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2021

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#ミニポエム

ニリンソウ

ニリンソウ

三国にまたがる 軍神の社

奥の院に向かう 険し参道

楚々と咲いた ニリンソウ

親指の先ほどの 小さな花

真白な花びら 黄色のしべ

詣でる人の こころを癒す

見上げる 萌色のトンネル

響く囀りと 沢水の冴え音

薫風が 若い葉をくすぐる

歩を緩めて 手足を伸ばす

生まれたての 緑が放った

生まれたての 冷たい空気

細胞の隅々に 沁みわたる

下界に降れば あれこれと

やんごと

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弱っちいやつ ー4月の星々ー

弱っちいやつ ー4月の星々ー

春はなんだか弱っちい。

ぐいぐい引っ張られて

季節をひとつ飛び越えちゃったかと思えば、

ちょっとした北風で

すぐに後ろに下がったりするし、

そうかと思うとまたすぐもとに戻る。

夏とか冬みたいに確固たる自分を持てよ、

と叱咤激励したくなる。

みんながそんな気持でいるから、

春は花がいっぱいなのかも。

モミの木の若葉

モミの木の若葉

一度葉っぱを落として春に芽吹く落葉樹と違って

一年中緑の針葉樹は風情がないとお思いですか?

それは誤解というものです。

ご覧ください、このモミの木の若葉の美しさ。

深緑の枝の先端が、こぞって新しい芽を吹いて

まるでメッシュを入れたよう。

触ってみると、柔らかく、

まるでぷにゅぷにゅのゴム細工。

遠くから見る春山の萌え色は

いろんな若葉の集合体。

それぞれの色、それぞれの芽吹き。

清明の候、新緑の紅葉

清明の候、新緑の紅葉

先走った暖かさが続いて

いつもより早く深さを増した紅葉の新緑

半月前まで見えた萌黄越しの遠景は

今はもうすっかりと緑陰に隠れて

枝先に遊ぶ小鳥の声を響かせる

華やいだ空気も今日はひとやすみ

朝からしとと降る静かな雨が

清らかで明るい木々の若葉を

寿ぐように降り注ぐ

春の日は雨もまたよし

カラスノエンドウ

カラスノエンドウ

カラスノエンドウはわたしの春のお気に入り

はびこり過ぎると困るけど

畦道に咲く赤むらさきの小花は美しく

まだ緑が少ない畑でも目を楽しませ

虫たちを呼んで野菜のみのりを助ける

実らせた小さなえんどうまめは

熟して地に落ち豊かな土に帰る

畑は人と自然の境界域

キリキリとツノ付き合わさずに

ゆるゆるとともにはぐくむが吉

ジャガイモの芽吹き

ジャガイモの芽吹き

今年最初に植えたジャガイモが芽吹いた。

発芽まで3週間、順調そうで一安心。

ジャガイモの発芽は、夏野菜のホイッスル。

気温も地温も安定し、畑仕事もいよいよ本番。

今日も手足を動かして たっぷりいい汗かいて

気持ちよく美味しいビールを飲むぞっと。

春爛漫の大忙し

春爛漫の大忙し

川沿いの散歩道

頭上では桜の花びらが溢れて

足元にはタンポポの黄色

これでもかと花びらを大きく開いて

甘いかおりでミツバチを誘惑

思惑どおりに飛んできて

身体いっぱいに花粉をつけて

一心不乱の蜜あつめ

春爛漫の陽だまりは

長閑に見えてせわしない

花も木も虫も鳥も

みんなみんな大忙し

スノーフレーク

スノーフレーク

すずらんに似た純白のスノーフレークは

花びらの先に黄緑色のワンポイント

住む人のいなくなった住宅の

その軒先の花壇の跡地に

愛でて世話する人がなくとも

己が根にちからをスンと蓄えて

厳冬に耐えて花を咲かせる

早春に開く花はみなどれも

行きつ戻りつする季節を

しっかり一歩進ませる

楚々として麗しく

そしてたくましく

聞こえる春

聞こえる春

部屋の音を全部消して

ガラス戸を開け放って

目を閉じて耳を澄ませてみる

遠くに聞こえるさざめきは

雪解け水を運ぶ早瀬の音

冬枯れの木に巻きついた蔦の緑に

忙しなくコガラの地鳴きが動き回り

遥か高い空からは

ふわり浮かんだトンビの口笛

そよと吹く風が笹の葉擦れを誘う

春はくる

目を閉じていても

春はくる

畔道の春

畔道の春

種蒔きの時を待つ畑

とつとつと歩く畔道

ひんやりと冷たい風

あたたかな陽のひかり

小さく開いた野の花

ホトケノザ

イヌナズナ

スミレ

ヒメキンセンカ

愛でられて摘まれても

刈られても踏まれても

倦まずにそこで春を告ぐ

小さないのちの彩やかさ

春はくる

畦道を歩くはやさで

春はくる

春本番へのグラデーション

春本番へのグラデーション

日に日に夜明けが早くなる。

小鳥のさえずりが少しずつ増えてくる。

まだ鳴き慣れないウグイスの未熟な声も聞こえてきた。

山の雑木林はなんとなく暖かな色にかすんで見える。

冬越しの分厚い毛皮に包まれていたこぶしのつぼみは

冬毛を少し軽くして膨らみ始めた。

ジャガイモ植え付けのタイミングを、隣近所が探り合う。

弥生三月は、春本番へのグラデーション。

山も、畑も、虫も、鳥も

いろんな命が

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2月の星々②ー香りを探してー

2月の星々②ー香りを探してー

数年前まで毎朝通っていた道を

逆向きに辿りながら、鼻をクンクンさせる。

んー、やっぱり朝じゃないとダメか。

路地を一本左に入ってウロウロ。

するとセンサーが反応した。

あ!この香り。やっぱりまだあった!

ようやく出会えた小さなパン屋のくるみパンは

「あの頃」の味がして少ししょっぱかった。

黒猫に乗って鬼がきた

黒猫に乗って鬼がきた

うちの冷蔵庫には、いつも鬼がいます。

もう3年くらいは、いつもいます。

節分が過ぎても平気です。

たいてい2匹はそこにいます。

赤ではなくて青鬼です。

この鬼は、人を酔わせることはあっても、人を喰うことはないので、

巷で話題の、竈さんたちから狙われることもないようです。

インディア・ペール・エールという種族のようです。

本当は軽井沢あたりで増殖しているらしいのですが、

うちにはア

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2月の星々ースパイスー

2月の星々ースパイスー

あなたは、年に幾度かの、遠い世界への旅を夢見て、

日々の退屈をやり過ごす。

わたしは、小さな畑で、種を蒔き、水を撒き、

芽吹きを喜び、若葉を愛で、虫と戦い、収穫を楽しむ

そんな単調な日常を嬉々と繰り返す。

所詮、人生は暇つぶし。

優劣も正誤もありはしない。

残りの時間、どんな香辛料で楽しむか。

さ、お好み通りになさいまし。