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2021年3月の記事一覧

春爛漫の大忙し

春爛漫の大忙し

川沿いの散歩道

頭上では桜の花びらが溢れて

足元にはタンポポの黄色

これでもかと花びらを大きく開いて

甘いかおりでミツバチを誘惑

思惑どおりに飛んできて

身体いっぱいに花粉をつけて

一心不乱の蜜あつめ

春爛漫の陽だまりは

長閑に見えてせわしない

花も木も虫も鳥も

みんなみんな大忙し

がんばれニッポンのタンポポ

がんばれニッポンのタンポポ

見た目はほとんど変わらないけど、

西洋タンポポは外来種。在来種の強力なライバル。

花びらを支えるガクがそりかえっていないこの子は在来種。

西洋タンポポは自家受粉でどんどん増える。

在来種は昆虫に花粉を運んでもらって受粉しないと綿毛になれない。

西洋タンポポはそりかえったガクで

これまた外来種のナメクジの攻撃を防御できるけど、

在来種はガードが甘くてやられちゃう。

なんだか、あれこれ

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墓守の桜

墓守の桜

旧街道沿いの鄙びたまちの

愚痴聞地蔵がおわしますその寺の

裏手の墓地を見下ろす小高い丘

咲き誇る大きなヒガンザクラ

華やかにして荘厳 優美にして豪快

300余年の時世を超えて聳えるその木は

たくさんの生き死にを黙って見てきた

行き交う人々の美しい営みを

戦地に赴き帰らなかった若者を

流行り病に苦しんだ村村を

孤独に苛まれる老人の呟きを

この地に生きる人々の暮らしが

たとえど

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3月の星々ー春の空の管制官ー

3月の星々ー春の空の管制官ー

さあさ、桜も見れたんだから、

もう少しなんて言ってないで、早く北に飛び立ってください。

そろそろ燕尾服の皆さんが南周りで到着して

ここらあたりの空も渋滞するんだから。

ツバメと相性の悪いジョウビタキを急かすように、

今日もヒバリは高い空から甲高い警笛を鳴らしている。

主役降臨

主役降臨

春の嵐が呼び込んだ暖かな南西の風は

霞がかかったようなぼんやりした空を

澄み渡る深い青いろに染めかえて

弾けんばかりに膨らんだつぼみを

一気に主役の笑顔にメイクアップ

舞台装置もすっかり整い

看板役者も堂々登場

さあ、春本番の始まりです

ただ淡々と、粛々と。

ただ淡々と、粛々と。

あの日、

営々と築いてきた生活の何もかもを失って、

被災者という十字架を背負うことになって。

それ以来、早春の頃になると、

あの日から何か変わったかを振り返ることを義務付けられ、

何が足りないか、どんなに頑張ってきたかについて

何かしらのコメントをすることを求められて。

みんながみんなそんな風に、

一年を振り返りながら過ごしているわけでもなかろうに。

まず、自分に問うてみてくれ。

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スノーフレーク

スノーフレーク

すずらんに似た純白のスノーフレークは

花びらの先に黄緑色のワンポイント

住む人のいなくなった住宅の

その軒先の花壇の跡地に

愛でて世話する人がなくとも

己が根にちからをスンと蓄えて

厳冬に耐えて花を咲かせる

早春に開く花はみなどれも

行きつ戻りつする季節を

しっかり一歩進ませる

楚々として麗しく

そしてたくましく

聞こえる春

聞こえる春

部屋の音を全部消して

ガラス戸を開け放って

目を閉じて耳を澄ませてみる

遠くに聞こえるさざめきは

雪解け水を運ぶ早瀬の音

冬枯れの木に巻きついた蔦の緑に

忙しなくコガラの地鳴きが動き回り

遥か高い空からは

ふわり浮かんだトンビの口笛

そよと吹く風が笹の葉擦れを誘う

春はくる

目を閉じていても

春はくる

畔道の春

畔道の春

種蒔きの時を待つ畑

とつとつと歩く畔道

ひんやりと冷たい風

あたたかな陽のひかり

小さく開いた野の花

ホトケノザ

イヌナズナ

スミレ

ヒメキンセンカ

愛でられて摘まれても

刈られても踏まれても

倦まずにそこで春を告ぐ

小さないのちの彩やかさ

春はくる

畦道を歩くはやさで

春はくる

春本番へのグラデーション

春本番へのグラデーション

日に日に夜明けが早くなる。

小鳥のさえずりが少しずつ増えてくる。

まだ鳴き慣れないウグイスの未熟な声も聞こえてきた。

山の雑木林はなんとなく暖かな色にかすんで見える。

冬越しの分厚い毛皮に包まれていたこぶしのつぼみは

冬毛を少し軽くして膨らみ始めた。

ジャガイモ植え付けのタイミングを、隣近所が探り合う。

弥生三月は、春本番へのグラデーション。

山も、畑も、虫も、鳥も

いろんな命が

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2月の星々②ー香りを探してー

2月の星々②ー香りを探してー

数年前まで毎朝通っていた道を

逆向きに辿りながら、鼻をクンクンさせる。

んー、やっぱり朝じゃないとダメか。

路地を一本左に入ってウロウロ。

するとセンサーが反応した。

あ!この香り。やっぱりまだあった!

ようやく出会えた小さなパン屋のくるみパンは

「あの頃」の味がして少ししょっぱかった。