会計士目線で読み解く!#1 財務諸表の見るポイント(貸借対照表編)

こんにちは!ヤマグチです!

前回はアナリスト目線で解説ましたが、今回は会計士目線で財務諸表の貸借対照表の見るポイントを解説します!

ではいきましょう!


賃借対照表の「資産の部」を見るポイント

①売掛金・受取手形の額が膨らんでいないか
②棚卸資産の額が膨らんでいないか
③繰延税金資産はどのくらいあるのか
④有形固定資産の額はいくらか 償却方法は定額法か定率法か
⑤のれん代の額は大きくないか 償却期間は何年か
⑥繰延資産という項目があるか あるとしたらどれくらいか

では1つずつ解説していきます

①売掛金・受取手形の額が膨らんでいないか
売掛金と受取手形は計上すると利益を大きくみせることができます。しかしこれらは必ずしも今すぐ回収できるものではないです。なのでこれらが前期と比べて営業利益の増減に合わせた動きをしていない場合は要注意です。
何かしら裏でお金がうまく流れていない問題を抱えてる可能性があります。

次の式に当てはめると売り上げの何か月分の受取手形・売掛金が溜まっているのかわかります。(前期と今期で比較)
(売掛金+受取手形)÷(売上高÷12か月)

②棚卸資産の額が膨らんでいないか
小売業だと想像しやすいですが、利益が増えていても仕入れすぎて在庫が多くなれば当然お金の流れは悪くなり、また不良在庫になりかねません。


③繰延税金資産はどのくらいあるのか
繰延税金資産:税金として支払ったけど費用として計上していない額
繰延税金負債:費用として計上したけど、実際まだ支払っていない税金の額
一般的には繰延税金資産の方が大きくなります。

④有形固定資産の額はいくらか 償却方法は定額法か定率法か
固定資産は土地以外のちのち費用化しなければならないもので、多ければ良いってものではありません。
そして費用化するときの償却方法は建物が定額法(これは絶対)、それ以外はできるだけ早く費用化できて節税効果の高い定率法で減価償却する。
ですが思うように利益を上げていないところは、費用化するものを少なくして利益を大きくみせる為に、定額法を選択する場合がある。

⑤のれん代の額は大きくないか 償却期間は何年か
この文からでは想像できない意味なのでわかりやすく説明すると

のれん代:事業全体の価値と有形財産の差額(償却期間は2~20年)
事業全体の価値とは、有形財産(土地・建物など)無形財産(技術・人材・ブランド)年間の利益、全てひっくるめた価値です
なのでけっこう主観が入ったりもする価値なので換金価値がないものがこののれん代です。
これはM&Aをする際にもよく見られる指標の一つで、競合他社より稼げるよ、価値あるよ!といったものになります。

のれん代について以下のパターンで企業の状況と狙いがわかる
賃借対照表に
のれん代の記載がない場合→過去に買収していない
資産の部に記載の場合→つまり純資産を上回る買収→将来の費用の為
負債の部に記載の場合→つまり純資産を下回る買収→将来の利益の為

会社を大きくしたい意向があるなら、3つめの選択になる。

そして償却期間の目安ですが。健全な会社なら2~5年、利益を大きく出したい会社なら20年にして細かく償却していく。
本来、減価償却の期間は、買収した会社の金額(のれん)をどのくらいでペイ(回収)できるかで考えるのが基本です。
ですので20年に設定する場合はあまり企業の成長を期待してないと判断できます。

そしてそして!次の式で50%以上だと無理をした買収だと判断できる
(連結調整勘定※1+のれん代)÷自己資本×100=???(%)
これは連結調整勘定とのれん代(実際買収した金額)が自己資本のどのくらいの割合を占めているのかを見れる式です。なので自己資本を圧迫するような買収はかなり危ないってことです。※1 実際買収した額からのれん代を引いた額

⑥繰延資産という項目があるか あるとしたらどれくらいか
文字通り費用を繰り延べた資産です。
この項目がある企業は会計操作で利益調整を行う会社であるサインです
もちろんこれは大きくていいものではありません。その時は資産化してしのいでも、いずれは費用化しなければならないものなので、先延ばしにしてもツケは回ってきます。

賃借対照表の「負債の部」を見るポイント

①引当金や前受収益などが少なすぎないか
②社債、特にに転換社債を発行していないか

①引当金や前受収益などが少なすぎないか
引当金:将来必要になるであろう費用(賞与や修繕費用の積立など)
前受収益:継続するサービスをまだ提供してないけど先にもらうお金(家賃やサブスクや年間契約など)
特に引当金は企業側が自由に変更することができる項目が多いので、もし削減をして利益を確保しようとしても、万が一何がトラブルが起こって急な費用が発生した場合余分にお金を残してないことになるので、将来へのリスクが高まります

②社債、特にに転換社債を発行していないか
社債を発行している会社の経営が悪化して、ある一定の基準を下回る場合財務制限条項が課せられ融資先のお金を即座に返さなければいけない決まりがあり。
1⃣それを恐れた会社は利益を出しているように見せかけることがある
2⃣そうすることで株価を高く保とうとする。
3⃣転換社債を発行しておくことで株式に転換できる価格まで待つ
4⃣転換社債を株式に転換し
5⃣売却して利益を捻出(以下1⃣無限ループ)

といった具合に社債を悪用するケースもあるので注意が必要です



賃借貸借表「純資産の部」

①利益余剰金は資本金・資本余剰金と比べて小さすぎないか
②純資産の部の大半を評価差額金が占めていないか
③新株予約権が多額に発行されていないか
④少数株主持分が過大出ないか

①利益余剰金は資本金・資本余剰金と比べて小さすぎないか
この二つは純資産ですがお金の出所が違う
利益余剰金:企業自らが稼いだ余剰金
資本金・資本余剰金:投資家からもらった余剰金

つまり純資産が増加していても、自力で稼いだお金か、他人からもらったお金かで意味が変わってくる。

よくあるのが、個別銘柄でいい銘柄を選ぶ基準で自己資本比率を見ろというのがありますが、あれは純資産を総資産で割ると出てくる数字になるので、自己資本率の数字のみをみて良し悪しを図るのは一概にいえませんね。
相対的にみて、自己資本比率が高ければ安心できる企業が多いだけで、純資産の内訳もしっかり見とく必要はあると思いますね。

他人のお金だから悪いってことはありませんが、資金調達をするとそれだけ失敗したときのリスクはありますよっていうお話です。

②純資産の部の大半を評価差額金が占めていないか
評価差額金:有価証券差額金や土地評価差額金
つまり本業で稼いだお金ではないものが大半を占めていないかということです。先ほどの余剰金の話と近くて、こっちの方が自由に動かせるお金ではないのでさらに問題です

③新株予約権が多額に発行されていないか
数字が記載されていたら経営者や従業員にストックオプションが発行されている証拠です。
株価を維持しようとしている場合に使われていることもある。

④少数株主持分が過大出ないか
少数株主持分:親会社が買収を行ったとき、親会社が子会社の株を100%保有していなくて、一部の株を子会社が保有している額のことを示す。
しかし会計上は親会社と子会社が保有してる株は合算して処理するので、すべて純資産として計上される。
買収を繰り返している企業はここに注目すれば、実際その企業だけが保有している資産が把握できます。


最後に

いかがでしょうか?今回はちょっとボリュームのある内容になってしまいましたが、自分も理解しながら覚えられたので満足です!
少しでもみなさんの理解が深められたらうれしい限りです!

次回は会計士から見る損益計算書とキャッシュフロー計算書の見るポイントについて。説明していきます!ではまた!

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