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日常にする

2年前、「競技かるたに本格的に取り組むために、かるた会に入ろうと思う」と友人に話したときに、「そうね、日常にしないと強くならないからね」と言われたのが強く印象に残っている。

「日常にする」とは。

「それ」が置いてある非日常の場所に時々訪れるのではなく、
「それ」を自分の領域・領分に置く。
「それ」を自ら、日常の物理的時間・空間の中に組み込む。


たとえばわたしにとっての競技かるたで言えば。

最初わたしは、月に一度、初心者も含めて教えながら楽しむ、リフレッシュや交流が目的の場をひらいていた。このときのかるたは、公式の競技ではなくアレンジして易しく、雰囲気は和やかなものだった。3年ほど続けるうちに、次第に公式の競技のおもしろさに目覚め、少しずつ日常の中のかるたの濃度が上がっていった。初心者向けの会をやめ、練習の日をつくって仲間と励み、何度か無所属(かるた会に所属しない)で大会に出た。

本気でやろうと決めてから1年ちょっと経ったとき、思い入れのある大会で優勝したのをきっかけに、ようやく覚悟が決まって、かるた会に入ろうと決めた。

会に入ってからは、練習のある日曜日は、他のやりたいことや、やらなければならないことよりも、かるたの練習を優先している。
練習の機会は貴重だから、会の練習は必ず出席する。

練習のスケジュールが出たら、まずスケジュール帳に記し、他の予定が入れられないようにする。他の予定のほうを別の曜日にしたり、それが難しい場合は欠席や不参加などして諦めることも出てくる。これを「残念だけれど仕方がない」と思えるかどうか、はけっこう大きい。

優先度が上がり、頻度が上がる。
そのような調整が必要となっても尚やれるか?やりたいか?が問われる。
日常にするとは、物事に真摯に取り組むときの最初の「決め」だ。


小さい頃は、「姉がいるから行く」という理由で通った習い事も多かったけれど、今にして思えば、それは自分の領域で扱い可能なものとはなりにくかった。
日常にするときに、所属先や環境や指導者などを選択することになるが、「自分が」「それと」真正面から取り組むために最良・最善かという軸を持たなければ、まず選択時点で間違うし、継続も難しい。

橋をかけてくれる人は必要だが、渡った後は自分で分け入っていかなければならない。



「日常にする」と、途端に自分の感度が高まり、アンテナが立つので、日常を過ごす中で、勝手に関連情報を拾いはじめる。
直結しなくても、これももしかすると「それ」に関係があるんじゃないか、生かせるんじゃないかと考えはじめ、経験や知見をつなげて、体系を構築しようとする。

「"それ"がわたしを知らない世界に連れて行ってくれる」という感覚が芽生えてくるので、どんどん楽しくなっていく。
楽しければ楽しいほど、楽しさを続けたくて、
奥深ければ奥深いほど、知りたくて探求を続けたくて、人は自然に継続していく。


上達に欠かせないものとして「反復」や「継続」があるが、それは「意思の力で反復したり継続する」というよりは、日常に組み込むことをまずしてから、自然に掴み取っていくものとしてあるとよい。

自らの手で、自分の領域内で扱い可能なものとし、対象との関係を変える。
自分にとってその対象がどのような存在なのかを言語化できると、より結びつきが強くなる。


逆に言うと、非日常というのは、体系を構築したくないもの、わからないままあえて置いておきたいもののことなのかもしれない。

「やれたらやる、行けたら行く」も、まだ非日常のもの。
複数回やっていても、取り組む「決め」をしていなければ非日常のまま。
そして非日常であるうちは、刺激はあっても変化はさほど大きくない。

もちろん人にはそういうふうに楽しみたいものがある。
身は一つだし、時間は有限だ。


だから、場をつくる人が、「楽しいからやってみて」と紹介したときに、相手が「日常にする」ほど好きになり、継続するということはかなり稀なことであって、「1回だけ来てすぐ来なくなる」ほうが当たり前だと思っておくと、無駄に傷つかなくてよいだろう。


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春愁や草を歩けば草青く 月斗
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鑑賞対話ファシリテーター、場づくりコンサルタント、感想パフォーマー。関係性、対話、表現。温故知新。鑑賞の力を生きる力に。作り手・届け手と受け手とのあいだに橋を架け、一人ひとりの豊かな鑑賞体験を促進する場をデザインします。https://seikofunanokawa.com/

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