだこりゃ……?どうなっちまったんだ…俺の人生は…??

青春の傍らにいつもいたヘタリアを見ていると、昔のいろんなことが思い出される。高校…世界史…(私はヘタリアに興味がなかったので日本史でした)

懐古脳汁をドバドバさせていると(オタクの悦楽)、驚くべきお便りが拍手に飛び込んできた。

2019年も……ヘタリアは若人の旬??!?!?!?!??!?!?!?!

これには驚いた。懐古オタクと化し「ウチらの時代は~w」と遠い目であれこれ振り返る場面の中で輝く一つのきらめき、そんな存在だったヘタリアが2019年の現在でも高校生の世界史のノートに彩りを与えていたなんて…………
↑のツイートについたリプだけでも「今の高校生もこうなのか…」ということが味わえよう。

2020年、ヘタリアの影響で海外へ旅立った者もいるだろう。専攻学問を決めるきっかけになった者も、今を生き世界史をヘタリア絡みで選択する高校生もいるだろう。11年の時をかけようやくヘタリアにハマる女もいる。
ヘタリアは今までもこれからも今この時誰かの旬なのだ。素晴らしいね……。

ジャンルを古巣や実家と称するならばヘタリアはまさに祖国とはよく言ったものだが、私にとってヘタリアは友好国と言えるかもしれない。

まったくだ!!!(なんなら12年遅い)

それにしてもウクライナに増田ゆき、ベラルーシに高乃麗をキャスティングした人はノーベル賞取ってほしい。(ヘタのキャスティングは全員好きですが…)

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